王女のおもてなし計画
フォレストと攻略対象者の話を終え、解散した後
私は家族と夕食を囲んでいた。
「そういえば明日、アルベール殿下とお会いする予定なの」
何気なく口にした瞬間だった。
「あらあら」
母上が微笑む。
「あらあらあら」
もう一度微笑む。
「……母上?」
「まぁまぁまぁ」
にこにことした笑みがさらに深くなる。
父上は苦笑し、兄上は呆れたように肩をすくめた。
「母上、顔が怖いぞ」
「失礼ね」
どう見ても何か勘違いをしている顔である。
「別にそういうのではありませんからね?」
私が念を押すと、
「ええ、ええ」
母上は全く信じていない顔で頷いた。
何故だ。
「それで?明日は何をする予定なの?」
「それが決まっていなくて」
私はスープを口に運びながら答える。
「この前は庭園と城下を案内したでしょう?だから次は何を見せれば良いのかしらと思って」
すると母上がぱん、と手を打った。
「それなら城の中を案内して差し上げたら?」
「城の中?」
「ええ。図書室や歴史資料室もあるでしょう?」
「ああ、それは良いかもしれません」
アルベールは外国の王子だ。
ティアーナ王国の歴史にも興味があるかもしれない。
「それに、あなたがよく通っている魔法塔もあるじゃない」
「魔法塔?」
兄上が苦笑する。
「それは案内というよりエレの趣味だろう」
「失礼ね」
確かに趣味ではあるが。
「でも魔道具の研究なんかも見られるしカナルド帝国との違いを聞いてみるのもいいんじゃないかしら?」
「それなら面白そうですね」
私は頷いた。お母様に聞いてみて正解だった。
図書室、歴史資料室を見て回った後、魔法塔をみるだけでも十分な時間になるだろう。
「ええ。あとはそうね。図書室や歴史資料室を巡って魔法塔に行く前に中庭でお茶でもしたらどうかしら?あなたが得意なお菓子があったでしょう?」
「お菓子?」
「パンナコッタと言ったかしら。あの苺のソースをかける甘い食べ物」
「ああ」
前世の知識を元に作った冷たいお菓子だ。
お父様やお兄様も気に入ってくれている。まだ家族や城で働いている者達以外には食べさせたことがない。
「せっかくですもの。作って差し上げたら?」
私は少し考える。
確か以前、アルベールと料理の話になったことがあった。あの時、私の手料理が食べたいと言っていたような気がしなくも無い。お菓子も手料理には変わらないだろう。
「確かに良いかもしれません」
「でしょう?」
母上が満足そうに頷く。
よし。
明日はパンナコッタを作ろう。
そこまで決めて、私はふと考えた。
だが、パンナコッタだけでは少し物足りない気がする。
甘いものだけだと飽きる。
甘いものには――。
「しょっぱいものね」
私が呟くと、お兄様が首を傾げた。
「何を作る気だ?」
「ポテトチップス」
「ぽてと……?」
聞き慣れない言葉に家族が揃って首を傾げる。
「じゃがいもを薄く切って揚げるだけよ」
「それだけか?」
「それだけ」
失敗する要素がない。
簡単。
美味しい。
素晴らしい。
「大量に作れば騎士団や使用人の皆も食べられるでしょう?」
「また始まった」
兄上が額を押さえる。
「何が?」
「お前は誰かに作ると言いながら最終的に全員分作るんだ」
「良いことじゃない」
私は胸を張った。
せっかくなら皆で食べた方が楽しい。
母上はそんな私を見てくすくす笑う。
「アルベール殿下のためのお菓子だったのではなくて?」
「もちろん殿下の分もあります」
「“も”なのね」
何故か母上の笑いがさらに深くなった。
意味が分からない。
とりあえず、
明日は城を案内して、中庭でお茶をする。
そしてパンナコッタとポテトチップスを振る舞う。
とても良い計画だと思う。
やはり相談してみるものだ。
さすがお母様である。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
ぜひブックマーク、リアクション、評価をお願いいたします!
していただいたら作者のモチベーションが上がります!
どうぞよろしくお願いいたします!(´∀`*)




