第三十四話「ありがとう」
誰かに声をかけられ体を揺さぶられていることに気が付いて目を覚ました。ぼやけていた視界が徐々に鮮明になってくる。
「剣様。おはようございます」
揺さぶっていたのは、麗子だった。
「おはよう麗子さん」
「起きてすぐですが熱を測ってください」
体温計を麗子から渡されて脇に挟んで計測。
「麗子さん……今何時?」
「6時を少し過ぎたところです。朝ご飯は、食べれますか?」
「う~ん。お粥なら大丈夫そう……」
「分かりました。では、今からお作りしますね」
そう言って麗子は、キッチンの方へ。ベットに横になったまま天井を見つめて、計測が終わるのを待つ。
数分後。体温計が鳴り響く。取り出して数値を見る。
「……38.5℃かぁ、一日じゃ治らなかったか」
天井を見ながら呟く。
「どうでしたか?」
お粥を運んできた麗子に体温計を見せた。麗子は、一回息を吐いて。
「今日は、学校休んでくださいね」
両膝をついて横になっていている剣を、上体だけ起こして壁につける。
スプーンですくい取り息をかけて冷まし口元に近づけてきて。
「はい、お口をお開け下さい」
照れいるのか熱のせいか顔が赤くなる剣。
「どうかしましたか?」
首を傾げて訪ねてくる。
「い、いやなんでもない」
口の中に入れて食べた。
食事を済ませて薬を飲んで氷枕に頭を乗せて横になる。麗子が食器を洗っていると。ピンポーンっとインターホンが鳴った。洗うのを中断して手を拭いて、誰が来たのかドアを開ける。
「おはようございます」
「おはようございます。七塚様」
制服に着替えた愛だった。
「あの、剣君は……」
ドアを閉めて外に出る麗子。
「昨日より熱は、下がりましたが、まだ高いので今日は、お休みします」
「そうですか……剣君の担任には、私から伝えときますね」
「ありがとございます」
「それじゃ、私行きますね。剣君にお大事にと伝えて下さい」
「分かりました。行ってらっしゃいませ」
愛が学校に向かう姿を二階から見送った後、部屋に戻った。麗子が戻って剣は、聞いた。
「麗子さん誰だったの?」
「七塚様でした。今日は、お休みしますと伝えました。それとお大事にって言ってました」
「そう……麗子さん」
「はい。何でしょう」
剣の隣に移動する。
「ありがとうね。看病してくれて」
「何言ってるんですか当たり前の事です」
「麗子さんに熱が移ったらごめんね」
「私は、熱なんか罹りませんよ。でも、剣様からなら罹りたいですね」
軽く笑う剣。
「麗子さん今の言ってて恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいに決まってるじゃないですか!」
今度は、思いっきり笑う。
「麗子さんって可愛いな」
「か、か、可愛いだなんて」
赤くなる麗子。そんな、表情を見て麗子に手招きして座らせて、頭に手を乗せて。
「な、な、何をするんですか!?」
「いつも……ありがとう……」
剣は、眠りについた。いつの間にか肩に力が入っていた麗子。剣の寝顔を見て力が抜けてクスッと笑った。
「私こそお側に置いて下さってありがとうございます。ご主人様」




