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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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商人と、招待状

聖王国の密偵ギルバートたちを『最高のおもてなし』で完全に騙し抜き、偽情報を掴ませて追い返した翌朝。


地上の【グラ・ヴァル遺跡館】には、爽やかな光が差し込み、穏やかな時間が流れていた。


フロントのソファーでは、レオが温かい薬草スープを手に口元を緩めている。その膝の上には、愛らしい「モフモフ黒狼」のヴェルフが、行儀よく丸くなっていた。


「ヴェルフ様、今日の毛並みも一段とツヤツヤでモフモフですニャ〜」


ミニアが嬉しそうにブラッシングのブラシを動かすと、ヴェルフは翡翠色の瞳を薄め、どこか照れくさそうに耳をパタパタと揺らした。


『む……これミニア、あまり撫で回すなと言っておろうに。……むふぅ、そこは耳の裏だからくすぐったい……』


「ははっ、すっかりヴェルフもミニアのお気に入りだな。……それにしても、昨日の作戦は大成功だったよ。地上のボロ泥砦で死に体のフリをしつつ、この遺跡館でおもてなしして完封。地下の【グラン・ゼノア】の平和も100%守り切れた」


「はいニャ!地上の『カモフラージュ遺跡館』と地下の『絶対の楽園』の二重構造作戦は完璧ですニャ!」


ミニアが立ち耳をピコピコと弾ませて笑い合う。そんな微笑ましい日常が流れていた、その時だった。


ポーン……!


レオの脳内に、クロニクルの無機質ながら澄んだシステム音声が警戒アラートを告げた。


(≪報告。東方1.5キロ地点より、以前登録された生体波形を検知。商人ガラン率いる商隊が当館へ向かって接近中です≫)


(ガランさんが来たか!)


レオは瞳を輝かせると、スープの杯を置いて立ち上がった。


「ミニア、ヴェルフ!商人ガランさんの到着だ。出迎えに行こうぜ!」


「了解ですニャ!」


---


【グラ・ヴァル遺跡館】の重厚な石造りの門前。


荒野の地平線から、数頭の馬に曳かれた『ガラン商隊』の荷馬車が、ガタゴトと音を立てて近づいてきていた。


手綱を握る白髪混じりの老商人ガランは、1ヶ月前まで何もなかったはずの荒野の中央を見上げ——次の瞬間、驚愕のあまり手綱を握りしめたまま完全に硬直した。


「な、なんじゃあぁぁぁ……っ!?ほんの1ヶ月前まで、ここには干からびた石ころと猛毒の砂嵐しかなかったはず……っ!?なぜこれほど立派で美しい石造りの館が建っておるのだぁぁっ!?」


ガランの目玉が落ちんばかりに見開かれる。


眼前には、古代の重厚な石組みが見事に修復された気品ある館【グラ・ヴァル遺跡館】が凛と佇み、その前には美しい石造りの【魔導自動井戸】から、澄み切った清涼水がジャバジャバと豪快に溢れ出していたのだ!


「ガランさん、いらっしゃいませニャ!長旅でお疲れ様ですニャ!」


ミニアが飛び切りの笑顔で手を振って駆け寄り、レオが木製のグラスに汲み立ての冷たい水を満たして歩み寄る。


「ガランさん、遠路はるばるようこそ。まずは冷たい水で喉を潤してください」


「あ、あぁ……かたじけない……。だがレオ殿、この建物と井戸は一体……!?」


混乱するガランは、習慣的に腰の毒検知用単眼鏡でグラスを確認した。当然、不純物や毒素の反応は一切ない。息を呑んで一口含んだ——その瞬間!


「〜〜〜〜〜〜っ!!?????」


ガランの顔筋が激しく痙攣した。


(つ、冷たくて甘い……っ!?なんだこの、身も心も洗い流されるような圧倒的な清涼感は……っ!?王都の最高級貴族すら口にできん『神の雫』ではないかぁぁっ!?)


「ガラン様、館内の足湯とお食事も準備できておりますニャ!」


ミニアに促されるまま館内へと足を踏み入れたガランは、温かな琥珀色の街灯、地下の温泉から引き込まれた湯気を立てる足湯、そして手際よく出された絶品肉シチューを目の前にして、ついに感情を崩壊させた。


「あぁぁぁ……っ!!身体の底から毒気と長旅の疲労が溶けていく……っ!!荒野の真ん中に、こんな天国のようなオアシスが存在するなど誰が信じるかぁぁっ!?」


圧倒的な快適さに、老練なプロの商人が子供のように大絶叫して感動に打ち震える。


しっかりスープを飲み干し、足湯で心身ともに完全復活を果たしたガランは、興奮冷めやらぬ面持ちでデスクに乗り出した。


「レオ殿、ミニア殿!実は今回、君たちにぜひ見てほしい『お宝』と『特別な招待状』を持ってきたのだ!」


ガランがずっしりと重い革袋から取り出したのは、二つの品であった。


一つは、何百年も乾燥しきって誰も芽を出させることができなかったという、カラカラに乾いた【未知の古代種子】。


そしてもう一つは、豪華な金箔の刺繍が施された【大都市ルクシア・大競り市(オークション)の極秘招待状】であった!


「これは……!?」


「ふふふ……!この種子は昔、古代遺跡の深層から発掘された『古代世界樹の原種』と言われる幻の種だ。私ではどうしても芽を出させられなかったが、君たちのあの凄まじい果実や作物を育てた腕なら、あるいはと思って持ってきたのだ!」


ガランは熱っぽく語ると、金色の招待状をレオの前へと押し出した。


「そしてこの招待状だ!大都市ルクシアで近々開催される大競り市……大陸中の大富豪や貴族、大商人が一堂に集まる最高峰のオークションだ!君たちの作る『ルビーポーション』や『極上の刃物』を出品すれば、間違いなく歴史的な大騒動になる!」


ガランの提示した提案は、まさにレオたちが目指していた「商業発展の足がかり」そのものであった。


レオは古種子を手に取り、その奥に眠るかすかな生命の鼓動を【魔性順応】で感じ取ると、不敵で頼もしい笑みを浮かべた。


「古代世界樹の原種に、ルクシアの大競り市か……!面白くなってきたな、ガランさん」


「あたしたちの最高の商品で、外の世界の連中を驚かせてやるニャ!」


ミニアも目を輝かせて拳を握りしめる。


「ガランさん、この種子はお預かりするよ。これを使って、オークション会場全体がひっくり返るような『最高の品物』を準備してみせるさ!」


「ハハハ!頼もしいことだ!君たちなら必ずやってくれると信じておったぞ!」


信頼の商人ガランとの絆がより一層固く結ばれ、外の世界を巻き込む「大オークション」への扉が、いま力強く開かれるのだった!

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