表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閉じられた愛の中で  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/31

第八章:リボンの試練


その日、施設内はいつもよりざわついていた。

外部から視察団が来て、職員も利用者も落ち着かない様子だ。

澪も、午前中から落ち着きなく廊下を行き来していた。


午後、惇也は中庭で澪を見つけた。

だが、その手首には――白いリボンが巻かれていた。


「澪……どうしたの?」


近づいても、澪は視線を合わせない。

ぬいぐるみを強く抱きしめ、足を小刻みに揺らしている。

顔はやや赤く、呼吸が浅い。


惇也は、昨日の“ルール”を思い出した。

布が巻かれているときは――「やめてほしい」か「今は嫌」。


「……何かあった?」


澪は返事をしない。

視察団の誰かが、澪のぬいぐるみを無造作に触ったことを、惇也は職員から小耳に挟んでいた。

おそらく、それが原因だ。


「大丈夫だよ。もう、誰も触らないから」


そう言っても、澪はリボンを外そうとしない。

惇也はしゃがみ込み、目線を合わせた。

そして、彼女の手首に軽く指を置き――ゆっくりと布をなぞった。


「これは澪のルールだから。俺は絶対、破らない」


澪はその言葉に、ほんの少しだけまぶたを開いた。

だが、リボンはまだ残っている。

惇也はそれ以上何もせず、その場を離れた。


夜、食堂での夕食時。

澪がトレーを持って席につくと、その手首にはもうリボンはなかった。

彼女は惇也の前に座り、無言でぬいぐるみを差し出した。

それは、彼女なりの「もう大丈夫」の合図だった。


惇也は微笑み、ぬいぐるみの頭を軽く撫でた。

言葉を介さない信頼――だがその繊細さゆえ、壊れやすいことも彼は知っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ