蘇る古代の叡智!
地下空間に完成した「魔導木造コテージ」と「天然露天風呂」で最高の夜を明かした翌朝。
天井に無数に群生する『高純度の魔導鉱素』が、朝の訪れとともに爽やかで温かい光を空間全体へ注いでいた。
澄み切った地下の空気が満ちるリビングで、レオたちはミニアが手際よく用意した朝食を囲んでいた。
メニューは、昨日採取した甘み弾ける『黄金蜜リンゴ』と、香ばしく炙った『酸液大トカゲの極上肉』だ。
(「ミニアは料理も上手なんだな」)、と感心するレオであった。
「んん〜〜っ!お風呂で疲れを取ってからの朝ごはんは、涙が出るほど美味しいですニャ……!」
「本当に最高だな。」
美味しい料理を堪能しながら、みんなで幸せを実感する。
「ところでヴェルフ、かつてここにあった古代文明のことについて、少し教えてくれないか?」
レオの問いかけに、ヴェルフは目を細め、重々しく語り始めた。
『かつてこの地は最も毒と瘴気が集まる場所の1つであった。古代人たちはその毒素を無害化してエネルギーへ変える巨大な『シェルター都市』を築いていたのだ。彼らが有していた【魔導工学】は、お主の生まれ故郷である『グランディール聖王国』の技術など足元にも及ばぬ技術であったのだ』
「聖王国すら足元にも及ばない!?」
レオは息をのんだ。
魔法先進国として大陸に君臨する「グランディール聖王国」。莫大な費用と人力を費やす聖王国の技術すら、ここでは子どものおもちゃ同然だというのだ。
「だが、なぜそんなに凄まじい文明が?」
『数千年前、許容限度を超える『大瘴気嵐』この地域を襲い、古代人たちはをこの地下都市に隠蔽防御魔法で地上と遮断したのだ。もちろん空気も遮断されることで地下都市が人が住める環境ではなくなる。しぶしぶ、この地下空間を封印して安全な別次元へと避難していった。そしてな、レオ。凄絶な瘴気を無害なエネルギーへと変換するこのシステムを動かすには、ただ一つ絶対に必要な『資格』があった。【あらゆる毒素と瘴気を身に受け、変調させる者】の存在だ』
(あらゆる毒素をエネルギーに変える……それって俺の【魔性順応】と同じってことか……!)
聖王国で「役たたず」と蔑まれた己の能力。それが古代文明においては、都市システムを統御する『絶対的な救世主の能力』だったのだ!
『かつての古代都市には、地下でありながら作物を急速育成させる『大規模魔導農園』などが備わっておった。だが現在、中枢動力源が抜かれて休眠しておる』
「ヴェルフ!俺たちの持っている【魔導動力コア】を使えば動かせるかもしれない!試してみよう!」
コテージを出て地下空間を北西へと進むこと十数分。
鬱蒼とした樹海を抜けた先に現れたのは、見上げるほど巨大な古代の金属扉と、その奥に広がる壮大なドーム状の空間だった。
「うわぁぁ……っ! すごく広いですニャ……!」
静まり返った広大なドーム内には、階段状に組み上げられた巨大な立体農園プラットフォームが幾層にも重なり、中央には天をつくような『魔導収穫塔』がそびえ立っていた。
レオは『魔導収穫塔』の中枢制御エネルギー炉の前に立ち、【魔導動力コア】をスロットへセットした。
ブバババッ……ブススス……
しかし、コアをセットしたものの、システムはエラー音を立てて停止してしまう。
「ニャっ!?動きませんニャ!?」
(《解説します。初回起動時のみ【魔導動力コア】の容量を超える莫大な圧縮エネルギーが必要となるようです。レオ様の【魔性順応】で瘴気をエネルギーに変換し、充填してください》)
クロニクルの声を聞き、レオは両手を中枢炉へ押し当て、体内のエネルギーを流し込む!
しかし——!
「くっ……動作しない……!?俺のエネルギー量じゃ、起動エネルギーを満たせないのか……!」
モニターのエネルギーゲージが、目標値の手前でピタリと止まってしまう。
その時——ヴエルフの声が響いた。
『ハハハ!案ずるなレオ!お主一人の力で足りぬなら、余の力を合わせれば良いだけの話よ!』
ヴェルフが前へ進み出で、誇り高く胸をはった。
『余の身体には、数千年この地で蓄え続けた凄絶な『瘴気』が充填されておる!レオよ、余の瘴気を喰らい、お主のエネルギーへと変えてみせよ!』
「よし、ヴェルフ、頼む!」
ヴェルフが咆哮をあげると、その身から凄絶な瘴気ブレスが噴出し、レオへと注ぎ込まれた!
普通の人間に触れれば一瞬で腐れ落ちる絶望の瘴気ブレス。しかし、レオの【魔性順応】の能力で己のエネルギーへと変調させていく!
「うおおおおおっ!これでどうだ!!」
ドガァァァァァンっ!!!
二人の絆が解き放った圧倒的なエネルギーの奔流がコアへと叩き込まれた!
太陽のごとき爆発的な輝きが走り、地下回路全体が起動し始める。
ゴーッ……!!!カチカチカチカチッ……!!
農園の『魔導収穫塔』が輝き、土の中から古代の農業支援魔導体『ガーディアン・スライム』たちが次々と湧き出して自動耕作を開始!
さらに天井の『魔導鉱素』は地上の時間軸と同期し、群青色の「星空」を映し出す完璧な環境へと生まれ変わった!
「やった……!起動したぞ、ヴェルフ!」
『ふははは!見事だレオ!余と二人なら、不可能なことなど何一つないわ!』
圧倒的なカタルシスに包まれる二人。その時——!!
農園ドームの最奥【開発者専用区画】から高圧蒸気の噴出音が響き渡った。
【緊急警告:規格外の超・限界突破エネルギーによる起動を確認】
【特務制御官適合率100%の反応を検出】
【開発責任者・コールドスリープ解除シークエンスを開始します】
重厚な扉が開き、白煙の奥、蒼く光るカプセルから眠りから目を覚ます一人の美少女の姿が現れたのだった。




