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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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最終決戦

 地動のような重苦しい咆哮と、地平線を黒紫に染め上げる禍々しい瘴気が、【グラ・ヴァル遺跡館】の領域へと急速に迫っていた。


「死ね!死ねぇぇぇっ!アルヴァレス家の出来損ないめぇぇっ!」


 狂気の絶叫を上げながら進軍してきたのは、すべての権力を失い破滅に瀕したゲッセル伯爵本人であった。その背後には、禁忌の【30メートル級の超巨大毒魔獣アバドン】が、大地を腐蝕させながらその巨躯を蠢かせていた。


「我が伯爵家が潰れるならば、この荒野ごと致死の魔毒で泥の海に変えてくれるわぁぁっ!」


 伯爵の正気を失った高笑いが響き渡る中、【グラ・ヴァル遺跡館】の前に立ったのは──レオ、ミニア、ヴェルフ、そして第一王女エレノアたちであった。


「レオ様!地邪の巨獣が、すごい勢いで毒気を撒き散らしながら向かってきますニャ!」


 ミニアが猫耳をピンと立て、レオの隣で身構える。その隣では、元の姿に巨大化したヴェルフが、鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべていた。


『むふぅ……身の程知らずの巨大トカゲめ。主よ、我が聖魔力でひねりつぶしてくる!』


「いや、ヴェルフ。あいつの放つ瘴気と毒素は、俺の『エネルギー』にさせてもらうさ」


 レオは不敵な笑みを浮かべると、恐怖に震えるエレノア姫や冒険者バルトたちを背に庇うように、悠然と前へ足を踏み出した。


「ミニア、ヴェルフ、俺たちの平和な家を汚す奴らを倒すぞ!」


---


「吹き飛べぇぇぇっ!【死滅の黒紫毒液(アバドン・ブレス)】ッ!!」


 ゲッセル伯爵の狂気の叫びとともに、超巨大毒魔獣アバドンがその巨大な顎を開いた!


 ドドォォォォォンッ!!


 空気を爛熟させ、岩盤すら一瞬でドロドロに溶かす致死の黒紫ブレスが、津波となってレオへ襲いかかる!


「ハハハ!終わりだ!ドラゴンすら一瞬で骨に変える猛毒だ!跡形もなく消え去るがいい──」


 伯爵が勝ち誇ったように高笑いを上げた──次の瞬間!


「【魔性順応】──広域毒素概念吸収、全エネルギー超変性ッ!」


 レオが青い聖魔光を全身から爆発させ、両手を前方へと大きく掲げた!


 ズズズズズズズズッ……!!


「な……なにぃぃぁぁっ!?」


 伯爵の目玉が飛び出さんばかりに見開かれた!


 あらゆる命を死滅させるはずの絶望的な黒紫ブレスが、レオの手前で青白い光の渦へと吸い込まれ、一滴残らず全吸収・全中和されていく!


 それどころか、毒素を吸収すればするほどレオの【魔性順応】が輝きを増し、吸い上げられた死の瘴気が、七色に輝く純粋で清らかな『星光エネルギー』へと変換されていくのだ!


(≪報告。【超巨大毒魔獣アバドン】の魔核構造を完全解体。……毒素を中和し、都市街灯用『極高純度マナ結晶』へと一括クラフトします≫)


 レオが手のひらを強く握りしめた!


 パァァァァァァァッ……!!


「グォォォォン……!?」


 30メートル級の巨躯を誇っていたアバドンが、断末魔の悲鳴とともに色鮮やかな虹色の光芒へと弾け飛び──その場に、【グラ・ヴァル遺跡館】を永久に照らし続ける美しき【街灯用巨結晶柱】として、静かに鎮座したのである!


---


「ば……バカな……っ!?我が最終兵器が……街灯の……ランプの結晶に変えられたというのかぁぁっ!?」


 ゲッセル伯爵はガタガタと全身を激しく痙攣させ、血の涙を流しながらその場に崩れ落ちた。


「国家叛逆、および禁忌兵器の行使……ゲッセル伯爵、全財産没収の上、永久投獄を命じますわ!」


 エレノア姫が王家の威厳とともに通告すると、Bランク冒険者バルトたちが「へいっ!」と手際よく伯爵を重い鎖で縛り上げた。


 そこへ──どたばたと足音を立てて駆け込んできたのは、レオを無能と見捨てて追放した旧実家・アルヴァレス伯爵家の使者たちであった。


「レ、レオ様ぁぁっ!お願いです、お助けくださいぃぃっ!」


 使者たちは泥に頭を擦り付け、ボロボロと涙を流して縋り付いてきた。


「レオ様を追放してから、我が実家の領地は財政破綻と水不足で崩壊寸前なのです!どうか……どうかアルヴァレス家の正統後継者として戻り、我らを救ってくださいぃぃっ!」


 都合が良すぎる惨めな命乞いに、レオは感情の籠もらない冷酷な眼差しで見下ろした。


「無能の『全属性ゼロ』だと捨てたのは、あなたたちでしょう」


「ひっ……!?それは……っ!」


「俺の家は、俺を温かく迎えてくれた仲間たちがいるここだ。失せろ」


「頼む、見捨てないでくれぇぇっ」


 レオが背を向けると、自業自得の報いを受けた実家の使者たちは絶望の悲鳴を上げながら、警備兵によって連行されていくのだった。


---


 数日後──。


 眩い『人工青空』が広がる地下都市『グラン・ゼノア』の中央大広場には、千人を超える全住民が集結していた。


 ミニア、ヴェルフ、アリア、ガルド一家、シエル、セルディクたちエルフ一族、そしてエプロン姿のエレノア姫までが、満面の笑顔でレオを囲んでいる。


「みんな!生まれや種族、能力の有無に関係なく、誰もが温かいお腹いっぱいのご飯を食べて、安心して笑って暮らせる場所……!」


 レオは高く手を掲げ、清々しい大声で宣言した!


「本日ここに……『独立国家グラン・ゼノア』の建国を宣言します!」


「「「うおぉぉぉぉぉっ!レオ様万歳!グラン・ゼノア万歳ぇぇぇっ!!」」」


 千人の歓声と拍手が地鳴りのように響き渡り、中央の全自動噴水から七色の水柱と祝砲の魔導花火が夜空へと打ち上げられた!


 賑やかな宴の輪を少し離れ、地上拠点【グラ・ヴァル遺跡館】の小高い丘に立つレオ。


 そこへ、ミニアがそっと寄り添い、温かなその手を優しく重ねてきた。


「レオ様……本当に、最高の『あたしたちの家』になりましたニャ」


「ああ。ミニアと出会えて、みんなと出会えて……本当に良かった」


 レオが微笑んで握り返すと、足元でモフモフ姿のヴェルフがふんわりと尻尾を振った。


『むふぅ……余も誇らしいぞ、主よ。この楽園は永久に不滅じゃ』


 風が吹き抜け、星空の下で仲間たちの楽しそうな歌声と笑い声がどこまでも響き渡っていく。

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