第12回 改革前夜
太学の設備が増改築される発表を受け、現在在学中の学生は活気づいた。何といっても、新たに兵学、法学、政治学(以下、総称して「実学」とする)と言った実践的な学問の教授も行われるということに、興奮を隠さなかった。
しかし、実学を学ぶためには、儒学を完全に習得したといえる水準の知識が必要であり、全員がその教授の機会をもらえないといった話も伝えられ、他者に後れを取るまいと、今まで以上に真剣に学問に向き合う者が増えてきた。
尹黙が言う。
「太学改革の効果が既に発揮をされてきたという感じですね。これは、我々も気合を入れて取り組む必要がありますね」
「そうですな。資料室の資料も、実学関係の蔵書を早めに増やしておく必要がありますな。多くの者が、利用をしたがるでしょうから」
「学ぶことに集中できる環境を作ってあげられればと私は思います。学問には情熱とそれに見合った環境が必要だと思いますので」
「確かに。さすがは譙周殿。学生たちと歳が一番近いのはあなただ。これからも、積極的に意見を言ってください」
「はい。ところで、肝心の教授する師は決まったのでしょうか?」
「そのことで、話があると杜瓊殿に呼ばれています。今から、皆で参りましょう」
尹黙を先頭に、三人は杜瓊の居室へと向かった。
迎え入れられ座ると、早速杜瓊が言う。
「実学の師となってもらうべき人が決まったので、皆に報告する」
杜瓊は続ける。
「法学・政治学が楊儀殿、兵学が馬謖殿。丞相の推薦で、このお二方にやって頂くことになった」
「なるほど。適任でございますな」
「丞相が、我々の改革案を本当に推進するお気持ちが入った人選である。全くもって、非の打ち所がない」
張裔も深く頷いた。譙周が聞く。
「私はお二方をよく存じ上げませんが、どの様な方なのでしょうか」
「まず、楊儀殿は実務派の官僚で、その法学、政治学の学識は相当なものだ。馬謖殿は、近々将軍に抜擢されるという噂もある。それくらい、兵学に詳しい方だ」
「それならば、太学での実学の講義は非常に内容の濃いものになりそうですね」
「うむ。私も丞相のこのご提案を聞いて、すぐに賛成をさせていただいた。この太学はこれから変わるぞ」
四人は、これからの太学の明るい未来を想像した。
そして、半年が経過した。




