第5回 初出仕
出仕の時間となった。
譙周は身だしなみを整え、諸葛亮の執務室と言える中堂に向かった。
今日は、学問に関わる人材を一堂に集めて、諸葛亮が今後の方針を語ることになっているという。
中堂には、一〇人ほどが集まった。
そこに、諸葛亮が登場した。皆、一斉に拝礼をした。
諸葛亮も拝礼を返し、語り出す。
「今日、皆に集まってもらったのは、今後の学問行政について、方針を共有したいと考えたからだ。学問の奨励こそが、この国にとって重要であることを、まずは、しっかりと理解していただきたい」
皆が頷く。諸葛亮は続ける。
「まず、儒林校尉の杜瓊。この学問官僚の長として、あなたには儒教の普及だけではなく、全体を統括して頂きたい」
「かしこまりました。この杜瓊、粉骨砕身、この国の学問の普及に全力で取り組む所存でございます」
「そして、典学校尉の尹黙。あなたには、この国の太学の一切を任せたいと思っている。問題点、改革案などがあれば、随時、提示してほしい」
「かしこまりました。丞相のお言葉、胸に刻みます」
「そして、勧学従事の張裔と譙周。まず張裔にお願いしたいのは、譙周の教育だ。譙周はこれが初の任官である。心得から仕事の内容まで、きめ細かく指導をしてくれ」
「かしこまりました。譙周殿の事、お任せください」
「そして、譙周。まずは、張裔から色々と学ぶように。最初が肝心だ。全力で励んでほしい」
「かしこまりました。張裔殿を師として、励みたいと思います」
「そして、他の者たちは、この四人を随時補佐してもらう。この割り振りは、杜瓊に任せる」
杜瓊は、拝礼した。諸葛亮が続ける。
「これは、大袈裟な話ではなく、この国をこれから支える人材の育成には、あなた方の仕事が最も重要だ。それは、何を意味するか。この国の命運がかかっているということである。そのことを理解して、取り組んでほしい」
更に続ける。
「そして、人材の育成に金がかかることは十分に認識している。全てを叶えるという無責任な約束をここではしないが、必要な提案は予算などを考えずにするように。下手な遠慮は不要である。その遠慮が国の命運を変える可能性もあることを、知っていて欲しい」
全員が拝礼し、退出をした。退出した後、杜瓊が皆に言う。
「先ほど丞相が、私に皆の統括をとおっしゃったが、それは私の年齢が一番上であるからのご配慮だと思う。年齢や経歴は気にせずに、何でも相談してほしい」
尹黙が答える。
「杜瓊殿を中心に、張裔殿、譙周殿、他の面々も、自分たちがこの国の未来を支える人材の育成に関わっているということに誇りをもって職務に励みましょう」
張裔が言う。
「尹黙殿のおっしゃる通りだ。この国を他国がうらやむ国にして見せましょうぞ」
譙周が言う。
「私は皆様と違い、これが初めての任官になります。まずは、張裔殿にお導きいただき、少しでも早くお役に立てるように尽力をいたします」
他の面々も、やる気をみなぎらせた顔つきとなった。
まずは、それぞれの役割に見合った仕事を進めることとし、定期的に全員で集まり、全体の進捗や疑問点、改善点の共有を行うこととして、この日は散会となった。
こうして、譙周は緊張の初出仕を無事終えたのである。




