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ゲーム開始前に全部終わらせてしまいました ~悪役令嬢のはずが聖女になった王女の物語~  作者: ゆきまる


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迫り来る原作

「来るぞ!」


騎士たちが叫ぶ。


鋭い鉤爪が、一人の若い騎士へ向かって一直線に迫る。


若い騎士は目の前のゴブリンを相手にするので精一杯だった。


気付いていない。


「危ない!」


誰かが叫ぶ。


間に合わない。


そう思った、その瞬間だった。


ガキィィン!!


鋭い金属音が響く。


振り下ろされた鉤爪を、一振りの大剣が受け止めていた。


赤い髪が風になびく。


アルカナム・パイロ。


「下がれ!」


低く、それでいてよく通る声が響く。


若い騎士ははっと我に返り、慌てて後ろへ飛び退いた。


「も、申し訳ありません!」


「謝るな。」


パイロはグリフォンイーグルから目を離さないまま言った。


「戦場では、生き残ることだけを考えろ。」


そう言い切ると、大剣を力強く振り抜く。


鋭い一撃がグリフォンイーグルの片翼を切り裂いた。


体勢を崩した魔物は、大きく鳴き声を上げながら空へ逃れる。


「今だ!」


「弓兵!」


無数の矢が再び空へ放たれる。


今度は数本が翼へ突き刺さり、一体のグリフォンイーグルが悲鳴を上げながら地面へ墜落した。


しかし。


「ギィィィィィィッ!!」


上空には、まだ何体ものグリフォンイーグルが旋回している。


その動きが、不意に止まった。


じっと。


戦場全体を見下ろしていた。


「怯むな!」


パイロの声が響く。


「飛行型に意識を奪われるな!」

「地上の魔物も迫っている!」

「前衛は隊列を維持!」

「弓兵は二班に分かれろ!」

「一班は対空!」

「二班は地上を援護しろ!」


矢継ぎ早に指示が飛ぶ。


その声に応えるように、騎士たちは一斉に動き始めた。


誰一人迷わない。

誰一人立ち止まらない。


たった一人の指示で、混乱しかけていた戦場が再び動き出していく。


だからこそ、

胸の奥がざわついた。


私は思わず空を見上げる。


彼らの首が一斉に動に

その鋭い赤い瞳が。


一人の騎士を捉えた。


「……。」


パイロ。


仲間を討たれた怒りなのか。


それとも、この戦場で最も危険な敵だと判断したのか。


数体のグリフォンイーグルが、まるで示し合わせたように隊形を変え始める。


「ギィィィィィッ!!」


一体。


また一体。


旋回していた群れが、一斉にパイロの上空へ集まり始めた。


「……っ!」


嫌な予感が、一気に膨れ上がる。


駄目。


嫌。


やめて!!


「やめろぉぉぉっ!!」


いつの間にかこちらを見ていたフォレストが戦場へ響き渡るほどの大声で叫び、速度強化の靴を限界まで使って地面を蹴った。


一直線に、パイロの元へ駆け出していく。


「フォレスト!」


私も反射的に走り出す。


お願い。


間に合って。


足は動いている。


必死に走っている。


それなのに。


遠い。


あまりにも遠い。


伸ばした手は、何にも届かなかった。

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