15 祝福 《完》
初めて5万字行きました。
ちょっと疲れましたが、頭の中で作られた物語を何とか形にすることができてほっとしています。
文章がまだ未熟だと思いますが、あきれずに最後まで読んでいただいて何かしらの反応を頂ければうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「他のふたりは?」
アスランが掠れる声で訊ねる。
「そこのアキラにも聞かれたが、死んだよ。
セレスシャルのクローンは人工羊水から出すと死んでしまうようだ。
原因はわからない。私に研究を続けさせてくれれば、それをクリアにして見せよう」
「何バカなことを!」
ヴェスが力強く言い返しながら、アキラを支えると一緒に対峙する姿勢を見せる。
その時、階段の方からたくさんの足音が響いてきた。
「連合が来た。もう研究はおしまいだな。おとなしく降参するんだ」
アスランが男の方へじりじり近づく。
「やめてくれないか……。それならば、自分で大切なものを壊すとしよう。私だけのもの……」
男はコントロールボードを操作すると後方へ走っていく。
円筒の下の機械がゆっくりと降下していき、人工羊水が下にできた隙間から流れ出す。
「やめてー!!」とアキラが叫び、円筒に縋り付き少しでも羊水が流れるのを食い止めようとする。
「アキラ!」叫んでアキラの方へ行こうとするヴェスにアスランが怒鳴った。
「ヴェス、あいつが逃げる! 追うぞ!」
ヴェスは一瞬迷い、アスランの後を追った。
「あ、ああ……」
アキラは生温かい羊水に濡れながら声にならない悲鳴を上げるしかできない。
下降していく円形の機械の上に水圧で押し付けられように座り込む幼いクローンアキラの姿。
まるで大きな花のつぼみが開くかのように羊水がごぽっと音を立て最後の大きな水しぶきを立てて広がり、流れ落ちた。
クローンアキラが顔を上げアキラを見てうれしそうに微笑んで手を差し伸べようとするが、苦し気に顔を歪め身体をかがめると羊水を吐き出した。それでも、アキラの方へ手を伸ばしてくる。
アキラは機械の上に乗り座り込むとクローンアキラを抱き寄せた。
苦し気な顔の中にうれしそうな表情を浮かべてアキラの胸にすり寄ってくる。
アキラは本能的に答えがわかった。
セレスシャルは出産直後に自分の初乳を我が子に与えるのだ。
それがその子がこの世で生きていくための命の最初の糧となる。
今の私にはそれはない。
考えろ、考えろ、考えろ!!
ポケットの中の鋏に気が付いた。
取り出して自分の左腕に突き立てる。
何度も何度も。
血が流れ始めるとアキラはその血を自分の口で吸い、クローンアキラに口づけた。
クローンアキラが血を飲んでいるのがわかる。
また、血を吸い、口づける。
何度繰り返しただろう。
気が付くと、クローンアキラの顔色が良くなり、定期的に安定した呼吸ができるようになっていることに気が付いた。
クローンアキラの額から頬にかけて優しくなでてやる。
「ママ……」
クローンアキラが幸せそうな表情ですり寄ってくる。
「アキラ!」
ヴェスが戻ってきた。
アキラの左腕と口が血だらけなのを見て泣きそうな表情で自分の上着を脱ぐとアキラに着せかけ、クローンアキラごと抱きしめる。
「ヴェス……」
「なんだ? 痛むか?」
「ごめん。結婚前なのに……。子持ちに、なってしまった……」
◇ ◇ ◇
先生と呼ばれていた男とキドニーは違法な生命倫理違反と実験を行っていたことと、禁止されているクローンを作成し、しかも販売しようとした罪で連合に逮捕され、収監された。
教団幹部も逮捕、収監され、S教団自体も解体された。解散よりも重く、教団の教義を否定し厳しく取りしまる部署も新しく連合に創設された。
マリウスはキドニーの残した負の財産を清算するために火星に残ることなった。これが終わったら地球に戻り、自分の人生をどうするか考えることにするという。
アスランがその時は相談にのると約束している。
クルトが火星のユーシップカンパニー支社を立ち上げることになり、このまま火星に残りマリウスに協力してくれることになった。
ビクトリアはキドニーと離婚し、歌手としての活動を本格的に再開させることにした。
そのため、アレクを地球のアスランの家に預けたいと言い出した。
アスランはユーシップ社の仕事としてアレクの養育を引き受けることにし、書面で契約書を作成、マリウスにも確認させた。
「引き受けたからにはアレクとマリウスのことは任せろ。しかし、もうお前とはこれ以上、仕事でも関わらない」
最後にビクトリアにそう告げると、ビクトリアは納得して去って行ったそうだ。
クローンアキラはアキラが『ショウ』と名付けて、シリウスの養子となった。
シリウスの養子なのだが、ショウはアキラと一緒にアスランの家で暮らすことになった。
アキラの腕の傷がだいぶ良くなってからアキラ、ヴェス、アスラン、礼、アレク、ショウはスターシップ2でゆっくりと地球に戻ってきた。
にぎやかでとても楽しい旅だった。
アスランの家に着くとトーマスとアニスが迎えてくれる。
アスランが「もう一棟建て増しするか!」と笑った。
アレクとショウが母屋の寝室で寝着いた後、ヴェスとアキラは自分たちの部屋のある建物のリビングで久しぶりにふたりきりになった。
ヴェスがアキラを大切そうに膝にのせて座り、顔を見つめている。
「腕の具合はどうだ?」
ヴェスがアキラの左腕を気に掛ける。
「うんだいぶいいよ。動かせるようになったし。
まあ、以前のようにすぐキレイに治るというわけにはいかないけど。
あの鋏切れ味わるかったから……。もっと切れる刃物があればここまで傷ひどくならなかったのに……」
「そういう問題じゃないよ。どんな理由があってももう自分を傷つけるのはやめて欲しい。
あの時、俺がどんな気持ちだったか……。本当にもうやめてくれ……」
「ごめん。でも、どうしても、ショウを助けたかったんだよね。
私にはヴェスがいた。ショウには私しかいない、からどうしても助けたかった。
一か八かの方法だったけど、やらないという選択肢はなかった。
ショウを助けられたことで、幼い時の私も助けられた気がするよ。自分本位かもしれないけど」
ヴェスが愛おしそうにアキラの髪をなでる。
「なんで『ショウ』という名にしたんだ?」
「ヴェスはまだ知らないか! 私の名前『晶』と書いてアキラなの。
お母さんがつけてくれたんだって。
同じ字で『ショウ』とも読めるんだ。だからショウも私も同じ『晶』なんだよって意味」
「そっか……。わかった。
そうそう、いつ結婚式あげるかって親父が騒いでたよ」
「社長と礼の?」
「いや、俺たちの」
「そうだなあ。いつでもいいけど」
アキラは素早くヴェスにキスをすると笑って言った。
「今がとっても幸せだから、いつでもいいよ!」
◇ ◇ ◇
次の日、アキラとヴェスはアレクとショウを連れて植物園に出かけた。
もうバイクでは乗り切れないので車でだ。
植物園を回り、おやつを食べ、花を買い、フローラの墓参りに行く。
フローラの墓には新しい花がすでに供えられていて「お父さん、地球に来てるんだね!」とアキラがショウに話しかける。
ショウとアレクが花を取り合うようにして供えようとした。
その時、強い風が吹いた。
植物園の方から花びらがたくさん飛んできてひらひらと舞った。
アキラはフローラから言葉をかけられたような気がした。
『おめでとう、幸せになるのよ』
《完》
最後に4人でお墓参りに行くところをラストシーンにしようと思っていて、そこまでたどり着けたので、今は満足してます。
同じタイトルの話が2作という変則的な感じになってしまい、前作のトラウマ『先生』までもが出てきてしまいました。どうしても決着付けないとだめだったんだね。
でも、無事に終わってすっきりしました。
最後までお付き合いいただきありがとうございます!




