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ゲーム開始前に全部終わらせてしまいました ~悪役令嬢のはずが聖女になった王女の物語~  作者: ゆきまる


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距離を置きたい婚約者

城下町から戻った私は、自室のベッドへ倒れ込んだ。


ふかふかである。

素晴らしい。

最高だ。


しばらくして天井を見つめる。


そして、ぽつりと呟いた。


「楽しかったわね」


言った瞬間。

私は顔を覆った。


しまった。

認めてしまった。


本来の予定では違ったのだ。

午前中だけ婚約者の相手をして、昼食を食べたら解散。

その後は食堂。

あるいは魔法塔。


自分の時間を満喫する予定だった。


それなのに、

気付けば夕方まで城下町を歩き回っていた。


完全に誘惑に負けている。

反省である。


「エレ」


向かいのソファから声がした。

フォレストである。


なぜいるのか。

たぶん私の監視だ。


「何かしら」

「今日のことだが」


嫌な予感がした。

フォレストは真顔だった。


「輪投げの時」


ああ。

輪投げ。

楽しかったわね。


「お前、最初に誰を呼んだ?」


私は目を逸らした。


「……フォレスト?」

「王子が隣にいたよな?」

「いたわね」

「婚約者だったよな?」

「そうね」

「なんで俺を呼んだ?」


私は黙った。

フォレストも黙った。


しばらく沈黙が続く。


「失礼だったわね」


私は観念した。

フォレストが大きなため息を吐く。


「だろうな」

「反省しているわ」

「珍しいな」

「私が悪いもの」


でも確かにそうだった。


婚約者を案内している途中だったのだ。

まず声を掛けるべきはアルベールだった。


完全に無意識だったけれど、王女の対応として減点である。


「まぁ」


私はベッドの上で寝返りを打つ。


「王子も思ったより悪い人ではなかったわ」


フォレストが眉を上げた。


「へぇ」

「何よその顔」

「いや?」


絶対に面白がっている。


私は今日のことを思い出す。

輪投げ。

串焼き。

屋台。

そして最後の笑顔


あの笑顔は悪くなかった。

王子様の笑顔より、あっちの方が自然だった。



「友達くらいならいいかもしれないわね」


口にしたはいいが少し考え、そして首を横に振った。


「やっぱり駄目ね」

「なぜそう思う?」

「アリアもいるし」

「まぁ、アリアがアルベール殿下を選んだ場合」

「面倒だわ」「面倒だな」


珍しく意見が一致した。

     

アリアが現れ、もしアルベールを選んだ場合私の立場上アリアから見れば好きな人の婚約者なんて有無を言わず悪役である。それなのに友人として親しくしようものなら更に悪役扱いされるのは目に見える。


アリアが聖女になると必ずアルベールの婚約者として名が上がるはず、そうなる確率はどのルートよりも高いのだ。


そもそもアルベールの婚約者にならなければよかったのでは?と頭をよぎるがもうなってしまったので仕方がない。


私は平和に生きたい。

そして、出来れば食堂と魔法塔を満喫したい。


「距離は置くことにするわ」

「賢明だな」

「でしょう?」


私は満足げに頷いた。


その時だった。

扉が叩かれる。侍女マリーだった。


「エレノーラ王女殿下」

「なぁに?」

「アルベール殿下からお手紙が届いております」


嫌な予感がした。

とても。


封を開く。綺麗な文字だった。

さすが王子様である。



本日はありがとうございました。


大変楽しい時間を過ごさせていただきました。


もしよろしければ二日後の午後、再びご一緒いただければ幸いです。


今日はゆっくり休んでください。


アルベール・ヴァン・カナルド



私は黙った。

フォレストも覗き込む。


そして一言。


「早いな」

「早いわね」


私はもう一度読む。


二日後。

午後。


そして気付く。


その日、予定がない。


最近繁盛してきた食堂は働きすぎは良くないからと定休日を作るように提案し、ちょうどその定休日である。

魔法塔に行くにも、アッシュはちょうど2日後からティアーナ王国各所にある魔道具結界の点検に駆り出されるらしくいないのだ。


朝、歴史の授業があるのだが、残念ながら午後は暇である。


私は天井を見上げた。


「抜け目がないわね」

「抜け目がないな」


フォレストも同意した。


私は予定をアルベールに話していない。

それなのに、断りづらい日時を指定している。

絶妙に空いている日。


行かなかったら、少しだけ罪悪感がある。


「賢いわね」

「王子だからな」


私はしばらく悩み、そして諦めた。

これも王女としての務めよね。


「了承しておいて」


侍女が一礼する。


「かしこまりました」


扉が閉まる。

私はベッドへ倒れ込んだ。


「まぁいいわ」

「いいのか?」

「明日は自由だもの」


午前中は食堂。

午後はダンスレッスン。

ニ時間程度。

夕方は魔法塔。


完璧な予定である。


私は満足げに頷いた。


「明日は楽しみね」


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