古代遺跡と、膨らむ未来
【記録刻印】で中立都市ルクシアから地下都市【グラン・ゼノア】のコテージへと戻ってきたレオとミニア。
二人はさっそくダイニングテーブルの上に、ジャラリと音を立てて大きな革袋を置いた。
中から転がり出たのは、重みのある眩い黄金の輝き——ズッシリと詰まった金貨三十枚である。
「みんな、ただいま!見てくれ、俺たちの商品が全部売れたぞ!」
集まっていたガルド、エルナ、シエル、そしてエルフのセルディクたちが、テーブルの上の金貨を見て一斉に息をのんだ。
「き、金貨三十枚……!?冗談でしょう、レオ様……っ!?」
「本当だニャ!ガランさんっていう老商人さんが、シエルちゃんのお薬も、ガルドさんのナイフも、セルディクさんたちの野菜も『本物の至高品だ』って大絶賛して買い取ってくれたんだニャ!」
ミニアが胸を張ってドヤ顔で報告すると、シエルの目からポロポロと大きな涙が溢れ出した。
「街の薬種屋さんには『雑草だ』って追い払われたのに……私たちの作ったお薬が、そんなに高く買っていただけるなんて……っ」
「わしの打った日常用のナイフが、そんな高値で……!職人冥利に尽きるぞ……っ!」
ガルドも目頭を熱くし、セルディクたちエルフ族も互いに手を取り合って「私どもの作物が認められた……!」と涙ぐんで喜びを噛みしめていた。
虐げられていた過去を持つ仲間たちが、自分たちの仕事と存在を外の世界に認められ、強い誇りと絆を取り戻した瞬間であった。
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一頻り喜び合った後、レオは今後の展望について語り始めた。
「商人ガランさんは、近いうちに商隊でこの荒野の近くまで足を運んでくれる約束をしてくれた。これからは自分たちで街まで売りに行かなくても、ここで安全に取引ができる」
「最高ですニャ!でもレオ様、ガランさんたちをお迎えして商談する場所はどうしますニャ?地下の街へ案内するわけにはいかないニャ」
「ああ、そのことなんだが……北西にある『古代遺跡の地上遺構』を活用しようと思うんだ」
レオが指し示したのは、第8話で巨大な地下空間を発見した、地上にそびえる頑丈な石造りの遺跡跡であった。
「あの遺跡の1階をリノベーションして、ガランさんたちと落ち着いて商談できる部屋と、旅の疲れを癒やす客室、それにお風呂を作ろうと思う。名前は【グラ・ヴァル遺跡館】だ!」
「おおっ!古代の頑丈な石組みなら、修復もあっという間ですぞ!わしに任せてくだされ!」
ガルドが腕を鳴らし、アリアも「地下の温泉配管を地上1階へ分岐させ、最高級の温浴スペース(足湯・大浴場)を作りましょうわ!」と目を輝かせた。
さらにレオは、将来の発展を見据えて一つのアイデアを付け加えた。
「それと、遺跡のすぐ前に、地下水脈から清らかな水を汲み上げる【魔導自動井戸】を作っておこう。ガランさんたちが馬や荷車に水を補給できるようにね。将来的にここへ旅人が通りかかった時、喉を潤せる場所があれば安心だろ?」
「素晴らしい考えです、レオ様!水があれば、どんな過酷な旅人も救われます!」
セルディクたちも大賛成し、さっそく「地上の商業&おもてなし拠点づくり」が始まった。
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作業は驚異的なスピードで進んだ。
ガルドの職人技で遺跡の石壁が美しく補強され、最高級の木製テーブルや椅子、ふかふかのベッドが搬入された。アリアが刻んだ魔導回路によって琥珀色の温かな街灯が灯り、地下から引き込まれた温泉からは心地よい湯気が立ち上る。
遺跡の前には、レオの【魔性順応】で浄化・補強された石造りの『魔導自動井戸』が完成し、絶え間なく清らかな湧き水が溢れ出し始めた。
「す、すごいですニャーッ!荒野の真ん中に、こんな豪華なオアシス宿ができちゃいましたニャ!」
完成した【グラ・ヴァル遺跡館】の見事な出来栄えに、ミニアも大興奮だ。
地下都市へ続く隠し通路はヴェルフの強固な隠蔽結界で完璧に遮断されており、地上からはただの「交易宿」にしか見えない仕組みになっている。
落ち着いた館内のテーブルで、レオとミニアはガランに頼む「最初の注文リスト」をワクワクしながら書き進めていた。
「セルディクさんたちのために『地上では育てるのが難しい希少な果樹やハーブの種』を頼もう」
「ガランさんが各地で『グラ・ヴァルに宿ができてた』って噂を広めてくれたら、そのうちいろんな人達が泊まりに来てくれるかもしれませんニャ!」
「ああ。宿泊費や食事代でまた金貨が稼げるし、人が集まってくれば、いずれ地上にも村が作れるはずだ」
その時であった。
ポーン……!
レオの脳内で、クロニクルの澄んだシステム音声が響き渡った。
(≪実績解除:『外部商業パイプの確立および地上商業拠点・生活基盤の完成』を確認。──【万能書庫】のデータ検索精度および広域スキャン範囲が拡張されます≫)
(≪広域魔導スキャンの範囲が、拠点周囲5kmから『10km』へ拡大しました≫)
(10kmまでスキャン範囲が広がったのか……!)
能力の覚醒にレオが息をのんだ直後、クロニクルが続けて新たな解析結果を告げた。
(≪警告および報告。鉄鋼樹から広がる『浄化魔気流』の境界付近——北西8km地点にて、当地域へ向かって移動する複数の生命反応を検知しました≫)
「複数の生命反応……!?人間か、魔獣か、それとも別の何者か……?」
鉄鋼樹がもたらす温かな浄化の風に引き寄せられるように、何者かがこの「グラ・ヴァル」を目指して近づいてきていたのだ。
「どうも、ここを目指している何者かがいるようだ!」
レオは表情を引き締めると、隣に立つミニア、そしてヴェルフへ視線を向けた。
「ミニア、ヴェルフ、正体を確かめに確認へ向かうぞ!」
「了解ニャ!警戒しながら急行するニャ!」
『うむ。何が相手であれ、我らの領域を冒させはせん』
浄化の風が吹き抜ける荒野の先で待つのは、敵か、それとも新たな出会いか——レオたちは緊張感を胸に、夜の荒野へと素早く駆け出していくのだった。




