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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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運命の分岐点と、熱き覚醒

王立開拓軍に入隊して3年。18歳になったレオ・アルヴァレスの全身は、連日の泥仕事と過酷な肉体労働によって、しなやかで強靭な筋肉で満たされていた。


魔法至上主義の聖王国において、「全属性ゼロの無能」と判定されたレオに与えられたのは、危険な最前線での泥掘りや巨石運搬といった雑用ばかりだ。


同年代の貴族出身の魔法兵たちからは「魔法も使えない泥拾い」と嘲笑されていたが、レオは額の汗を拭い、太陽に向かってハキハキと笑っていた。


(周りに何と言われようが関係ねえ。筋肉と根性、それにこの3年で叩き込んだ土木の知識だけは嘘をつかねえからな!)


だが、開拓軍の最前線——紫色の毒気が漂い、強酸性の泥が靴底を溶かす地獄のような【毒泥湿地】で、その日常は突如として崩れ去った。


湿地の奥深くから姿を現したのは、体長5メートルを超える巨大な魔獣——毒大トカゲ(ポイズン・ヴァイパー)であった。


「ヒィっ、助けてくれ!誰かあいつの足止めをしろ!」


猛烈な毒ブレスを吐き散らす巨体に対し、高慢な貴族隊長は悲鳴を上げると、後ろからレオの背中を毒泥の中へと力任せに押し飛ばした。


「うおっ!?」


つんのめり、強酸の泥の中へ倒れ込むレオ。見上げれば、至近距離から顎を大きく開いた毒大トカゲが、死を告げる濃厚な紫色の毒ブレスを容赦なく吹きかけていた。


(くそっ……俺の人生、こんな理不尽な場所で終わりなのか——!?)


視界が紫色に染まり、全身の皮膚が焼けつくような激痛が襲う。死の恐怖に身を竦ませた、まさにその瞬間だった。


ドクンッ!


レオの胸の奥で、何かが激しく弾けた。


(熱い……!?なんだ、これ……っ!?)


全身の細胞が狂喜乱舞するように跳ね上がる。肌に触れた猛毒が青白い光の粒子へと変換され、毛穴という毛穴から身体の奥へとぐんぐんと吸い込まれていくのだ。


それと同時に、レオの脳内で誰も聞いたことがない透き通ったシステム音声が、一瞬だけかすかに響いた。


(≪自己防御プロトコル作動。──高濃度有害物質の急速吸収およびエネルギー変換を確認≫)

(≪生体波形認証:適合率100%……プロトコル『特務制御官』起動手続を保留≫)


絶望の激痛どころか、全身に途沸き立つような筋肉の躍動と熱量が満ち満ちていく。


(な、なんだかわからねえ……!けど、毒を浴びれば浴びるほど、体中に力が溢れてくるぞ……っ!!)


全身の血が熱くたぎる。これが、後に【魔性順応】と呼ばれる規格外の能力が産声を上げた、レオの人生における『第1の分岐点』だった。


「理由はわかんねえが——力をくれて、ありがとなぁぁぁっ!!」


咆哮とともに立ち上がったレオの右拳に、吸収した猛毒のエネルギーが青い閃光となって収束する。


襲いかかってきた毒大トカゲに向かって、レオは土木作業で鍛え上げた足腰を踏み込み、渾身の右ストレートを叩き込んだ!


ドガァァァンッ!!


「グギャッ!?」


青い光を纏った一撃が、巨体のアゴを豪快に打ち抜く!

5メートルを超える巨大トカゲの体が宙を舞い、そのまま白目を剥いて湿地の奥へと吹き飛ばされた。


「……は?嘘だろ……?」


レオを盾にして後ろに引き下がっていた隊長や魔法兵たちは、流れてきた毒ブレスの残り香で泡を吹き、這いづり回りながら絶句していた。


傷一つなく仁王立ちし、己の拳を見つめるレオへ、隊長が恐怖に顔を歪めて指をさす。


「貴様……!なぜ無傷なのだ……!?気味が悪い、魔物と共謀して我々をハメたな!?」


見苦しく責任逃れを図る隊長に対し、レオは呆れたように息を吐き、堂々と胸を張った。


「ハメただと?あんたらが怯えてた毒なら、俺が全部綺麗に吸い取ってやったぞ。手柄は横取り、ピンチになれば部下を盾にするような腐った隊なんて、こっちから願い下げだ!」


——結果、責任転嫁されたレオには【軍からの即日免職・王都からの永久追放】が言い渡された。


国境街の開拓支援所で、役人は怯えたように距離を置きながら、古びた羊皮紙を叩きつけてきた。


「ひ、ヒヒッ……無能のくせに魔物とつるむ化け物め!お前にはこの【最悪の荒野、グラ・ヴァル】の土地権利書をやる!誰も足を踏み入れん地獄で、一人で野垂れ死ぬがいい!」


誰もが開墾を諦め、放置されてきた呪われた荒野。

だが、権利書に書かれた「無数の毒素と瘴気が渦巻く地」という文字を見た瞬間、レオの目が歓喜に輝いた。


(毒と瘴気が溢れる地獄の荒野……?へっ、俺にとっては『無限のエネルギー補給所』ってことじゃないか!最高の天国だ!)


怯える役人から勢いよく権利書をひったくると、レオはニヤリと力強く笑ってみせた。


「サンキュー、役人さん!こんな最高の土地をタダでくれるなんて太っ腹だな!俺はこの手とこの身体で、世界一の場所を作ってみせるさ!」


驚愕で開いた口が塞がらない役人を置き去りに、18歳の青年は太陽の輝く荒野へと力強く歩み出していった。


目指すは、地獄と恐れられる開拓地——【最悪の荒野、グラ・ヴァル】。

レオの人生を大きく変える、最高の理想郷づくりが今まさに始まったのだった。

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