第三十二話「傍には」
剣の額に手を触れる。
「熱い!」
麗子は、剣を抱きかかえてベットに寝かす。剣の口元から苦しそうに息が漏れる。急いでタオルを冷たい水で濡らして絞り、剣の額に乗せる。
「うぅぅうぅ」
苦しそうな剣。
「薬とそれから氷枕を買ってこないと……しかし、このまま剣様を残すのは」
麗子は、自分の部屋にないか確認しに剣の家から出た時だった。ちょうど愛が帰って来た。
「七塚様!」
愛に声をかける。
「あ、麗子さん」
麗子は、二階から一階に飛び降りて華麗に着地して愛のもとに駆け寄る。
「大変です!剣様が熱を出してしまいまして!」
「えぇ!それは大変」
「帰って来た時は、何度ともなかったのですが剣様の所に行ったら、すでに熱が出ていて倒れていたのです!」
愛に剣のことを伝えて。
「私は、これから必要の物買ってきます。それまで剣様の傍にいてほしいのですが……」
「分かりました。任せてください」
「ありがとうございます。剣様の家の鍵は、開いてます。それでは行ってまいります」
麗子は、メイド服のままでヘルメットも付けづにオートバイに跨り颯爽と発進して行った。
「剣君?」
ゆっくりと剣の家に上がる。部屋の電気は、点いている状態で明るく部屋の隅にベットがあり、そこに息が上がっている剣がいた。鞄を置いて傍に移動して正座をして目線を剣と同じ高さにする。
「剣君、剣君」
愛が呼んでみるが聞こえていないみたいだった。額に置いてあっただろうタオルがずり落ちている。それを手に取ると生暖かくなっていた。愛は、タオルを濡らして再び剣の額に置く。
「剣君頑張って」
愛は、剣の右手を両手で掴む。
「うぅぅぅ」
「剣君!剣君!」
すると、剣の口が何度も開いたり閉じたりし始めた。何か言いたそうな感じだ。
「何?何言いたいの?」
「うぅ……あ、あか……明音」
「!?」
剣の口から出てきた言葉に驚く愛。
「あ、明音なのか……」
剣の目は、閉じたままで傍にいるのが明音だと思っている。愛は、悔しそうに歯をくいしばる。力を優しく言った。
「……剣君。貴方の隣にいるのは、愛よ。七塚愛」
「あ、愛……七塚愛……」
「そう、愛よ」
少し落ち着いてきたのが荒々しかった息がゆっくりになったきた。愛は、学校で明音に言った言葉を思い出していた。
『ハッキリ言います!野々村さんに剣君は、お似合いではありません!剣君には、私が相応しいですわ』
「そう、私の方が相応しいですわ。ですから剣君もっと私を見て下さい」




