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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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ルクシア競り市開幕!

 地上拠点【グラ・ヴァル遺跡館】から、老商人ガランの商隊を見送った翌朝。


 天井の【高純度魔導鉱素】が柔らかな光を投げかける地下都市『グラン・ゼノア』の環樹式コテージでは、いつもの穏やかで温かな時間が流れていた。


「ふう……エルナさんの作る野菜スープは、今朝も体に染み渡る美味さだな」


「本当にそうですニャ〜! お野菜が甘くて、お腹の底からポカポカしてきますニャ!」


 朝食のテーブルで、レオとミニアが笑顔でスープの器を傾ける。


 その足元では、愛らしい「モフモフ黒狼」のヴェルフが、ミニアに耳の裏をブラッシングされながら、気持ちよさそうに目を細めていた。


『むふぅ……ミニア、そこじゃ。……コホン、余は聖獣ぞ? 毎朝このように撫で回すのは……ふむ、悪くはないがな』


「ふふ、ヴェルフ様ったら素直じゃないんだから。……レオ様、ガランさんたち、無事に大都市ルクシアへ着いた頃ですニャ?」


「ああ。ガランさんなら、俺たちが手渡した【星露果】と【ハイポーション】を完璧に扱ってくれるさ。……まあ、ルクシア競り市でどんな反応になるかは分からないけどな」


 レオは爽やかに微笑み、仲間たちと和やかな朝食を楽しんでいた。


 自分たちが送り出した品が、外の世界でどれほど恐ろしい大騒動を引き起こすかなど、この時のレオたちは知る由もなかったのである。


 ──同じ頃。


 荒野から遠く離れた大都市ルクシア。大陸中から莫大な富と権力者が集う『大競り市(オークション)』会場の、重厚な鑑定室。


「ふん、荒野の怪しい行商人が持ち込んだ品だと? ガランよ、いくらお前でも冗談が過ぎるぞ」


 ルクシア最高峰の権威を誇る老鑑定士が、鼻を鳴らしながらガランの提出した重厚な木箱を見下ろしていた。


「まあ見てくだされ、鑑定士殿。私が命を懸けて保証する至高の品ですぞ」


 ガランが不敵に微笑み、木箱の蓋を静かに押し開ける。


 その瞬間──。


 部屋中に放たれたのは、七色の虹の光彩と、息を呑むほど濃密な聖魔の芳香だった。


「な……なんじゃあぁぁっ!????」


 老鑑定士の目が飛び出さんばかりに見開かれた。


 箱の中に鎮座していたのは、夜空の星を閉じ込めたかのような群青と真珠色の神果【星露果(せいろか)】。そして、ダイヤモンドのように精巧に幾何学カットされた結晶ガラス瓶に満ちる、真紅の霊薬【ハイポーション】であった。


「ば、バカな……! この美しさ、人間の手による工作物ではないぞ!? お、おい! すぐに魔力測定器を持ってこい!」


 狼狽した鑑定士が、国最高峰の【高純度マナ測定水晶】を恐る恐る結晶ガラス瓶へと近づけた。


 ──次の瞬間!


 ピキキキキキッ……!!


「ひっ……!? 水晶の数値が……一千、五千、一万……!? 上限を突破していくのかぁぁっ!?」


 パリンッ──!!


 けたたましい警報音とともに、最高級の測定水晶が一瞬で真っ赤な光を放ち、耐え切れずに粉々に爆砕した!


「ひぃぃぃっ!? 測定不能……! 水晶が破裂したぁぁぁっ!?」


「な、なんだこの神級の霊薬はぁぁっ!? 一体誰が作ったんだぁぁっ!?」


 鑑定室内に、老鑑定士の涙目になった絶叫と、職人たちの悲鳴が響き渡った。


 こうして、ルクシア競り市は開幕前から過去例を見ない大パニックへと包まれたのである。


 ──そして、大競り市本番。


 超満員となった豪華絢爛なオークションホールは、異様な熱気と殺気に包まれていた。


「皆様! 本日のメイン目玉商品……! 荒野の奥地よりもたらされた奇跡の神果【星露果】! そして、一滴で深傷を塞ぐ【国宝級結晶ガラス瓶入りハイポーション】です!!」


 司会者が声を張り上げ、スポットライトが二つの出品物を照らし出す。


「競りは二品セット! 開始価格は……白金貨一枚(金貨百枚相当)から!!」


 会場が一瞬、静まり返った。


 その最前列で、聖王国ゲッセル伯爵領の代理人が不敵な笑みを浮かべて手を挙げた。


「ふん、白金貨二枚だ! 我がゲッセル伯爵領は猛暑と水不足で薬草園が全滅しておるのだ。この品は我らが安く買い取って──」


 伯爵代理が買い叩こうと高飛車に声を張り上げた、まさにその直後だった。


「白金貨五枚!!」


「戯けが! 我が商会が白金貨十枚を出す!」


「白金貨二十枚だぁぁっ! どんな金額を出してでも競り落とせと我が国の王から命じられておる!」


「黙れ! 白金貨三十枚だぁぁっ!!」


「「「な、何ぃぁぁぁっ!????」」」


 ゲッセル伯爵代理人が、泡を吹いて目玉をひっくり返した。


 他国の大富豪、大商会、さらには列強国の使者たちが、目を血走らせて次々と札を跳ね上げていく!


「バ、バカな!? 白金貨三十枚だと!? 一国の国家予算が動くレベルだぞ……っ!? 貧乏貴族の我が伯爵家に出せるわけがない……っ!」


「貧乏貴族はすっこんでろ! 白金貨四十枚だ!!」


「五十枚だぁぁぁっ! さらに秘蔵の希少金属【古代の星鉄鉱】の原石十塊を上乗せする!!」


 ドドォォォォンッ!!


 司会者の槌が打ち鳴らされた瞬間、会場全体が割れんばかりの地鳴りのような大歓声と大狂乱に包まれた!


「決まりだぁぁぁっ! 史上最高額……白金貨五十枚プラス【古代の星鉄鉱】十塊にて落札!!」


 伯爵代理人が床に崩れ落ち、悔しさと恥ずかしさで血を吐く思いで床を叩く横で、ガランは不敵な笑みを浮かべ、歴史的大勝利の証である金貨の山と星鉄鉱を受け取るのだった。


 ──その頃。


 地下都市『グラン・ゼノア』のコテージ。


「ふぅ、今朝のスープも美味しかったニャー!」


「ああ、ごちそうさまでした。……ガランさん、ルクシアでうまくやってるといいな」


「まあ、ガランさんなら大丈夫ですニャ! さあレオ様、今日も楽しく開拓を始めましょうニャ!」


「おう!」


 ルクシア競り市が大騒動に揺れる中、当のレオたちは特製スープを飲み終え、呑気に笑い合っていた。


 その時──。


 ポーン……!


 レオの脳内で、クロニクルの澄んだシステム音声が鮮やかに響き渡った。


(≪報告。大都市ルクシアの競り市会場における大反響を検知。……実績『世界への圧倒的影響力の提示』の達成を確認しました≫)


(≪条件達成に伴い、【万能書庫(ライブラリ)】の都市運用プロテクトを解除。レベル3『中級製造と魔法工学の書』へアップグレードします≫)


(な……レベル3解禁だぁぁっ!?)


 遠隔オークションでの大圧勝と、新たな古代技術の解禁。


 追放された少年たちの地下都市『グラン・ゼノア』は、さらなる発展へ向かって、どこまでも力強く加速していくのだった!

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