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★毎日7時、21時に更新★王女エレノーラは婚約者の正体に気づかない ~悪役令嬢のはずが聖女になってしまいました〜  作者: ゆきまる


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帰れ


フォレストが何か言っていた気がする。

けれど今の私にはそんなことより大事なことがあった。


目の前には巨大な扉。

白銀色の金属で作られた両開きの扉は、私の身長の何倍もある。


表面には複雑な紋様が刻まれていた。

円と線が幾重にも重なり合い、まるで巨大な魔法陣そのものだ。


見ているだけで胸が高鳴る。


「行くわよ」


私は迷うことなく扉へ近付いた。


すると、扉に刻まれた紋様が淡く青白く輝き始める。


「えっ」


思わず声が漏れた。

光は水面の波紋のように広がり、扉全体を覆っていく。


そして次の瞬間。


ゴゴゴゴゴ……。


重厚な音を響かせながら、巨大な扉がひとりでに開き始めた。


「おおおおお!」


私は思わず歓声を上げた。


「お前、王女だろ」


後ろから呆れた声が飛んでくる。


「だって!」


私は振り返った。


「勝手に開いたのよ!?」

「魔法塔だからな」

「すごいじゃない!」

「そうだな」


フォレストの反応は薄い。

絶対に感動が足りないと思う。



私は期待に胸を膨らませながら扉の向こうへ足を踏み入れた。


そして、

思わず息を呑んだ。


広い。とてつもなく広い。


塔の外から見た時も大きかったが、中はそれ以上に感じた、


天井は遥か上。

見上げると首が痛くなるほど高い。


吹き抜けになっている空間の中央には巨大な光の結晶が浮かんでいた。


透明な結晶の内部を青い光がゆっくり流れている。

まるで心臓の鼓動のように。


脈打つたびに周囲へ淡い光が広がっていた。

壁一面には本棚。


ぎっしりと並ぶ本。


上の棚は到底手が届かない高さなのに、何冊もの本が勝手に空を飛びながら移動している。


「飛んでる……」


本が飛んでいる。

当たり前のように飛んでいる。


前世の私が見たら大騒ぎだ。

いや。

今の私も十分騒いでいた。


「すごい……」


本当に異世界なんだ。

前世で憧れた世界がここにある。


魔法。

魔術師。

魔法塔。

全部本物だ。


胸が高鳴る。


右を見ても左を見ても、

興味を惹かれるものしかない。


天井近くを飛ぶ光の球。

空中に浮かぶ魔法陣。

勝手に文字を書き続ける羽ペン。


何もかもが新鮮だった。



その時だった。


「邪魔」


低い声が聞こえた。

私は振り返る。


そこには一人の少年が立っていた。


黒髪に黒い瞳。

年齢は12歳くらいだろうか

腕いっぱいに本を抱えている。

顔立ちは整っている。

整っているのだが、驚くほど愛想がない。


というか、機嫌が悪そうだった。


「ごめんなさい」


私は慌てて道を譲る。


少年は何も言わず横を通り過ぎた。

長い黒髪が揺れ、ローブの裾が翻る。


そして数歩進んだところで立ち止まった。


ちらり。

こちらを見る。

冷たい瞳だった。


まるで興味がないと言わんばかりの視線。


そして。


「帰れ」


「え?」


私は瞬きをした。


今なんと?


少年は表情一つ変えずに繰り返す。


「帰れ」

「えぇ……」


ひどい。

初対面である。

しかもまだ何もしていない。


たぶん。


「フォレスト」

「なんだ」

「私、嫌われたかしら」


フォレストは少年の後ろ姿を見ながら答えた。


「安心しろ」

「うん」

「たぶん全員にああだ」


なるほど!安心した。


いや全然安心できなかった。


少年はそのまま階段を上っていく。

本を抱えたまま、一度も振り返ることなく。


同じようにこちらを気に求めず自分の仕事を全うしているらしい周囲の魔術師たちは慣れているらしい。


誰も止めない。

誰も気にしない。

どうやらあれが普通らしい。


「変な人ね」

「否定はしない」


私は再び少年の背中を見る。


私は自然と笑っていた。


――面白そうな人ね。それに見た目が日本人っぽいからかとても親近感が湧いたわ。


その言葉を聞いたフォレストが、頭を抱えたとこに気づかなかった

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