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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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ガランの帰還と、輝く冷涼ボタニカルテラス

 大都市ルクシアでの競り市から二日後。


 【グラ・ヴァル遺跡館】の前に、一台の馬車が凄まじい勢いで滑り込んできた。


「レオ様ぁぁぁっ! 大成功……いや、歴史的大勝利ですぞぉぉっ!」


 馬車から飛び出してきたのは、老商人ガランだった。息を切らしながらも、その表情は歓喜と興奮で真っ赤に染まっている。


「お帰りなさい、ガランさん! 無事でよかったニャ!」


「ガランさん、まずは冷たい水でも飲んで落ち着いてくれ」


 ミニアとレオが笑顔で出迎えると、ガランは差し出された【高純度清涼水】をゴクゴクと一気に飲み干し、「ふはぁぁっ! 命が蘇る……っ!」と吐息を漏らした。


 その足元では、ヴェルフが、ちょこんと座って耳を傾けている。


『むふぅ……首尾は上々のようだな、商人よ。どれ、報告を聞かせてみよ』


「ハハッ! ヴェルフ様、ルクシア競り市は大狂乱でしたぞ!」


 ガランはズシリと重い二つの革袋と、木箱をテーブルの上へドンと置いた。


「開始価格白金貨一枚だった【星露果】と【結晶ガラス瓶入りハイポーション】ですが……他国の大富豪や使者たちが血眼で競り合い、なんと【白金貨五十枚】で落札されました! さらに、この希少金属までも上乗せされたのです!」


 ガランが木箱の蓋を開けると、そこには青白い神秘的な光を放つ十塊の原石──【古代の星鉄鉱】が鎮座していた。


「白金貨五十枚に……星鉄鉱!????」


 陰から様子を見ていたドワーフの鍛冶師ガルドが、目を飛び出させて飛んできた。


「な、なんじゃあこの超高密度の金属はぁぁっ!? 鍛冶屋人生で一度拝めるかどうかという神の鉱石じゃぞ……っ! これがあれば、至高の武具どころか建築の全自動補強まで可能になる!」


「買い叩こうとしていたゲッセル伯爵家の代理人は一瞬で蹴散らされ、今頃は泡を吹いて失脚しておりますぞ!」


 ガランの報告に、レオたちは顔を見合わせて「やったな!」と笑顔で拳を叩き合わせた。


---


「よし……ガランさんが莫大な成果と素材を持ち帰ってくれたんだ。【万能書庫】の新しい技術を使って、地上の拠点をもっと凄くしよう!」


 ガランが疲労回復のために一服している間、レオはアリア、ガルドと集まり、脳内のクロニクルへアクセスした。


(≪思考アクセス完了。【万能書庫Lv.3】より解禁技術をロード。『建築補強用星鉄合金』および『環境調和型冷涼テラス』の設計図を提示します≫)


「アリア、ガルドさん! 【古代の星鉄鉱】を微量抽出して、この泥砦の庭に、訪れた旅人を最高におもてなしできるスペースを作りたい!」


「任せてくださいまし、マスター! 幾何学カットによる自動集光と冷風循環の回路設計は、すでにクロニクル様経由で完璧に完了しておりますわ!」


「おうよ! 星鉄鉱の精錬ならワシに任せろ!」


「よし……一撃爆速クラフトッ!」


 レオが【古代の星鉄鉱】と砦の土、そしてアリアが用意した蔓植物の種子へ向けて手をかざし、【魔性順応】の聖魔エネルギーを一気に注ぎ込んだ!


(【魔性順応】──金属精錬、幾何学構造定着、急速緑化変性!)


 ゴォォォォッ……パァァァッ!!


 青い聖魔光が爆発的に弾けると、無骨だった【グラ・ヴァル遺跡館】の庭が一瞬にして変貌を遂げていく!


 星鉄を配合された強靭なガラスと美しい木枠が組み合わさり、天井からは太陽光を心地よい木漏れ日に変える【幾何学遮光ガラス】が展開。さらに、中央には澄んだ湧き水がこんこんと湧き出る【全自動給水スタンド】と、青々とした清涼ハーブが咲き誇るテラス席が一瞬で一括形成されたのだ!


 ほんの数十秒で完成した──【冷涼ボタニカルテラス】である!


---


「な……なんじゃあぁぁっ!???? ほんの数分目を離した隙に、何が起きたのです!?????」


 休憩を終えて庭へ戻ってきたガランが、目の前の光景に絶句し、手にしていた羊皮紙をバサバサと落とした。


 一歩テラスへ踏み入れた瞬間、外の灼熱の猛暑が嘘のように消え去り、心地よい冷涼な風とハーブの芳香が全身を包み込む。


「あ……甘くて清らかな水が、岩の間から途切れることなく湧き出ている……!? これ、すべて汲み放題なのですか!?」


「ええ! 暑い荒野を越えてきた旅人さんや商人さんが、ここで冷たい水を飲んで足を休められるように作ったんですニャ!」


 ミニアが誇らしげに胸を張り、冷えた給水スタンドから注いだハーブティーをガランへ手渡す。


 一口含んだガランは、全身の細胞が歓喜に震えるのを感じ、そのままその場に深々と膝をついて平伏した。


「神の御業……! 荒野の真っ只中に、これほど清々しい天国テラスが存在するなど誰が信じましょうか……っ! ここに立ち寄った冒険者や商人は、あまりの快適さに感動の涙を流し、一瞬でこの【グラ・ヴァル遺跡館】の虜になりますぞぉぉっ!」


「わあぁぁ! すごいニャ! 朝のハーブティーをここで飲むと最高ですニャーッ!」


「ふふ、ルディもリナも、ここなら涼しく遊べるわね」


 エルナや子どもたち、そしてモフモフ姿のヴェルフもテラスのソファーで気持ちよさそうに寛ぎ、みんなの笑顔が庭いっぱいに広がるのだった。


---


 大成功の余韻と至福の和みが満ちる中──。


 ポーン……!


 レオの脳内で、クロニクルのシステム音声が静かな警戒アラートを鳴らした。


(≪警告。広域スキャンにより、当領域へ急速接近する複数の高反応を検知。……ルクシア競り市での大騒動の噂を聞きつけた『高ランク冒険者パーティ』、およびゲッセル伯爵家の警戒部隊です≫)


(噂を聞きつけた客か……それとも、伯爵家の探りか)


 レオは冷涼テラスのグラスを手に取り、不敵に口元に笑みを浮かべた。


(どんな奴が来ようと関係ないさ。地上のテラスで最高の冷水を提供して、骨抜きにしてやるだけだ!)


 追放された少年たちの手によるオアシス拠点【グラ・ヴァル遺跡館】は、さらなる輝きと知略の無双へ向けて、力強く次なる展開へ進んでいくのだった!

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