第四十四話「電話相手」
夜8時を過ぎたころ夕食を済ませてテレビを見ていいると剣の携帯が鳴った。手に取って画面を見ると非通知。出ようか無視しようか迷った結果剣は、出ることにした。通話ボタンを押して。
「……もしもし」
少し間があったあと聞きなれた声が聞こえた。
「あ、もしもし剣?」
「母さん!?」
電話の相手は、剣の母だった。
「携帯替えたから非通知だったでしょ?出ないかと思ったよ」
「急にどうしたの電話なんかしてきて」
「いや、特に用みたいなのはないんだけど」
「なんだそれ」
「冷たいわね。久々に息子の声が聞きたくなっただけよ」
「そうですか」
「フフッ。麗子と仲良くしてる?」
窓を開けて夜空を見上げる剣。
「してるよ。俺のアパートの上に住んでるよ」
「一緒じゃないんだ」
「来た当時は、一緒がいいみたいなオーラ出してたけど」
キッチンで食器を片付けしている麗子をチラッと見た。
「一緒で良かったじゃない」
「狭いわ!」
「あははははは。アンタも年頃の男の子だもんね。麗子みたいな年上の女性と同棲なんかしたら落ち着かないか」
電話の向こうで爆笑している母。
「うるせぇ」
「そうだアンタさ、学校卒業したらこっち来なさいよ」
「えぇ?」
「将来的アンタには、私の仕事継いで欲しいからよ。色々教えたいことあるから」
母の言葉に剣は、すぐに声が出なかった。自分が親の仕事を引き継ぐなんて考えたことなかったからだ。
「どう?こっちに来ない?」
「……分からない。卒業した後自分でやりたいことあるかもしれないし。母さんの仕事とか俺がやっていける自信は、今はない」
「ふーん。なかなか言うわね。まぁいいわ。それならアンタがこれからやりたいこと見つけたりすればいいわ。また、時が経ったら将来の聞かせてちょうだい」
「分かった。ありがとう母さん」
「うん。そっちお金のことなら心配しないで、麗子に管理させてるから。あ、聞きたいことあるんだけど」
テーブルに置いてある水の入ったカップを手に取り飲む。
「ん?何」
「彼女出来たの?」
盛大に噴いた。
「い、い、いねーよ」
「えぇ~いないの?じゃあ、気になってる子は?」
「……最近、ちょっと気になってるというか」
「あ!いるんだ!早く告白しなさいよ」
「うるさいうるさい!」
「はいはい。近くに麗子いる?代わってほしいんだけど」
剣は、少しイライラしながらキッチンにいる麗子に、携帯を渡して椅子にドスっと座った。
……いつからだっけアイツの事気になってる?いや、気が付いたら目で追っている……文化祭からだったかな。




