繋がる空間
地下都市【グラン・ゼノア】。
朝日を模した【高純度魔導鉱素】の優しい光が降り注ぐ中、環樹式コテージのダイニングテーブルには、豊かな香りが満ちていた。
昨日獲得した【ゲッセル伯爵】の先遣隊の軍馬5頭は、大規模魔導農園の隣にある緑豊かな牧草エリアで、伸び伸びと新鮮な草を食んでいる。
エルナが温和な笑みを浮かべ、おかわりを盛ってくれた。ルディとリナも、焼きたてのパンに黄金蜜リンゴのジャムをたっぷり塗って、口のまわりをベタベタにしながら美味しそうに頬張っている。
そんな平和な朝食のひとときの中、レオは脳内からアリアとクロニクルへ語りかけた。
(「昨日の先遣隊との遭遇だけど、ひとつ大きな課題が見えたよ。地上で何かあった時、地下から走って向かうようじゃ、どうしても数分から十分のタイムラグができる。アリアさん、一瞬で移動できる【超高速魔導シャトル(生物転送魔法)】のことなんだが……」)
(「ふふふ……!マスター、そこは天才開発者の私にお任せくださいまし!」)
レオの脳内に、アリアの誇らしげで弾むような声が響いた。
(「実は昨夜、マスターの【魔性順応】と古代の転送回路のデータを照合していた際、コロンブスの卵のような大発見をいたしましたの!空間の反発や波形のブレを細かく調整しようとするから難航していたのですわ。マスターのあの無尽蔵の『聖魔エネルギー』をアンプとして直接回路へ叩き込めば、波形の歪みなど力技で一瞬で相殺・適合できますの!」)
さらに、アリアは興奮気味に声を上ずらせた。
(「それとマスター!ご依頼いただいていた【時間凍結保管庫】と『自動物質転送』も、転送回路と連動させて完璧に完成しておりますの!これで地上で狩った大型魔獣や得た素材に触れるだけで、地下の保管庫へ一瞬で直送・完全鮮度で自動保存できますわ!」)
すかさず、クロニクルの無機質なシステム音声が脳内に割り込み、アリアの報告をロジカルにサポートする。
(≪肯定。マスターの【魔性順応】エネルギーは、物質および空間概念そのものを適合・変調させる特性を持ちます。アリアの設計回路へ直接エネルギーを充填した場合、空間歪み係数の相殺率は99.8%に達し、移動ポータルと『自動物質転送』が一挙に即座起動すると推算されます≫)
「お願いしていた保管庫と物質転送まで完成したのか!それに、俺の【魔性順応】を直接回路に流し込めば、移動シャトルも一発で完成させられるんだな!」
思わず声を上げたレオに、アリアが脳内でパチンと指を鳴らした。
(「その通りですわ、マスター!理屈が通れば話は早いですの!さあ、今すぐ移動ポータルの開通に取りかかりましょう!」)
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コテージの1階に設置された【転送専用ルーム】。
朝食を終えたガルドたちも見守る中、壁面に刻まれた、生物転送魔法陣の中心に、レオが力強く両手をかざした。
「頼むぞ……【魔性順応】 一気点火!」
キィィィィィィン!
レオの全身から溢れ出た極限まで澄み切った青い聖魔エネルギーが、激流となって壁面のルーン陣へと一気に流れ込んだ!
アリアの計算とクロニクルの予測通り、空間の歪みや反発係数が、レオのエネルギーによって一瞬にして『適合状態』へと強制変調されていく。
(≪転送シグナル、完全同期。相殺率100%。空間バイパスおよび自動物質転送ラインの常時接続に成功しました≫)
脳内でクロニクルのアナウンスが鳴り響くと同時に、ズウゥゥン!と部屋の中央に透き通る群青色の『空間ポータル』がまばゆく立ち昇った!
「やったニャー!繋がったニャ、レオ様!」
ミニアがパッと目を輝かせて歓声を上げる。
レオが恐る恐るポータルへ一歩踏み出すと──視界がふっと歪んだ次の瞬間には、冷たい砂嵐の風が吹く地上の【泥レンガの砦】の中に立っていた。
「すごい……!走れば10分以上かかっていた距離が、本当に一瞬だ……!」
もう一度ポータルをくぐれば、コンマ一秒の遅延もなく地下のコテージへ戻ってくる。
移動インフラと物質転送ラインの即時完成に、アリアが脳内で狂喜乱舞した。
(「きゃあああ!見ましたかマスター!私の閃きとマスターのエネルギーが合わされば、空間の障壁など一瞬で粉砕ですわっ!これで地上と地下は完全に一歩で行き来でき、狩った獲物も一瞬で保管庫へ送れますの!」)
「地上からの移動も、獲物の持ち帰りも完璧ですね……!本当に素晴らしい古代の技術です……!」
ガルドやエルナも、目の前で起きた超技術に驚愕している。
レオは地上と地下が完璧に繋がった爽快感と達成感に胸を躍らせ、頼もしい仲間に向かって笑顔を向けた。
(「アリアさん、クロニクル、本当にありがとう!これで急な襲撃があっても一瞬で地上の砦へ駆けつけられるし、遠くで狩った獲物も重い思いをして運ぶ必要がなくなったよ!」)
(「ふふん、マスターのお役に立てて最高に光栄ですわ!」)
(≪マスターの安全確保および初期目標の達成を確認。お見事です≫)
「よし、この転送シャトルの開通で一瞬の移動と物流が可能になったから、次は地上の調査範囲を広げていこう!」
「了解ニャ!どこへでもお供するニャ!」
『うむ。どのような場所であれ、余がついておるからな』
移動と物流という大きな課題を爆速で解決したレオたちは、次なる地上5kmエリアの探索と領地拡大に向けて、さらに強い絆と高揚感を胸に抱くのであった。




