魔法塔の見学①
話をしているうちに、私たちは魔法塔へと辿り着いた。
王城の最も端に建てられたその塔は、何度見ても圧巻である。
高くそびえ立つ石造りの塔。
窓からは淡い魔力の光が漏れ、研究室からは時折、小さな爆発音まで聞こえてくる。
「相変わらず賑やかね」
私は思わず苦笑した。
「いつもこうなの?」
アルベールが尋ねる。
「ええ。研究に夢中になると皆ああなの」
今日はアッシュが遠征中のため、塔内はいつもより静かな方だ。
それでもあちこちの研究室では、魔道具の開発が進められていた。
廊下を歩けば、魔石を加工する音や、魔法陣を書き写す研究員の姿が目に入る。
「こちらでは主に魔道具の研究を行っていますの」
私は棚へ並べられた試作品を示した。
「照明用、農業用、治療補助用……生活を便利にするものが多いですわ」
アルベールは一つ一つを興味深そうに見つめる。
「なるほど」
「ティアーナでは実用性を重視しておりますの」
「カナルドとは少し違うね」
「やっぱり違うの?」
「うん」
アルベールは頷いた。
「カナルドでは軍事利用できる魔道具や、新しい魔法の開発が中心なんだ」
「やっぱりそうなのね」
私は感心したように頷く。
「同じ魔法でも国によって目指す方向が違うなんて面白いわ」
しばらく魔道具を眺めていると、ふと疑問が浮かんだ。
「そういえば」
私はアルベールを見る。
「カナルド帝国の王族は皆、魔法を使えるのでしょう?」
「そうだね」
「やっぱり。素敵ね。」
羨ましい。
魔法大国なのだから当然と言えば当然なのだろう。
「いつかカナルドの歴代最強の魔導士さんにもお会いしたいわ。」
そう言うと、アルベールは少しだけ困ったように笑った
「いずれ知られることではあるからいうけど」
アルベールは少しだけ言いづらそうに口を開く。
「それは私なんだ」
「えっ?」
思わず声が漏れた。
「アルベール殿下が?」
「うん」
私は思わずアルベールを見つめる。
歴代最強。
カナルド帝国始まって以来の魔導士。
その本人が目の前にいる。
「すごいです!」
気付けば声が弾んでいた。
「羨ましいですわ!」
「羨ましい?」
「ええ!」
私は大きく頷く。
「魔法が使えるなんて楽しそうですもの!だって、魔法で空を飛んだり、遠くの物を動かしたり、綺麗な光を生み出したりできるのでしょう?あぁ本当に素敵!」
前世では夢物語だったことが、この世界では現実になる。エレノーラは興奮していた。
「私も一度でいいから使ってみたいですわ」
思わず本音が漏れる。
アルベールは少し驚いたように私を見つめていた。
「今まで『羨ましい』なんて言われたことはなかったな」
「あら?」
そういうものなのだろうか。
私にとってはとても羨ましいことなのに。
「魔法って、本当に素敵ですもの」
そう言って研究中の魔道具へ目を向ける。
やっぱり。
何度見ても魔法というものは見ていて飽きない。
その時だった。
研究室の奥から、一人の研究員がこちらへ駆け寄ってきた。
「エレノーラ王女殿下!」
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