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王女エレノーラは婚約者の正体に気づかない ~悪役令嬢のはずが聖女になってしまいました〜  作者: ゆきまる


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18/31

城下町の1日①


庭園を歩いている最中。


私は真剣に考えていた。

肉じゃがか。

コロッケか。


いや。やはり。


「そうね。次は唐揚げにしましょう」


ぽつりと呟く。


「からあげ?」

隣から声がした。


私は固まる。しまった。

声に出ていた。


アルベールが首を傾げている。


「唐揚げとは何でしょうか」

「え?」

「今おっしゃっていましたよね」


まずい。

非常にまずい。


前世料理である。

説明が面倒だ。


「その……」


私は咳払いをする。


「新しい料理ですわ」


嘘ではない。たぶん。


「料理ですか」


アルベールが興味深そうに微笑む。


「エレノーラ王女殿下は、ご自身で料理をなさるのですか?」


私は少し考えた。隠すほどでもない。


「まぁ、少しくらいは」


するとアルベールの目が少しだけ細められた。


「それは興味深いですね」


嫌な予感がした。

返答を間違えた気がする。時間を巻き戻したい。


「一ヶ月も滞在するのです」


アルベールは穏やかに続ける。


「せっかくですから、一度くらい王女殿下のお料理を頂いてみたいものです」


私は固まった。

何を言っているのだろう。


王子様とはこんなことを言う生き物だっただろうか。


「そうですね。まぁ機会がありましたら」


私は満面の笑みで言った。

そして即座に話題を変える。


「ところで、そろそろ戻りませんか?」


アルベールが瞬きをした。


「まだ来たばかりですが」


そうだった。


私は空を見上げる。

助けてほしい。

誰か。


もちろん誰も助けてくれない。


遠くではフォレストが面白そうにこちらを見ていた。

裏切り者である。


するとアルベールがふと口を開いた。


「よろしければ昼食の後、城下を案内していただけませんか」


私は固まった。


城下。

今。

城下と言った。


午後くらいゆっくりさせて欲しい。

そうか。今日は殿下が来るから礼儀作法の授業がお休みだったのか。ただの休みだと思って浮かれていたのに。


「でしたら」


私は即座に言った。


「私の騎士がおります」


遠くにいるフォレストを指差す。


「彼が詳しいので」


完璧である。

しかし。

アルベールは微笑んだ。


「王女殿下ご自身に案内していただきたいのです」


嫌な予感がした。


「フォレストも優秀ですわ」

「存じております」

「彼の方が詳しいかと」

「王女殿下ほどではないでしょう」

「そんなことは」

「ぜひお願いしたい」


笑顔だった。

笑顔なのに。

逃げ道がない。


私は気付いた。


この人、意外と強い。


「……分かりました」


負けた。



昼食後。


私はアルベールと共に城下町へ来ていた。

もちろん護衛付きである。


フォレスト。

侍女たち。

アルベール側の護衛たち。


少しだけ離れた場所から見守っている。


城下町へ足を踏み入れると、人々が私たちに気付いた。


「あれは……」

「エレノーラ王女殿下だ」

「なんと可愛らしく、お美しい。将来安泰だな」


ざわりと人々が道を開ける。

私は小さく微笑んだ。


すると近くにいた果物屋の店主が頭を下げる。


「エレノーラ王女殿下。本日はお越しいただきありがとうございます」

「こんにちは」


私は立ち止まった。


「商売は順調ですか?」


店主は少し驚いた顔をした。


「はい。おかげさまで」

「それは良かったわ」


私がそう言うと、店主は嬉しそうに笑った。


少し進む。

今度は子供たちがこちらを見ていた。


私が手を振ると、


「王女殿下だ!」

「お姫様だー!」


と元気よく手を振り返してくる。


とても可愛らしい。私は思わず笑った。

その様子を見ていたアルベールが言う。


「随分慕われているのですね」


私は首を傾げた。


「そうかしら?」

「はい」


アルベールは周囲を見渡す。


人々の表情は明るい。

恐れているわけではない。

媚びているわけでもない。

自然な敬意だった。


「お父様が良い国を作ってくださっているからだと思うわ」


私はそう答えた。


本当は1話のつもりでしたが、思いの外長くなったので2話分けさせてもらいます!


いつもお読みいただき、ありがとうございます!

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どうぞよろしくお願いいたします!(´∀`*)

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