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14 助けたい 

きつい場面が続きますが、絶対ハッピーエンドになりますので、あきれずにお付き合いください。

読んでいただけたらうれしいです。

よろしくお願いします。

 アレクは階段を駆け上がりながらアキラがついてきていないことに気が付いて立ち止まる。

 

 どうしよう? 戻る?

 

 アキラの言葉を思い出す。『ヴェス達に知らせないと!』


 上を見るとまだまだ階段が続いている。


 ヴェスを連れてこよう!!


 アレクは再び階段を上り始めた。




   ◇ ◇ ◇


  


 5人で手分けして探すがアキラとアレクは見つからない。


 奥へ向かって歩いていたという話を数人から聞いたので、一番奥の非常階段のところまで行ってみたが何もない。


 礼が「どこかに連れ去られたんじゃ……」と言うのでヴェスが受信機を取り出す。


「シリウスの受信機か?」とアスラン。

「念のため、受信機は2つ用意してあったんだ。俺も持ってた」


 受信機の画面をみんなで覗き込む。


「これは……?」


 受信機の中心にアキラの発信がある。


「アキラはここにいる!」


 ヴェスが上と下を見る。


「上はホールで空間が広がってますし、屋根も薄い素材なのでその上に隠し部屋は無理でしょう」


 マリウスが考えながら話した。


「じゃあ、下だ! これ以上はどうやって降りるんだ?」

「この地下2階が一番下です」


 マリウスが青ざめた表情で答えた。

 



   ◇ ◇ ◇


  


「……先生、ここでなにしてるんですか?」


「いやいや、それはこっちのセリフだよ。ここは先生の研究所なんだからね。

 さあ、君にも見せてあげよう。私の<アキラ>を」


 腕をつかまれそうになってアキラは振り払って叫んだ。


「触らないで!」

「もう君には興味はないよ。ああ、でも、また生体サンプルをもらっておいてもいいかもな……。

 ほら、触らないから、自分で出ておいで」


 先生は出入り口から出て行く。

 アキラも用心しながら出入り口を抜け出る。

 

「こっちだよ」


 先生が少し離れたところから声をかけてきて、また歩き出す。

 周囲を警戒しながら、何か武器になりそうなものがないか探しながら、アキラはその後をついていく。

 机の上に鋏があった。それをそっと手に取り、ワンピースの隠しポケットに忍ばせる。


 先生が立ち止まりアキラを見た。

 ここまで来いという感じだ。


 アキラは進んで行き、少し距離を取って立ち止まる。


 先生が何かを見上げている。

 この男から視線を切るのは不安だが、仕方がない、視線をそちらに向ける。


 出入り口から見えたガラスの円筒の正面側に来ていた。


 ガラスの円筒の中の液体に子どもがひとり浮いている。


「!!」


 アキラは瞬時に悟った。

 この子は自分だと。


「私の……クローン?」


 アキラの言葉を受けて先生が笑って言った。


「君のじゃないよ。これは私のものだ」


 その時、子どもが目を開けた。


 アキラと同じきれいな緑色の瞳。


 アキラと目が合うと、一瞬目を見開き、うれしそうに口をパクパクさせる。


「美しいだろう。私の<アキラ>は……」


 アキラは吐き気がした。

 自分の幼い時の嫌な感覚が蘇る。

 

 先生の私を見る目や語り掛ける口調が不快だった。

 我慢すればいいのは先生が診察に来た時だけだったので、なんとかやり過ごしていた。

 

 先生が初めて力ずくで押さえつけてきた時、ヴェスが助けてくれて、今の私がいる。



 この子はずっと、ひとりで先生に見られ続けて……。


「<アキラ>言ってごらん、先生が好き、と」


 先生の言葉にアキラは目を見開く。


 こいつはこんなことをまだやっているのか!!


 子どもはいやいやと首を振る。

 そして、アキラの方を見てまた口を動かす。


 アキラはその口の動きの意味がわかり驚く。


 子どもは『ママ』と言っているのだ。


 この子どもには自我と感情と知性もある。


 この男がいやらしい目で眺めながらも教育を施してきたのだろう。

 

 この状況なら身体に触られることはなかっただろうが、ずっといやらしい視線にさらされ続けていたんだと思ったら、アキラは辛くて泣きそうになった。


 この子を助けたい!!




   ◇ ◇ ◇

  



 やっと一番上まで着いたのに出入り口が無くなっている。


 アレクはあわてて、出入り口だったところの壁を押した。動かない。


 どうしよう。


 でも、もう戻るのはこわい。


 アレクは壁を叩いた、蹴とばした。

 だんだん悲しくなってきて、涙が出て、大声で泣きながら壁を叩き続けた。


「開けて! 開けて! 誰か助けて!!」




   ◇ ◇ ◇ 




「この下なんだ!」


 ヴェスが焦ってマリウスに掴みかかる


「何か方法があるはずだ!!」


「ヴェス、落ち着け!」


 アスランがヴェスを羽交い絞めにする。


「離せ!」


 クルトが「みんな静かにしてくれ! 何か聞こえないか?」と言った。


 みんな黙る。空調の唸るような機械音が聞こえる。

 その合間に高く低く、子どもの声?

 クルトと礼が非常階段脇の壁に耳を当てる。


「ここだ!」


 クルトが壁をどんどん叩き、下のパネルに感触が違うところを見つける。

 そこをどんどんと叩くと、向こうからもかすかにどんどんと返事のような振動が……。


「アレクだな。クルトいけるか?」とアスランが言うと、クルトはうなずいて少し助走を取るかのように下がると、思いっきり体勢を低くし体当たりする。


 パネルの端がめり込むようにめくれる。


「た、助けて!!」

 

 アレクの声が聞き取れるようになった。


「アレク、壁を破るから離れてろ!」とアスランが叫ぶと「はい!」と返事が聞こえた。


「クルト、一緒にやろう!」


 アスランとクルトが息を合わせ一緒にパネルを蹴る。パネルが向こうに倒れこんだ。


 少しの間の後、倒れたパネルの上をアレクが泣きながらこちらにはい出てくる。


 アスランがアレクを引っ張り出して、礼に抱き渡す。


「ア、キラ、が、ヴェ、ヴェ、ヴェスに、しら、しらせないとって!」


 アレクがしゃくりあげながら言う。


「礼、アレクを頼む! 行くぞ! ヴェス!」


 アスランとヴェスが飛び込んでいくと、クルトとマリウスも続き、階段を駆け下りて行った。




   ◇ ◇ ◇

   



「他の子は?」とアキラが問いかけた。


「あとふたりいたんじゃない?」


 空の円筒容器の数、それとマリウスの動画の話だと、あとふたりいたはずだ。


「あの子たちはね。キドニーに出荷するから出してみろって言われて、外に出してみたら死んだよ。

 1人目が死んだ時は、たまたまこの子だけかもしれないと思った。

 2人目も死んだ時、これはセレスシャルとして何かあるんだと思った。

 なので3人目は出さずにキドニーに何を言われてもこのまま育てることにしたんだよ」


 出荷?

 怒りが湧いてくる。


「どうだい、人間でいえばこの子は4歳ぐらいだ。もう少しするとあの時の君と同じ年齢になる。

 そうしたら、成長を抑制してずっと美しいままでいてもらうんだ。どうだい素敵だろ」


「やめて! そんなことさせない!!」


「でも、この子は、この<アキラ>はこの私、先生がいないと生きていけないんだよ。

 私のものだ。私だけの<アキラ>。キドニーにも教団にも渡しはしない……」


 その時、階段の方から駆け下りてくる音が聞こえた。

 アレクにしては音が大きい。複数人いるようだ。


「アキラ!」と呼ぶ声がする。


「ヴェス!」と叫び返す。


「うおっ、なんだこりゃ!」とアスランの声がして、「親父どいて!」とヴェスの声。


「円筒の正面にいる!」と叫ぶとこちらに向かってくる足音と、「マリウス、証拠で動画撮れ!」とアスランが指示をする声が聞こえた。


 ヴェスがアキラのそばまでたどり着いた。

「アキラ! 大丈夫か!」と駆け寄り、アキラが対峙している男を見る。


「!!」


「やあ、ヴェス。おやアスランまで……。今日は研究所に無断で入ってくる奴が多いな……。

 騒がしくていやだね。私とふたりっきりがよかったのにね、<アキラ>?」


 ヴェスとアスランが男の視線をたどり、円筒内の子どもの顔を見て一瞬呆然とした後、怒りの表情に変わる。


「アキラの……」と言いかけ、言葉に詰まったアスランが言い直すが声が掠れている。


「……アキラのクローンか!!」


「美しいだろう……。私の<アキラ>、私のセレスシャル……」


 男の声の調子にアキラはぞっとして、自分の身体を抱えるようにして震えた。

読んで下さりありがとうございます。

次で最終話です!


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