授業始め
安曇野の学校に登校し出してからまだ三日目。穂高の机の上についに教科書が届いた。国語、算数、理科、社会、図工、体育、音楽、英語など課程で扱う教科分が全て揃っている。そして、計算ドリルや漢字ドリルもあり、長野先生直筆のメッセージが付箋に達筆な字で、恰も板書の如く記されている。
今日配る予定の漢字・計算ドリルもここにあります。みんなに配布するときには受け取らないように。昨日放送室で話したことは人前で話さないように。 長野
その後は何事もなく一時間目が始まる。算数である。しかし、教室の後方が少しやかましい。どうやっても耳に入ってしまう。昨日の水泳大会に参加して、散々なことになったことだろうか。あるいは自らの家族のことだろうか、それともなんだろうか。ふと後方を確認してみた。昨日の水泳の大会のあの女子か。
「今日は小数について。もしかすると忘れているかもしれないから、一応復習としてこの問題をやってみよう。(プリントを配布)」
「いやー、あの転校生なんで体育できないのだろう。」
「知らない。けど、アイツサッカーとかドッチボールとかやらせたらえらいことなりそう。」
「たしかにそう。こっそり省いたろう。」
「きっちりまじめに授業を受けてください!」
先生から指導が入る。けれども、彼らは1問目の「0.105とは、0.1を◎こ、0.01を◎こ、0.001を◎こ集めた数です。」という問題すらも分からず、鉛筆をカリカリ動かす手が止まる。しかし、口は止まらない。なぜなのか理解できなかったが、その頃には五分は経っており、すでに僕はその課題をもう終わらせていた。だが、まだ終わらない者が山ほどある。




