11 火星のお仕事(中)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも小説を書いてみたくなり挑戦しています。
アスランがまだ楽しそうです。
最後の幸せそうなシーンだけは頭の中にありますが、そこまでもう少しきつい話が続きます。
あきれずに最後まで読んでいただけたらうれしいです。
よろしくお願いします。
アキラをトレインに乗せることは阻止できた。
そのため、チューブで降下中は仕掛けてこないと判断したアスランは車にアキラと礼、そしてマリウスを乗せ自ら運転していた。
ヴェスはバイクにひとり乗り。
クルトたちは大きめの警護車に6人乗っている。
バイクと車は通信をつないで通話中にしている。
「アキラ、シリウスも火星に来ているからな!」
アスランがふさぎ込むアキラに向かって言った。
「お父さんも! 本当に連合の仕事なんだ!」
「そう言ってるだろ。で、マリウス、少し聞きたいことがある」
「はい、なんでしょう?」
「S教団とキドニーのつながりはわかるか?」
「……聞いたことないです」
「そうか、つながりがあるんだが、どういうつながりなのかがわからなくてな……」
「と言うと?」
「礼、タブレット見せてやって! そこのSファイル開いて。
キドニーと教団の金の流れだ。キドニーからも教団からも双方にやり取りしてる。なんかおかしいだろ?
援助しているならキドニーからの送金しかないはず。または脅されてるゆすられてるという線もありか。
教団からだけなら、キドニーが情報を流したり、依頼を受けたりということも考えられるが……。
双方で金を送り合ってる。これなんだと思う?」
「……考えられるのは、受注と違約金でしょうか?」
「おっ、いいね。つまりキドニーは教団から仕事を受け、しかしそれがうまくいかず違約金を返したということか」
「はい」
「……つき合わせて悪いね、マリウス。
キドニーを断罪することになると思うが、君にその覚悟はできてるか?
後、君がアキラに言っていたセレスシャルの話だが、良ければ相談に乗るからね。今なら連合も来てるから」
「ありがとうございます。
はい、今日父と会って、……覚悟できました。
セレスシャルの話ですが……。私は見てしまったんです。
4年前、大学に行く直前のことです。
タブレットの調子が悪く、父の仕事のタブレットを借りたんです。
どこかの研究所を訪れている動画があって、それが……人体実験のように見えました。しかも、みんな小さな子どもで髪が、アキラと同じ色だった……。研究員と思われる男がセレスシャルと言っていて……。触れてはいけない気がして父には何も言えず……。
大学で調べたら異星人のセレスシャルに行きつきました。
異星人だから、火星では合法なのかもしれないと思いこもうとしましたが、やはり無理でした……」
「みんな? 何人くらい?」
「動画の中で3人確認できました。なにか液体の中に漬けられてました」
「死体?」
「いえ、よくわかりません……。すまないアキラ、不快なことを聞かせてしまって」
「いえ……、これでマリウスのことがわかりました。
初めて会った時から、ずっと何を隠しているんだろう、何を抱えているんだろうと思っていました。疑ってしまったこともあります……。こちらこそ、ごめんなさい」
「許されるなら、父がしてしまったことを償いたいと思っている。
もし、まだ苦しんでいる人たちがいるなら、今更だが救いたい……」
◇ ◇ ◇
「けっこういいホテルだな」
駐車場に車を停めてから、あたりを見回してアスランが言った。
「クルト、君ならここをどう攻める?」
「そうですね……。こちらは街側なので、いくら離れていると言っても夜に明かりを使えば目立つでしょう。ホテルの裏側、山の方からですね。ホテルの建物が明かりや光を遮ってくれる」
「同意見! 車とバイクはここで大丈夫か? ヴェスはどう思う?」
「俺? もし逃げるならホテル寄りに隠しておいた方がいいんじゃないか?」
「そうだな。礼。ヴェスと車とバイク、警護車の配置を考えてくれ。いざとなったらすぐ乗りこめるように」
「了解。ヴェス、アキラ一緒に来て。社長はフロントに?」
「ああ、挨拶して、出てってもらおう。マリウスおいで!」
アスランとクルトたちがホテル内に入っていくとフロントにいた男と女が緊張して「いらっしゃいませ。ようこそ!」と言った。
「ここで働いてるのは君たちだけ?」
「えっ、あと調理師が2名、雑用が1名いますが……」
「悪いがここはまもなく襲撃を受けるだろう。巻き込まれたくなかったら避難するように」
「はっ?」
「こちらはマリウス・クルーズだ。知っているだろう?
キドニー・クルーズの長男だ。彼を襲撃するという情報があってね。敢えて街から離れたここで迎え撃つことになり我々が雇われた」
「へっ?」
フロントの男は半信半疑だ。
女が言った。
「でも、マリウス様は本物よ! 逃げた方がいいんじゃない?」
「キドニーからは敵に悟られないように従業員はおとりだ、内密にと言われたが、それでいいならそのまま仕事を続けてくれ。
マリウスが君たちが自分のために死ぬのは……と言うから仕方なく伝えたんだが……。
信じないならそれでいい。キドニーの言う通り、おとりで戦闘に巻き込まれてやってくれ。
逃げるなら他言は無用。この作戦がうまくいかなかったときの責任が追及されるからそのつもりで」
女が身をひるがえして奥の部屋に入っていき、自分のカバンやコートを持って出てくると、男に言った。
「私は逃げるわ。さよなら」
そして走り去る。
「おい! なら俺も!」
アスランが笑顔で「逃げる前に調理師と雑用係にも伝えてくれる? クルト、一緒に行ってやって!」
フロントの男とクルトが立ち去るとマリウスが言った。
「めちゃくちゃですね……」
「めちゃくちゃでもいかに本物をうまく使ってその場を信用させるかってことさ。
さて、裏の様子を見に行くか。マリウスも来るか?」
「はい、行きます!」
◇ ◇ ◇
ホテルの使用人も全員避難し、山側の入り口や下層階の窓はベッドや棚を利用して、全部封鎖した。
クルトたちが調理場から空き瓶ナイフやフォークを調達し、持参した特殊火薬などを使って投げる武器を嬉々として作り始める。
バイクと車をホテル側に寄せたため駐車場は広く空いている。
そこにアスランはキャンプファイヤー状に暖炉用の薪を組み上げさせた。
「いーねー。襲撃があったら、これ点火ね。暖炉用の焚きつけオイルも置いとくから。
アキラとヴェスに頼むわ。それまで、マリウスと礼と一緒に車で待機してて。
それから火をつけた後はふたりはすぐバイクで逃げること。ヴェス、アキラのこと守れよ」
車に乗り込み待機していると礼が耳のイヤホンを触って笑った。
「何?」とアキラが聞くと礼が説明する。
「私とクルトチームは音声共有してるんだけど、社長が本当に楽しそうに指示してるから、つい笑っちゃった」
「アスランってすごい人ですね。一緒にいて飽きません」とマリウスが感心したように言った。
「いや、あんなのが父親って本当に大変だよ!」
ヴェスが恐ろしいという表情で答える。
「ヴェスはビクトリアとアスランの息子なんですよね……。なんかすごいな」
「いや、ビクトリアとは5歳ぐらいまでしか暮らしてないから!
親父も仕事でいないこと多かったし、それがきっと良かったんだろうな」
ヴェスが自分で言ってうんうんと頷いている。
次回(後)までほぼアスランの話です。
礼はアスランとシリウスとどっちが好きなのか書いててわからなかったのですが、自分でもあー、そうだったんだ!とびっくりしました。
お楽しみに。
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!




