第14回 地方巡察(一)
杜瓊が、勧学従事である張裔と譙周に、今後の学問改革のために必要なものを模索するため地方を巡察させたい旨を諸葛亮に話したところ、すぐに承認をされた。
諸葛亮は、巡察の際に、もし、在野に埋もれた士がいたならば、張裔、譙周の連名の書状を作成し、直接丞相府に来させるようにと、人材登用の任務も合わせて与えた。
出発前夜、四人で酒宴が行われた。
杜瓊が言う。
「二人の留守中は、私と尹黙殿で学問官僚の仕事はこなす。心配せずに、旅立つとよい」
「そうですね。何も心配はいりませんよ。丞相より仰せつかった人材の登用もできればよろしくお願いします」
「人材の登用……。この張裔の曇った目では見逃しそうですな。譙周殿、よろしく頼みますぞ」
「何をご無体な……。私の目など何の役にも立ちません」
「いや、そんなことはあるまい。譙周殿には、かなりの才能があるとみている。譙周殿、この巡察を終えた後、私の下で学ぶ気は無いか。私の専門とするところは、尚書、図讖、天文。そう、譙周殿と同じなのだ。伝えることが難しい部分もあるが、出来るだけお伝えしたい」
「杜瓊殿に師事できるのですか!もちろん、こちらよりお願いをさせていただきます」
譙周は立ち上がり、杜瓊に拝礼した。
杜瓊が立ち上がり言う。
「さあ、固い話はここまでとして、張裔殿と譙周殿のお役目の成功を祈るために今宵は飲もうではないか!さあ、お前たちも入ってくるがよい」
杜瓊が声を掛けると、普段、この学問官僚を支えている者たちが入って来た。一人が言う。
「杜瓊様。我々の様な者が、この席にいてよろしいのでしょうか?」
「何を言う!そなたたちがいなければ、この蜀漢の学問行政は動かんぞ。それくらいの気構えで働いてもらわねば困るというものだ。さあ、皆も飲むといい」
「ありがとうございます。それでは、頂きます」
尹黙が言う。
「固いだけではなく、こういった柔軟性をお持ちなのが杜瓊殿の魅力ですね」
譙周が答える。
「そうですね。まずは地方巡察で成果を挙げて見せます。そして、帰ってきましたら、杜瓊殿の下で学びたいと思います」
張裔が言う。
「おお、譙周殿。その意気ですぞ。明日からは二人、共に頑張りましょうぞ!」
再び、全員で乾杯が行われた。
―明朝―
朝早い出発にも関わらず、昨日の面々が見送りに出てきた。
杜瓊が代表して言う。
「まずは、気を付けて。そして、無事帰ってくることを心から願っている」
張裔が答える。
「ありがとうごいざいます。それでは、行って参ります」
こうして、張裔と譙周は馬上の人となり、旅立ったのである。




