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スキルが覚醒したら追放されたので、理想を追求してみます  作者: @tsutsu-Chan


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絶望の果てに……

「ハァ……ハァ……っ!止まるな!子どもたちを連れて逃げるんだ!」


岩場が広がる東の街道。

泥と血に汚れ、絶望に息を荒らげながら必死に逃げるのは、『ドワーフ族』の一家(夫婦と二人の幼い子どもたち)であった。


「ヒハハハ!ドワーフのドブネズミどもめ、逃げられると思ったか!」


背後から迫る激しい馬の蹄の音。彼らを追い詰める兵士たちの胸甲には、王都の悪徳貴族【ゲッセル伯爵】の家紋が刻まれていた。


「王都で真面目に働いていた俺たちから店も商品も奪い、こんな地の果てまで追ってくるなんてっ……!」


「うるせえんだよ、亜人が!」


ツゥンッ……ドスッ!!


「ぐあぁぁっ!?」


追撃者の放った毒矢が、家族を守るように走っていた父親の太ももを深く射抜いた!

激痛に耐えかね、ガシャリと無残に倒れ込む父親。


「あなたっ!?」


「お父ちゃん……っ!」


「うぁぁぁん!」


「止まるな、追いつかれる!逃げろぉぉっ!」


父親は傷口を押さえ、逃げ遅れながらも家族だけでも逃がそうと血を吐く思いで叫ぶ。

兵士の隊長格が追いつき、残忍な笑みを浮かべながら馬上から大剣を抜いた。


「ケハハ!ゲッセル伯爵閣下に刃向かった罰だ。まずは貴様から首を跳ねてくれる!」


隊長が大剣を高く掲げ、倒れる父親の首元へ向けてギラリと光る刃を振り下ろす!

父親は無念さに歯を食いしばり、目を強くつむった。絶望が完全に支配した、まさにその瞬間!


『この下愚どもがぁっ!!』


重厚で神聖な念話が荒野に轟くと同時に、本来の姿である十メートル級に巨大化した守護聖獣ヴェルフが、岩場の高台から疾風のごとく舞い降りた!

ヴェルフの頑強な前足の一撃が、振り下ろされた大剣を真っ芯から叩き折り、兵士を乗せた馬ごと吹き飛ばす!


「な、なにぃっ!?喋る巨大な魔物……うわぁぁっ!?」


兵士たちが呆然とした刹那、ヴェルフの背から跳躍したレオが、すでに間近まで肉迫していた。


【魔性順応】の能力により限界まで肉体強化された一撃!


「うおおおっ!」


レオの圧倒的な剛腕から繰り出された正拳突きが、隊長の硬質な魔法胸甲を粉砕し、打ち抜く!

ドガンッ!と重圧な衝撃音が響き、追撃者たちは悲鳴を上げる間もなく岩場へ叩きつけられ、一瞬にして無力化された。


戦闘が終わると、ヴェルフは子どもたちを怖がらせないよう、すぐさま一メートルほどの愛らしい『もふもふモード』へと縮小化した。

同時に、猫獣人の少女ミニアが、泣きじゃくる子どもたちと母親を庇うように優しく抱きしめた。


「もう安心ですニャ!レオ様とヴェルフ様がやっつけてくれましたニャ!」


「ひっ、一瞬で追撃者を……。あなた様方はいったい……?」


息をのむ父親に対し、レオは急いで膝をつき、太ももの酷い傷口へ手をかざした。


「俺はレオ・アルヴァレス。驚かせてすまない、まずは傷の手当をさせてくれ」


(≪マスター。対象は矢の致死毒と大量出血により、急速に心肺機能が低下しています。【魔性順応】による変調治療を推奨。魔力活性化の比率を30%に設定し、細胞再生を最優先してください≫)


(「助かる、クロニクル。よし、やるぞ!」)


レオの手のひらから、幻想的な「青い粒子」が溢れ出し、ガルドの痛痛しい傷口を包み込んでいく。

【魔性順応】の力が発動し、体内に入り込んだ矢の毒素を磁石のように吸い上げて中和。同時に、レオの純粋な生命エネルギーを対象へ注ぎ込んで適合変調させる!


エネルギーを分け与えられたことで、父親の持っていた自然治癒力が爆発的に活性化し、みるみるうちに出血が止まり、傷口が細胞レベルで塞がっていく!


「い、痛みが引いていく!?出血まで完全に止まっただと……!?一体どんな神聖魔法を……!?」


「完全な治療じゃないけど、これで大丈夫だ。ここはまだ危険だから、まずは俺たちの拠点へ移動しよう!」


レオたちは怯えるドワーフ一家を優しく支え、地上の偽装拠点【泥レンガの砦】へと連れていくのであった。


---


泥レンガの砦へと戻ったレオたちは、すぐにドワーフの父親を暖炉の前に休ませる。

ミニアは保管していた特製スープを温め、手際よく器に注いで怯える家族に手渡していった。


「こんにちはです、あたしはミニアですニャ!さあ、温かいうちに飲むといいニャ!お腹がすいてちゃ、力が出ないですニャ!」


「あ、ありがとう、お姉ちゃん……!」


「美味しい!お母ちゃん、スープすごく美味しいよ!」


子どもたちが夢中でスープを口にし、少しずつ頬に血の気が戻り、笑顔を取り戻していく。

手当を終えた父親は、スープを一口飲み、感極まったように深く頭を下げた。


「レオ様、家族の命を救っていただき、傷の手当まで……本当にありがとうございます。私はドワーフ族のガルドという者です」


「いや、当然のことをしたまでだよ。こちらの仲間たちの紹介がまだだったね。猫獣人族のミニアと、守護聖獣のヴェルフだ」


「ミニア様、ヴェルフ様、本当にありがとうございました。心より感謝いたします」


ガルドは、スープを飲んで落ち着いた妻と子どもたちを優しく手招きした。


「お前たちもこちらへ。レオ様方にご挨拶をしよう」


妻は子どもたちの背を優しく促しながら一歩前に出て、深く頭を下げた。


「ガルドの妻のエルナと申します。本当に、本当に子どもたちを、夫を助けていただき、ありがとうございましたっ」


母親の隣で、まだ少し緊張しながらも、二人の子どもたちもしっかりと頭を下げる。


「あ、ありがとうございますっ」


「助けてくれて、ありがとう、ございました!」


一生懸命にお礼を言うのは、兄のルディと、妹のリナだった。

レオは彼らの目線に合わせるようにかがみ、目元を和らげて優しく微笑みかけた。


「エルナさん、ルディくん、リナちゃん。もう怖い人たちは来ないから、安心してゆっくり休んでね」


「ガルドさん、大変だったな。どうして聖王国の兵に追われていたのか、聞いてもいいか?」


ガルドは悔しそうに頑丈な拳を強く握りしめ、ぽつりぽつりと語り始めた。


「俺たちは王都で代々、武具を打って生活していました。ですが先日、悪徳貴族のゲッセル伯爵めが『亜人のくせに上等な店を持つの生意気だ』と店も丹精込めた商品も全て強奪していったのです。俺たちが抗議すると、濡れ衣を着せて殺そうと兵を放ってきました。それで命からがら逃げていたのです……」


理不尽極まりない迫害と強奪に、レオの胸の中に静かな憤りが湧き上がる。

行く当てがなく荒野で途方に暮れるしかないというガルドの言葉を聞き、レオはミニアとヴェルフに視線を送った。


「みんな、この家族のこと、どうしたらいいと思う?」


『ふむ、レオよ。現在の地下都市【グラン・ゼノア】は生活環境も整い、大規模農園の生産も開始された。我が地に心優しき人を迎えるに、何の問題もないぞ』


「レオ様!このおじさんたち、とっても温かくて良い匂いがしますニャ!あたし、絶対に一緒に暮らしたいですニャ!」


ヴェルフの後押しとミニアの笑顔に、レオは力強く頷いた。


「ミニア、君の言葉で、ガルドさんたち家族に『一緒に暮らしてみないか』と誘ってあげてくれないか?」


「はいニャッ!任せるですニャ!」


ミニアはパッと目を輝かせ、ガルド一家の前に立ってとびきりの笑顔を向けた。


「ガルドさん!行く場所がないなら、あたしたちと一緒に暮らさないですかニャ?聖王国の悪いやつらが来ても、レオ様もヴェルフ様もいるので、家族だけで逃げるよりずっと安全ですニャ!」


「えっ……?い、いいのですか……!?」


レオも隣に並び、温かく微笑みながら言葉を重ねた。


「ミニアの言う通りです。実は俺たちも追放された身で、仲間と協力して自分たちで笑って暮らせる場所を作っているんです。ガルドさんたちの力も貸してもらえないでしょうか?」


ミニアの天性の愛嬌と【引き寄せ・スカウト】の才能、そしてレオの誠実な言葉に、ガルドと妻の目から大粒の涙がいっきに溢れ出した。


「うっ、うっ……!こちらこそ、よろしくお願いします……!救いの手を差し伸べてくださり、本当に感謝しかありません!少しでもレオ様達の力になれるよう、この命と技の全てを捧げます……!」


こうしてレオ達に、鍛冶職人のガルド一家という最高の仲間たちが加わった。

疲れ果てた一家を休ませた後、レオたちは明日、彼らを驚愕と感動が待つ『地下都市グラン・ゼノア』へと案内することを決意するのだった。

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