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竜崎くんは今日もかっこいい  作者: 紗羽


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 暫く三人で店の前に座って談笑していると、榛名はポケットに入れていたスマホが振動していることに気付いて取り出した。


「あ、やべ!じいちゃんに寄り道してくるって言うの忘れてたっ!」


 画面に表示された着信相手の名前に榛名が慌てて通話を押した。


「あ、じいちゃん?連絡忘れてた!わr…『どこほっつき歩いとんじゃ馬鹿もんがぁ!!』……っ」


 キーーン、と耳に響く声に榛名はスマホから耳を離した。



「「………。」」



 離れていても聞こえてきた電話相手の声に、竜崎は顔を引き攣らせ、結衣は目を丸くした。


「悪かったって!そんな怒んなよ」


 榛名は相手の怒りように苦笑しながら二言、三言話しをするとすぐに電話を切った。


「あー、もうめんどくさー。過保護すぎんだろあのクソジジィ」


 やれやれ、と溜息をつきながらも顔は笑っている榛名に、竜崎は軽く鼻で笑った。



「ごめんね、榛名くん……遅くまで付き合わせちゃって……お家の人怒らせちゃった?」


 結衣がおずおずと尋ねると、榛名がキョトンとしながら結衣を見た。


「ん? ……あぁ、結衣が気にする必要ないぞ!俺が連絡してなかったからいけねぇんだし。帰り遅くなるならついでにスーパー寄って牛乳と酒のアテ買ってこいってさ」


 軽く肩をすくめながら言った榛名に結衣が安心したように小さく微笑むと、榛名もニッと笑いかけてくれた。

 そして榛名はもう一度手元のスマホに視線を落として時間を確認すると、結衣を見て言った。



「俺たちよりも結衣の方が心配されてんじゃね? 大丈夫か?」


 榛名の言葉に竜崎も結衣を見ると、彼女は頷きながら言った。


「私は残業の時これくらいの時間になるの普通だから……でも、そろそろ帰らないと。」


 結衣がそう言いながら立ち上がると、榛名と竜崎もそれに合わせて立ち上がった。


 結衣は、念の為自分の鞄からスマホを取り出して家族から連絡が来ているか確認してみたが、やはり着信もメッセージも来ていなかった。

 そっとスマホをポケットに入れていると、竜崎が結衣に向かって言った。



「途中まで送る」

「えっ……」



 竜崎の言葉に結衣が顔を上げると、竜崎が結衣の肩に掛けていた学園の鞄を手に取って、肩からするりと抜き取った。

 それを当然のように自分の肩に担ぎ上げた竜崎に、結衣は頬を染めながら慌てて言った。


「い、いいよ……っ、大丈夫だから! それに帰る方向違うんじゃ……」

「お前の行く方向はどっちだ?」

「私はこっちだけど、竜崎くんは駅の――……」


 結衣の言葉を遮るように彼女が指差した方角に向かって歩き出した竜崎に、結衣は目を丸くした。


「え、あの……、竜崎くん……?」


 自分の指した方向に歩きはじめてしまったことと、自分の荷物を持たせてしまっていること、どこから何を言えばいいのか、結衣が竜崎の後ろ姿を見ながらオロオロしていると、それを傍観していた榛名が突然吹き出した。


「 結衣、そんなオロオロしなくても大丈夫だぞ!」

「榛名くん……!」


 結衣が戸惑いながら榛名を見上げると、榛名が楽しそうに笑みを浮かべながら言った。


「竜崎はいつもこの辺りまでランニングしてるくらいだし、ちょっと足を伸ばすくらい大したことないって。……もう夜遅いし、ポケットに入れてるスマホより竜崎は良い用心棒になるぞ、きっと。」


「!」


 ニッと笑いながら結衣のポケットを指差した榛名に、スマホをポケットに入れた理由を彼らに気付かれていたのだと分かり、結衣はキュッと口をつぐんだ。


「………」


 少し申し訳なさそうな様子の結衣に、榛名は彼女に気付かれないように小さく笑った。


 用心棒だとか、夜遅いからというのは本当だが、それらは竜崎が結衣を自宅まで送り届けるための口実でしかなく、本当の竜崎の目的は、"彼女と二人きりで話すこと"だと、榛名はとっくに気付いていた。

 これがもし昼間だったとしても、きっと竜崎は彼女を送っただろう。


 しかし、"自分は竜崎から好意を寄せられているわけがない"と思い込んでいる結衣は、竜崎のそんな下心に気付くわけもなく、ただ彼に気を遣わせてしまっていると戸惑っているようだった。



「竜崎に送ってもらいな。」



 ほら、と言って優しく結衣の背中を押してやる。


 すると、結衣はこちらを伺うように見上げた。

 本当にいいのだろうか、という不安げな表情の彼女にまた優しく微笑み掛けてやると、戸惑いながらも小さく頷いた。



「(……やっぱ小動物みてぇだな。)」


 彼女が来るのを待っている竜崎の元へと小走りに駆けて行く結衣の後ろ姿に、榛名は小さく笑うと、二人に向かって言った。


「俺はスーパー寄って帰るから、ここでバイバイな!」

「! うん、今日は来てくれてありがとう、また学校でね」


 バイバイと控えめに手を振る結衣に榛名も手を振りかえすと、竜崎が榛名から視線を逸らして歩き始めたのに合わせて結衣も歩き出した。


 並んで歩く二人を眺めた後、榛名も踵を返して歩き出した。



「―――……」


 駅の近くにあるスーパーに近づくにつれて人通りも多くなってくる。

 榛名はそれを慣れたように避けて歩きながら、先程まで雑談していた彼女のことを思い返した。


 学園では見ることのできなかった結衣の姿。


 バイトで少し疲れていたからか、それとも学園の外だという事が理由なのかは分からないが、いつもより自然体だったように感じる。



 ……だからかもしれない。


 結衣の表情から垣間見えた竜崎への好意の眼差しに気付くことができた。

 そして、それを榛名や竜崎本人に気付かれまいと、顔をすぐに逸らして景色を眺めていたことにも。


「……まさか窓の外を眺めていた理由の一つがこれだったとは思わなかったな。」


 榛名はクスッと笑いながら、今頃こちらを心配しているであろう二人に報告するべくそっとポケットからスマホを取り出した。



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