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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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至高の工房

翌朝。地下都市【グラン・ゼノア】の爽やかな【高純度魔導鉱素】の光が広場を包み込んでいた。


ガルドたち一家はすっかり長旅の疲れも癒え、朝から元気いっぱいに過ごしていた。ルディとリナは、広場の中央でヴェルフの背中に乗せてもらい、「わあぁ!ワンちゃんの背中、たかーい!」「きゃははっ!」と大はしゃぎしている。


『わしは聖獣ヴェルフぞ、遊具ではないのだがな』


不服そうに言いつつも、ヴェルフは二人が落っこちないよう、ゆったりとした足取りで歩いてやっていた。それを見守る妻のエルナも、安らぎに満ちた表情で微笑んでいる。


「ガルドさん、昨日の約束通り工房へ案内するよ」


「おおっ、レオ様。よろしくお願いします!」


レオ、ミニア、アリア、そしてガルドの四人は、大規模魔導農園の北側に位置する【古代魔導鍛冶工房】へと向かった。


重厚な金属扉が開き、内部に入った瞬間、ガルドは息を呑み、その場に棒立ちとなった。


中央で青白い燐光を放つ『永久魔導炉』。叩く衝撃を魔力圧縮に変換する漆黒の『万能金床』。そして棚にズラリと並ぶのは、高純度の『ミスリル銀』や『星鉄鉱』、さらには伝説の『オリハルコン原石』だった。


「こ、これが古代の魔導鍛冶工房!夢にまで見た鉱石がっ……」


ガルドは震える手で漆黒の金床に触れ、感極まった涙をボロボロと流した。


「レオ様、私は王都のゲッセル伯爵に全てを奪われ、ゴミのように捨てられました。なのにレオ様は、こんな素晴らしい夢の場所まで与えてくださった……!」


ガルドは力強く立ち上がると、レオたちの前で深々と頭を下げた。


「レオ様、ミニア様、俺の持てる全技術とこの古代工房の力を集結させ、お二人のための『最高の武具』を打ち上げてみせます!今使用されている武器と防具を教えていただけないでしょうか?」


問いかけられたレオは苦笑いを浮かべ、自分の両手を見つめた。


「ありがとうガルドさん。でも、俺もミニアも追放されてから武器も防具も殆ど持っていないんだ。ガルドさんも見ていた通り、これまでずっとこの身一つで戦ってきたんだよ」


「……ああっ、確かにあの時も素手で追撃隊を叩き潰しておられましたな。しかしまさか、本当に一切の武具をお持ちでなかったとは……。素手であれほどの破壊力を出せるレオ様が、もし武具を手にしたらどうなるのか……。考えるだけで震えますぞ!」


職人としての情熱を激しく燃やすガルドに、アリアが楽しげに話しかけた。


「ガルド様、私から提案がございますわ!レオ様の強靭な肉体と生命エネルギーを伝導・増幅する『古代魔法回路』を刻み込んだ大剣を作っていただけないでしょうか?」


「エネルギーを伝導・増幅する古代魔法回路ですか!?素晴らしい発想ですね。アリア様の古代理論を組み込んだ、どんな強大な装甲も断ち切る威力を発揮する大剣を打ってみせますぞ!」


(≪アリア。私のデータベース【万能書庫】より、マスターの【魔性順応】に最も適合する『古代特務制御官用・魔導大剣』の設計回路図を送信する。ガルドの技術と共鳴するようにアセンブルせよ≫)


(「まあ、クロニクル様!助かりますわ!」)


脳内で響いたクロニクルの声に、アリアは頼もしそうに微笑んで胸を張った。


「ガルド様、マスターの魔力波形に完璧に同期する設計図を共有いただきましたわ!これを組み込みましょう!」


「おおおっ!期待にこたえられるような、至高の大剣を打ちますぞ!」


アリアの古代理論にガルドの目が激しく輝く。すると今度は、レオがミニアの肩に優しく手を置いた。


「ガルドさん、ミニアには彼女のしなやかな身軽さと、気配を消して敵の懐に潜り込む才能を活かせる装備をお願いしたいんだ。軽さを邪魔せず、気配を遮断するような防具と、双短剣はどうかな?」


「ニャっ!?レオ様、あたしのことそんな風に見ていてくれたんですニャ……」


ミニアが嬉しそうに目を輝かせると、アリアがさらにニヤリと微笑んだ。


「ふふふ、ミニア様の武具にも私の古代魔法回路を組み込みましょう!ガルド様の鍛冶技術と融合させれば、気配を極限まで遮断しつつ、着用者の残像や幻影を生み出して敵を翻弄する『幻影軽甲冑』と、空間の歪みを突く『ミスリル双短剣』という、これまで世界に存在しなかった古代魔導武具をお願いしますわ!」


「お見事です、アリア様!これまでにない至高の逸品を仕立ててみせますぞ!ヴェルフ様は元より絶対的な力がおありですから、武器など不要でございましょう!」


『うむ、わしにそのような装飾は不要!我が力があれば十分じゃ!』


ヴェルフが誇らしげに胸を張る。


ガルドはそのまま腕まくりをして『永久魔導炉』に火を灯した。


「レオ様、さっそく作業に入ります。最高の武具を打ち上げてみせますので、楽しみにしていてください!」


ガルドは即座に槌を手に取り、カン、カン、と軽快な音を響かせ始めて鍛冶に着手したのだった。


---


古代魔導鍛冶工房を後にしたレオたちは、アリアの案内のもと、農園エリア内に点在する古代施設の話を聞きながら歩いていた。


「そういえばアリアさん、相談があるんだけど。昨日のメガロ・ボアみたいに大きな魔獣を狩った時、肉をずっと新鮮なまま保存しておく方法ってないかな?俺たちが暮らしている北西端のコテージで料理する時、すぐに使えたら助かるんだが」


「ふふん、それなら最適な古代の設備がございますわ!【時間凍結保管庫(タイム・フリーズ・ストレージ)】でございますの!」


アリアが案内したのは、自身が目覚めたクリスタルカプセルが存在するエリアの一区画であった。


「ここは本来、絶滅してしまった希少な種子や生命体の遺伝子を保管しておく設備ですが、レオ様の要望を満たせますわ!ここに保管されたお肉や素材は、時間を完全に停止させた状態で食材の鮮度を半永久的に保つことができる保冷設備ですの。この保管庫の一部を食材用として代用すればいいのですわ!さらに、レオ様たちが暮らすコテージの調理場へ『自動物質転送』でいつでも必要な分だけ一瞬で供給できるようにできますわよ!」


(≪アリア、転送軌道の演算は、並列処理にてサポートします≫)


(「ふふ、クロニクル様がいてくだされば、安全対策も完璧ですわね!」)


アリアは楽しそうにパチンと指を鳴らした。


「この『自動物質転送』の古代魔法を応用することで、レオ様のコテージから地上の『泥レンガの砦』まで一瞬で移動できる【生物転送魔法】の開発も進めておきますわ!こちらが完成すれば、これからの地上への移動も一瞬ですの!」


「料理への肉の自動供給に、地上への転送の魔法まで……、ありがとうアリアさん!」


「お役に立てて光栄ですの、レオ様!」


(「クロニクルも、いつも完璧なサポートをありがとうな」)


「それだけではありませんわ!この設備エリアには、まだ起動していない超技術施設がまだまだ沢山眠っておりますの。それにこれから新たな設備も開発していきますし、楽しみでしかたないですわ!」


「すごい……、この都市がこれからどう発展していくのか、本当に楽しみだ!」


レオとミニアは顔を見合わせ、ワクワクとした高揚感に胸を躍らせたのだった。


---


しかしその頃、グランディール聖王国の王都では……。


「なにぃっ!?追撃に出した亜人狩り部隊が、何者かに返り討ちにされただと!?」


豪華絢爛な執務室で、悪徳貴族のゲッセル伯爵が額に青筋を浮かべて報告書を叩きつけていた。


「追っていたのは、たかがドワーフの家族だぞ!?何者かが関わっているのか?」


「フッ、ご安心を、ゲッセル伯爵閣下」


部屋の影から姿を現したのは、全身に不気味な漆黒の鎧を纏い、凄まじい威圧感と赤い魔力オーラを放つ男だった。


「私の率いる【暗黒騎士隊】を向かわせましょう。荒野で蠢く害虫どもなど、跡形もなく踏みつぶしてご覧に入れます」


平和なレオ達の元に、聖王国の凶悪な魔手が着々と迫ろうとしていたのだった。

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