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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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第一王女との密約

 【グラ・ヴァル遺跡館】の【冷涼ボタニカルテラス】。


 先ほどまで「高飛車な視察者」として振る舞っていた少女──聖王国の第一王女エレノアは、冷やしコーンスープのあまりの美味さにほほを緩め、ふかふかのソファーへ深々と沈み込んでいた。


「ああ……冷たい風、美味しいスープ……ここは天国ですの……?」


「お嬢様、ソファーでゴロゴロするのは最高ですニャー!クッションもどうぞニャ!」


 ミニアが笑顔でふかふかのクッションを差し出す。


 その隣では、ヴェルフが、ソファーの端で優雅に横たわっていた。


『……コホン、余の毛並みに触れることを特別に許可して遣わすぞ?』


「まあ、なんて愛らしい毛並みですの!」


 エレノア姫はうっとりと目を細め、ヴェルフのモフモフした背中に顔をうずめてデレデレに寛ぎ始めた。王宮での緊張感や高慢な面影は、すっかり綺麗サッパリ消え去っていた。


---


 やがて、至福の癒やしを満喫して我に返ったエレノア姫は、ハッと頬を染めて身体を起こした。


「コ、コホン……!無礼をいたしましたわ。……店主殿、これ以上隠していても意味がありませんので、私の真の正体を明かしますわ!」


 エレノア姫は旅人のフードを脱ぎ捨て、美しく輝く金髪と気品あふれる瞳を露わにした。


「私は聖王国第一王女、エレノア・グランディールですの!」


 お付きの護衛も緊張した面持ちで大剣の柄に手を当て、「姫様のご尊顔であらせられる……!」と声を張ろうとしたが──。


「はは、王女様。ようこそ【グラ・ヴァル遺跡館】へ。遠くからお越しいただき光栄です」


 テラスの奥から現れたレオは、驚く様子もなく爽やかに微笑み、冷えたハーブティーのグラスを差し出した。


「な……ッ!?なぜ動揺なさらないのですの!?私が第一王女だと最初からお気づきでしたの!?」


「ええ、クロニクルの解析……あー、俺の勘でね。変装されていても、気品までは隠せませんよ」


「ま、まあ……ッ!わたしの気品を見抜いておられましたのね……!」


 エレノア姫は恥ずかしそうに頬を赤らめつつも、すぐに身を乗り出してきた。


「実は今、王都はゲッセル伯爵らの横暴と重税、そして異常な猛暑による薬草全滅で大混乱に陥っていますの。……あんな愚かな王都の連中など見切りをつけて、私はこの【グラ・ヴァル遺跡館】と極秘の同盟を結びたいのですわ!」


「王都を見限って、俺たちと秘密同盟……ですか?」


「ええ!神薬も、この天国のような宿も、あなた様の手によるものなのでしょう?私と手を取り合って、王都の関所を関与させない『独立商業ルート』を築きませんこと!?」


 自発的に取引を持ちかけてくる王女の能動的な提案に、レオは不敵に口元を深めた。


「いいですね。ですが、正式な同盟の前に……長旅でお疲れの王女様に、最高のデザートをお召し上がりいただきましょう」


---


 黄金色の濃厚シロップがトロリとかけられた──【至高の極上冷涼かき氷】を差し出した。


「さあ、召し上がってください」


「まあ!まるで宝石を削り出したかのような氷菓子ですわ!」


 エレノア姫はおそるおそるスプーンを取り、山盛りの氷を一口に含んだ瞬間。


「〜〜〜〜〜〜っ!」


 次の瞬間、エレノア姫の全身がビクッと激しく跳ね上がった!


「な……なんですのこの儚くも圧倒的な冷涼感はぁぁっ!?氷なのに頭が全くキーンとせず、口の中で冷たい星が弾けるように溶けていきますわぁぁっ!!」


「う、美味すぎるぅぅっ!一国の王侯貴族すら口にしたことがないほどの神の氷菓子だぁぁっ!」


 エレノア姫とお付きの護衛は、争うようにスプーンを動かした!


「決めましたわ……!王都の悪徳貴族たちが隠している不正な関所税率も、抜け道の流通ルートも、全てあなた様に差し上げますわ!王都を完全にスルーする『独立交易包囲網』を作りましょう!」


---


 エレノア姫との秘密同盟が結ばれ、王都を迂回する独立商業包囲網の土台が完成した──まさにその時。


 【グラ・ヴァル遺跡館】の外から、下品で荒々しい金属鎧の足音が響いてきた。


「おい!開けろ!我がゲッセル伯爵領の特使である!この不届きな場所を伯爵家の直轄地として即座に接収する!」


 高飛車に怒鳴り込んできたのは、重武装したゲッセル伯爵家の使者たちであった。


 レオは冷えたグラスを手に取り、不敵に笑みを深めた。


(ゲッセル伯爵家の使者か……くくっ、タイミングがいいな。王女様の前で、たっぷり自爆してもらうとしようか!)

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