ハイポーションと、高級ガラス瓶
神果【星露果】を爆速実らせた翌朝。
地上の【グラ・ヴァル遺跡館】でガランが心地よい足湯と温かいスープを満喫している間、レオはミニア、そしてヴェルフを連れて、隠し通路から地下都市【グラン・ゼノア】の【薬草調合処】へと足を運んでいた。
アトリエの大きな木製作業台の前では、調合師の少女シエルが、調合器具を整然と並べて目を輝かせて待っていた。
「レオ様、ミニアちゃん!大都市ルクシアの競り市に出品する最高のお薬作りですね!」
「ああ!シエルちゃんの神技で、ガランさんが腰を抜かすような最高の回復薬を作りたいんだ」
「任せてください!私の持てる全ての力を尽くしますわ!」
シエルが気合十分に袖をまくり上げると、膝元にいたモフモフのヴェルフが耳をパタパタと揺らし、だるそうに鼻を鳴らした。
『ふむ……シエルまで主の無茶に付き合うとはな。まあ、余のあくびが出るヒマもないほどの驚きを見せてくれるなら悪くはないが』
「ヴェルフ様、シエルちゃんのお薬は絶対に世界一なんですニャ!」
ミニアが嬉しそうにヴェルフの背中を撫で、和やかな笑い声が調合処に響く。
(よし、まずはレシピの選定だな。……クロニクルの万能書庫から、最高峰の『上級回復薬』のデータを頼む!)
レオが脳内で語りかけると、澄んだシステム音声が即座に応じた。
(≪思考アクセス完了。【万能書庫】より上級霊薬【ハイポーション】の調合手順を展開します。深傷や骨折、損傷を治し、スタミナと魔力を回復させる高純度回復薬です≫)
(どんな深傷も治すハイポーション……!これならオークションの目玉として完璧だ!)
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「シエルちゃん、万能書庫の古代レシピを共有するよ。農園で採れた最高級の薬草と『ルビーシュガー』の濃縮液を使って、大釜で煮詰めていこう!」
「はいっ!」
シエルの【神級薬草調合・秘薬創成:SSS】が即座に全開駆動した!
シエルは寸分の狂いもない神技的な手つきで、大釜に注がれた清浄な霊泉水へ、採りたての薬草とルビーシュガーを投入していく。温度や攪拌速度を完璧にコントロールし、素材の持つ潜在能力を100%引き出していくが──
「くっ……薬効が高すぎて、あと一歩のところで魔力供給が追いつかない……っ!」
シエルの額に一筋の汗が伝わる。
「シエルちゃん、そのまま手を離さないでくれ!俺の【魔性順応】を重ねる!」
レオが大釜の縁に両手をかざし、体内のエネルギーを一気に解き放った!
(【魔性順応】──吸入、変調、共鳴充填!)
パァァァッ……!!
レオの手のひらから解き放たれた極高密度の青い聖魔エネルギーが、大釜の薬液へと一気に叩き込まれる!
(≪抽出不純物を全中和。……聖魔粒子による微細振動共鳴、完了しました≫)
バチバチバチッ……!!
大釜の中で、真紅と黄金の光が美しい螺旋を描いて収束!
飲むだけで死線から生還させる神級回復薬──【至高のハイポーション】が、見事な輝きを放って完成したのだ!
「で、できた……!ハイポーションです……っ!」
「シエルちゃん、やったな!」
シエルが感動に瞳を潤ませる。しかし、レオの作業はここで終わりではなかった。
「中身は完璧だ。……次は、この神品を収めるにふさわしい『国宝級の容器』を作るぞ!」
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レオたちは、アリアの案内で地下水脈の沿岸へと移動した。
そこに広がっていたのは、古代の地熱とマナが生み出した、ダイヤモンドのように透き通る【高純度結晶珪砂】の白い砂浜であった。
「アリア、この珪砂を素材にして最高級の結晶ガラス瓶をクラフトしたいんだが、補強計算を頼めるか?」
「任せてくださいまし、マスター!光の屈折率を最大化し、衝撃にも耐える幾何学カットの設計図をクロニクル様経由で直接送りますわ!」
(≪了解。アリアの幾何学設計図をロード。【魔性順応】の熱・構造変調パラメータを設定しました≫)
「よし……一撃爆速クラフト発動だッ!」
レオが両手を珪砂の山へと押し当てた!
(【魔性順応】──超高熱熔融、結晶変質、一括形成!)
ゴォォォォッ……!!
青い聖魔光が爆発的に弾け、純白の珪砂が一瞬でドロドロに溶融・精錬され、高密度な結晶体へと急速変質していく!
みしみし、キィィィン……!
ほんの数十秒──。
レオの手の前には、まるで巨大なダイヤモンドを精巧に削り出したかのような、透明度100%の【幾何学カット結晶ガラス瓶】が出来上がっていた!
天井の魔導鉱素の光を浴びて、七色の虹の輝きを乱反射させる芸術品のごとき美しさ。
「にゃあぁぁぁ……っ!なにこれ、すっごく輝いててキレイですニャーッ!」
「すごい……!瓶自体が宝石みたいに輝いてますわ……!」
ミニアとアリアが大歓声を上げ、シエルが丁寧にその結晶ガラス瓶へ【ハイポーション】を注ぎ入れていった。真紅の霊薬と七色のガラスの輝きが融合し、まさに『国宝級の神品』がここに誕生したのだ。
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「ガランさん、頼まれていた『出品物の容器』と『ハイポーション』が完成したよ!」
地上の【グラ・ヴァル遺跡館】の商談スペース。
レオが木箱から、完成したばかりの【結晶ガラス瓶入り・ハイポーション】を取り出し、テーブルの上へ静かに置いた。
その瞬間──。
カラン……ッ。
ガランの手から、長年愛用してきた鑑定用の単眼鏡が力なく滑り落ち、卓上で乾いた音を立てた。
老商人は大絶叫することすら忘れ、弾かれたように椅子から立ち上がると、そのままガタガタと膝を震わせ、その場に深々と平伏した。
「ガ、ガランさん……!?どうしたんだ急に!?」
「レオ殿……いや、レオ様……っ!滅多な言葉を発することすら恐れ多い……っ!この美しさは、人間の職人が到達できる領域を超えております……!」
ガランは両手を恭しく捧げ持ち、まるで国宝の神体を取り扱うかのように、震える手で結晶ガラス瓶をそっと抱いた。
瓶から滑らかに放たれる七色の屈折光。そして、封じられた真紅の薬液から漏れ出る、息を呑むほど高純度な聖魔の芳香。
「……飲むだけで重症も治すことができる『ハイポーション』……!これほど高純度の霊薬、王都の宮廷薬術師束になっても絶対に作れん……っ!」
ガランは感極まった涙をポロポロと溢れさせながら、力強く眼光を走らせた。
「この【星露果】と【国宝級ガラス瓶入りハイポーション】……!ルクシアの大競り市に出品されれば、白金貨が飛び交い、間違いなく大陸の歴史に刻まれる大伝説となりますぞ……っ!」
(≪報告。広域スキャンにより、聖王国・ゲッセル伯爵領の最新状況を検知。猛暑と水源汚染により王都の薬草園が全滅。薬品価格が10倍に跳ね上がり、伯爵家が大混乱に陥っています≫)
クロニクルの報告を脳内で受け取ったレオは、フッと冷ややかな笑みを浮かべた。
(俺たちは、最高の品を外の世界に届けるだけだ)
「頼んだよ、ガランさん!ルクシアの人々を驚かせてやってくれ!」
「ハハッ!この命に代えても、最高の成果を持ち帰ってみせますぞ!」
圧倒的な成果と、裏での知略対比が美しく噛み合い、オークション大成功への道が力強く確立されるのだった!




