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ゲーム開始前に全部終わらせてしまいました ~悪役令嬢のはずが聖女になった王女の物語~  作者: ゆきまる


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壊された結界魔道具


ダンスのレッスンを終えた頃には、空はすっかり夕焼け色に染まっていた。


私は大きく伸びをする。


疲れた。

とても。


食堂。

ダンス。

そしてこれから魔法塔。


今日はなかなか忙しい一日だった。


「それでも行くのか」


隣を歩くフォレストが呆れたように言う。


「もちろん」


即答だった。


「アッシュに会いに行くもの」

「そうか」


諦めた声だった。


魔法塔へ到着すると、私は慣れた足取りでアッシュの研究室へ向かう。


扉を開ける。

中は相変わらずだった。


本。

本。

本。


そしてアッシュ。

机に向かったまま何かを書いている。


「来たわよ」

「帰れ」


いつもの挨拶だ。


私は満足げに頷く。

元気そうで何よりである。


「そういえば」


私は椅子へ腰掛けた。


「婚約者に会ったの」

「ふーん」


興味なさそうだった。


「最初は嫌だったのだけれど」

「へぇ」

「意外と悪くなかったわ」

「そう」


会話が終わった。

早い。


すると。

アッシュがふと顔を上げる。


「婚約者?」

「ええ」

「そういえば」


アッシュが眉をひそめた。


「名前聞いてなかった」

「え?」

「お前誰?」


私は瞬きをする。


「どこかの令嬢か?」


失礼ね。


「名乗ってなかったかしら」

「知らない」

「そう」


私は胸を張った。


「ティアーナ王国第一王女、エレノーラ・フォン・

ティアーナよ」


沈黙。

数秒後。


「へぇ」


終わった。


「それだけ?」

「だから何」

「もっと驚かない?」

「別に」


私はフォレストを見る。

フォレストは肩を竦めた。

予想通りらしい。


「つまらないわ」

「帰れ」

「帰らない」


いつもの流れだった。


しばらくして、私は机の上に積まれた資料へ視線を向ける。


いつもより多い。


「そういえば」


私は尋ねた。


「遠征は明日からよね?」

「ああ」

「どこまで行くの?」


アッシュはペンを置いた。


「国境付近」

「遠いわね」

「結界魔道具が壊された」


私は瞬きをする。


「結界魔道具?」

「そう」


アッシュは淡々と説明した。


魔物避けの結界。

国境付近に設置されていた設備。


それが何者かによって破壊されたこと。

原因はまだ不明なこと。


「それってあの丸いやつよね?国境とは別に城下にもあった気がするけど。」

「それはカナルドの使節団が確認してる」


なぜカナルドが?と思ったが元々結界魔道具はカナルド帝国がティアーナ王国に友好の証として提供してくれた魔道具だ。そのため直接確認せざる終えないのだろうと思う。


「ふーん」


私は少し考える。


そして、ふと思い出した。


「そういえば」

「何」

「最近お父様が忙しそうだったの」


アッシュがこちらを見る。


「大陸の南側諸国の動きが怪しいって言っていた気がするわ」


沈黙。


「関係あるのかしら?」


アッシュは少し考える。


「さあ」


正直だった。

まぁそうよね。戦争が起こらなければ良いけれど。


そう考えてふと時計を見る。


いつもならまだまだ居座る時間だった。

だが。


「今日はもう帰るわ」


アッシュが顔を上げた。


「珍しい」


失礼ね。


「明日遠征でしょう?」

「そう」

「だったら早く休んだ方が良いわ」


私は立ち上がる。


「気を付けて行ってきてね。」


アッシュは少しだけ目を瞬いた。


そして

「……ああ」

小さく頷いた。


その背中を見送りながら、アッシュはしばらく黙っていた。


私は満足して研究室を後にした。

珍しく長居はしなかった。


アッシュは明日から遠征だ。

邪魔をするのも悪い。

たまには気を遣うのである。


少しくらいは。



王城へ戻る馬車の中。


私は窓の外を眺めながら呟いた。


「まだ明るいわね」


いつもなら魔法塔から帰る頃には夕暮れになっている。 


だが今日は違った。

まだ夕食までは時間がある。


「珍しいな」


向かいに座るフォレストが言う。


「何が?」

「お前が自分から帰るなんて」


失礼ね。

私は気を遣える女である。

たぶん。


5分後、王城へ到着する。


自室へ戻った私は勢いよくソファへ飛び込んだ。


ふかふかである。

最高だ。


すると、扉がノックされた。


「入っていいわよ」


入ってきたのは先ほど別れたばかりのフォレストだった。


「どうしたの?」


私はクッションを抱えながら聞く。


フォレストは珍しく真面目な顔をしていた。


「時間あるか?」

「あるわよ」


今日は夕食までまだ余裕がある。


「なら少し話したいことがある」


私は首を傾げた。


「珍しいわね」

「最近思い出したことがある」


その言葉に私は姿勢を正した。

前世関係だ。

それはすぐ分かる。


「何を?」


フォレストは一度息を吐いた。


そして、

「聖女アリアの奇跡の攻略対象者についてだ」


私は目を瞬いた。


「そういえば前にアッシュが攻略対象だって言っていたわね」

「ああ」


フォレストは頷く。


「思い出した」

「攻略対象者は全部で五人いる」


そう言った。 

私は即座に反応した。


「多くないかしら?アリアは大変ね。」



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