初めての小学校
今日は、始業式の日だ。春花を班長として、十人ほどの児童たちが新しい気持ちで学校に通う。途中の交差点では、地域の皆さんから「おはようございます」や「いってらっしゃい」などと言われる。たまにバスの運転士さんからも声がかかる。その途中の道程では、春花や楓花は地元の同級生らと話すことがある。18きっぷの旅の道中で知り合った人たちとは、父親である広高の携帯電話からメールしているが、同じ安曇の子たちとは必ずくっ喋れる。そうやって話しながら登校し、街を抜けて田んぼだらけのところに入ったら、じきに学校にはついているのだ。
この街にやってきたのは、つい一昨日なのに、穂高は学校に来た。四年一組の教室に入ると、三十人分の机と椅子がある。後ろの棚にランドセルを収納すると、すぐに家から持ってきた経済学の本を読んで待っていた。そして、一組担任の先生である長野誠先生が入ってきた。
「松本君、ようこそ豊科小学校四年一組へ。私は担任の長野です。これから半年間一緒に勉強や来月の運動会、クラブ活動などを頑張りましょう!では、松本君、自己紹介をクラスのみんなによろしくお願いします。」
「はじめまして。松本穂高です。茨城県の出身です。好きなことは、クイズと読書で、教科でいえば算数と理科、次に国語や社会です。嫌いな科目は体育で、理由はできなかったことで親に殴られたり蹴られたり、さらには裸でお寺の境内に放置されたからです。(シャツを脱いで打痕を見せる。)このことで茨城でお遣いを頼まれた隙にこっそり信州に抜け出しました。なんで信州かと言うと、昔本で見た奥穂高岳が雄大な風景を齎してくれているからです。...」
クラスから拍手が上がった。そして、同じクラスの大川桜から一つ質問があった。
「なんで算数や理科が好きなの?」
穂高は一言、「たとえば天文学だと、未だに人間はわからぬ宇宙の神秘的なことが分かる。算数だと、解き方が複数ある場合、教科書に載らない方が見つかると『やったー』と思える。上手いこと説明できなくてごめんなさい。」
次に質問が飛んできたのは、朝日大和、と言う、如何にも野球少年という感じの男子から。
「親に叩かられてこそ強くなるというのに、なぜそう思わないのか。」
「なんでやねん。スポーツテスト(8種目各10点、合計80点の文科省が定めたテスト。)でオール1とったり、縄跳びカードが一箇所も塗らないほど体育苦手やねん。」広高に教えてもらった大阪弁を穂高はすかさず使った。
長野先生に、あとで始業式の時に全校児童の前でやるよう言われたのであった。そして、長野先生は、クラスメートに茨城県の場所が分かるか問うた。しかし、十人ほど聞いたところで、全員が茨城県の位置を栃木県や千葉県、宮城県などと間違えており、ついに穂高に答えてもらうことになった。
「千葉県の北で、栃木県の東にあって、納豆や水戸黄門、偕楽園、百人一首にも詠まれたうえ、国土地理院がある筑波山があります。」




