第九話「嫌な気持ち」
青いワンピースを身にまとった愛が近づいて来た。
「七塚さん」
「山口君。こんにちは。野々村さんも」
軽くお辞儀をして挨拶してきた。反射的に二人もお辞儀をする。
「今日は、お二人でお出かけですか?」
「明音の買いものに付き合ってる感じ。七塚さんは?」
「私は、この辺の事もう少し知ろうと思いまして散歩みたいなものです」
「あ、そうだ。これ、七塚さんにって思って買って来たんだけど」
剣は、ショルダーバックからさっき買った、アクセサリーが入ってる紙袋を愛に手渡した。首を傾げてテープを剥がして取り出した。
「わー可愛いです」
中身は、淡いピンク色のチェーンにハートの形した物がいくつも付いていた物だった。さっそく左手首に着けると日差しでキラキラ光っている。
「七塚さん、名前が愛だからなんとなくハートかなって思ったんだけど」
「いいんですか、貰っても高くありませんでしたか?」
「いいよ。昨日のカレーのお礼だから」
「まぁ、お礼だななんて」
ぽっぺに手を当てて体を左右に揺らす。
「野々村さんは、何か山口君から貰ったのですか?」
「え、えぇ」
急に自分に振ってきたので驚いたが、すぐさま首元から貰ったネックレスを出した。
「この、四葉のクローバーのネックレスを」
「お前いつの間に付けてたんだよ」
「可愛いじゃないですか。イイですね」
「あ、ありがと」
なんだか素直に照れてしまった。
「七塚さんもネックレスが良かったかな……」
「いえいえ、そういう事ではありませんよ。このブレスレット大切にしますね」
口元に手を添えて軽く笑う。
「そうだ、七塚さん。よかったら俺たちとこの辺回る?」
「「えっ」」
剣の発言に愛と明音が同時に驚いく。あれっといった様子で二人の顔を交互に見る。
「剣……今日は」
明音の反応を読み取った愛は。
「一人でいいですよ。今日は、野々村さんと居てあげて下さい」
「でも、この辺知ってる奴と回った方が」
明音は、前に出て剣の方に振り返る。
「お願いだから今日は、二人っきりがイイの!」
強く言い放ち腕を掴んで今度は、愛の方に向き直り。
「七塚さん!悪いけど」
少し睨みつけるような表情で言い放った。愛は、しばらく何も言わずに明音の顔を見る。二人のやり取りを困った様子の剣。三人の様子を商店街に来ていた人たちが遠目で見ている。
「だからいいですよ。この後お二人でごゆっくり」
そう言って歩き出し二人を通り過ぎるとこをでピタっと立ち止まり。
「山口君。そのうち一緒にデートしましょ」
言い残し行ってしまった。
「……なんかさめちゃった」
掴んでいた手を離し剣から離れる。
「どうしたんだよ」
「今日は、ここでバイバイ」
「おい、明音!……ったくなんだったんだよ」
剣から離れて走って消えて行った。
数分走り続けたあと速度を落として歩き始める。息を切らしてゆっくり呼吸する。体が熱い。ふと貰ったネックレス手に握る。
「……だって。なんだか、剣が……離れちゃいそうで、取られちゃいそうだったから……七塚さんには負けたくない」




