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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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信頼の商人

質素な旅人のフード付きマントを深々と被ったレオとミニアは、新能力【記録刻印(テレポート)】で中立都市ルクシアの路地裏へと降り立った。


活気あふれる大通りを通り抜け、向かったのは先日訪れた冒険者&商人ギルドの重厚な建物である。


「やあ、二人か。奥へ入ってくれ」


受付を通り過ぎ、案内されたギルド長室。重厚な木製デスクの向こうで、立派な髭を蓄えたギルド長が温かく二人を迎え入れた。ヒビの入った測定水晶の件以来、彼はレオの底知れぬ潜在能力を一目置いており、詮索することなく好意的な態度を示してくれる。


フードの奥から、レオが静かな声で切り出した。


「ギルド長、実は今日相談があって来たんだ。俺たちの商品を継続的に扱ってくれる、口が堅くて信頼できる商人を紹介してほしいんだ」


ギルド長は深く頷き、組んだ手に顎を乗せた。


「なるほどな。ウチのギルドが直接買い取ることもできるが……それでは出所を詮索する余計な目が向きかねん。君たちの立場を考えれば、個人で動ける一流の商人を挟むのが一番安全だ」


ギルド長は呼び鈴を鳴らし、控えていた職員に一言命じると、レオへ向き直って笑みを浮かべた。


「私の一番信頼している老商人がちょうどこの街に滞在していてね。『ガラン』という男だ。商売の腕はもちろん、筋を通す男で口も固い。私が裏の保証人になろう」


---


数分後、ギルド長室の扉がノックされ、白髪混じりの頑固そうな髭を蓄えた一人の老人が入ってきた。鋭い目つきの中に、確かな誠実さを宿した男——老商人ガランである。


「ギルド長、お呼びですかな?……ほう、そちらの二人が?」


「ああ、ガラン。私の個人的な大切な友人だ。彼らの持ち込んだ商品を見てやってくれ」


レオとミニアは目配せを交わすと、鞄から『商品』を取り出し、ギルド長室の応接テーブルへ並べた。


【ルビーポーション】、【ナイフ】、【果実や野菜】、全て【地下都市グラン・ゼノア】の生産品だ。


「ふむ……どれどれ」


ガランは懐から鑑定用の単眼鏡を取り出すと、まずはルビーポーションを手に取った。透き通るルビー色の液体を光にかざし、瓶の栓をわずかに緩めて匂いを嗅いだ瞬間、ガランの目がカッと見開かれた。


「な、なんという澄み切った魔力濃度だ……!一体どんな調合師が作ったというのだ!?」


続けてガルドのナイフを手に取り、刃筋を指でそっと撫でる。


「……素晴らしい。高価な金属を使っているわけではないが、鋼の鍛え方と研ぎの精度が異常なまでに完璧だ。職人の魂がこもっておる」


最後に、真っ赤に熟した採れたての果実に一口かじりつくと、ガランは言葉を失って震え出した。


「な、なんだこの甘みとみずみずしさは……!?完熟した蜜のように甘く、疲れた体に活力が満ちていく……!私は長年商人をやってきたが、これほど嘘偽りのない本物の商品ばかりを見せられたのは初めてだ!」


ガランは単眼鏡を置き、レオとミニアを真っ直ぐに見つめた。


「ギルド長が保証人になる理由が良く分かった。二人とも、この商品をぜひ私に買い取らせてくれ!誤魔化しなしの適正価格……いや、それ以上の高値で買い取らせてもらう!」


---


ガランがテーブルの上にジャラリと並べたのは、重みのある黄金の輝き——大量の【金貨】であった。


「特製ポーションと極上のナイフ、そしてこの素晴らしい作物……合わせて金貨三十枚でどうだ?」


想定以上の金額に、ミニアの立ち耳がピンと立ち、尻尾がパタパタと歓喜のダンスを踊った。


「やったニャ、レオ様!すごい額の金貨ですニャ!」


「ああ、感謝するよ、ガランさん」


レオがニッコリと微笑んで握手を交わすと、ガランは満足そうに頷き、ふと真面目な顔で提案してきた。


「時に、レオ殿。これほどの逸品を継続して納めてもらえるなら、ぜひ定期的な取引を結びたい。もちろん、こちらから出向いてもかまわない。」


「えっ、俺たちの拠点は、【グラ・ヴァル】だが、そこまで来てくれるのか?」


「ああ、どこでも行ってやるさ。街では手に入りにくい珍しい作物の種子や、建材・道具など、欲しいものがあれば私が責任をもって持って行こう。お互いにメリットがあるはずだ」


ガランの申し出は、まさにレオたちが望んでいた展開であった。


自分たちで毎回街まで売りに行く必要がなくなり、グラ・ヴァル近郊で信頼できる商人から希少な資材や種子を直接購入できるようになるのだ。


「最高の提案だ!ぜひ俺たちの専属商人として、これからも長く付き合ってほしい!」


「ガランさん、よろしくお願いしますニャ!」


「ハハハ、こちらこそ!頼もしい取引相手ができて光栄だよ!」


こうして、ギルド長の仲介のもと、将来の開拓を支える「強力な専属商人ガラン」との固い信頼関係が築かれたのだった。


---


目的だった【金貨】と、頼もしい商業ルートを手に入れ、大満足で中立都市を後にしたふたり。


【記録刻印】で地上拠点(泥レンガの砦)へと戻ってくると、地上の【鉄鋼樹】から吹き出す温かな『浄化魔気流』が、静かに、しかし確実に周囲数キロの過酷な荒野を和らげていた。


金貨の入ったずっしりと重い袋を腰に下げ、レオはどこか誇らしげに空を見上げた。


(これからガランさん達が足を運んでくれるなら……誰もが立ち寄れる『宿場町』や『開拓村』を築いていくのも悪くないな)


地上の人々は地下都市の存在を知らずとも、「グラ・ヴァル領」として発展を遂げていく未来のビジョンを、レオは静かに思い描くのだった。


「さあミニア、戻ってみんなに報告しよう!これから忙しくなるぞ!」


「はいニャーッ!ガランさんがどんな珍しい種を持ってきてくれるか、今からすっごく楽しみですニャ!」


獲得した金貨と深まった絆を胸に、レオたちはさらなる領地発展への期待に胸を躍らせ、温かな我が家へと戻っていくのだった。

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