第11回 上奏
上奏文は、杜瓊が代表して書くことにした。
尹黙、張裔、譙周の三人はそれに必要な資料集めや情報の収集に取り組んだ。
まず、講堂自体の増設や、官舎の拡充といったところから、実際に講義を行う人材の確保や書物の手配など、どれくらいの人手や費用が必要になるか、といった予算の想定なども概算ではあるが行った。
諸葛亮は予算など気にせずとも提案せよ、とのことであったが、この話を具体的に実行したい思いが強いことから、皆でありとあらゆる角度での検討、検証を行ったのである。
―一〇日後―
皆の意見を杜瓊が見事にまとめ上げ、上奏文が完成した。
尹黙が言う。
「杜瓊殿。何卒、丞相への上奏、お願い致します」
「尹黙殿、何を言っているのだ。これは、我々学問官僚四人でまとめた草案だ。上奏は、全員揃って行くことにする」
「わかりました。我々もお供させて頂きます」
こうして四人は、丞相府に向かった。
上奏の議があると告げると、早速中堂に通された。四人が待っていると、諸葛亮が現れた。そして言う。
「ほう、四人ともそろっているのか。して、上奏というのは?」
杜瓊が上奏文を側仕えの者に渡した。
諸葛亮が目を通す。
この時間が譙周には長く感じた。丞相である諸葛亮が何を言うのか、緊張の面持ちで待っていた。
「ふむ……」
諸葛亮は上奏文を読み終えた。そして、言う。
「上奏の内容はわかった。太学の規模、学生の選抜枠の拡充、そして兵学、法学、政治学の導入。全て、実際に必要であろう。私の考えと一致している。この上奏文の内容に沿って、話を進めようではないか」
「ありがとうございます。しかし丞相、一つ懸念が」
「誰が、兵学、法学、政治学の教授をするか、というところか」
「はい。今のところ、これと言った人物は見当たらないのが現状です。場合によっては、益州外の人材にもあたる必要があるかとも思いますが……」
「その必要はない。これに適した人材は、私自らが選任しよう。それ以外の諸事、皆に任せていいかな?関係各所には私の命令として、協力をするように伝えておく」
四人は拝礼して立ち去った。
杜瓊が言う。
「皆のおかげで、太学の改革案は承認をされた。礼を言う」
「いえ、これも杜瓊殿の上奏文のおかげです。これから、忙しくなりますね」
「そうですな。ゆっくりしている時間はなさそうですな」
「丞相は教授する人間は自ら手配をされるとおっしゃっていましたが、どの様な方をお選びになるのでしょうか」
「おそらく、丞相府の中から抜擢するおつもりなのであろうな」
「丞相府の中から……」
「なるほど。丞相の子飼いの方たちであれば、師の役目には十分でしょうな」
「私も是非、学びたいものです」
こうして、諸葛亮への上奏は無事に終わった。そして、太学改革が進んでいくことになるのである。




