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第二十二章:監視の影
夜の施設は静まり返り、廊下の蛍光灯が薄暗く点いていた。
惇也はいつもより緊張していた。
隣には山科が静かに座り込み、携帯電話を手にしている。
彼の視線は常に動き、施設の監視カメラの死角を計算しているようだった。
澪の部屋の前にたどり着くと、惇也は深呼吸をした。
「行こう」
山科は無言で頷き、二人は静かに部屋のドアを開けた。
室内の薄明かりの中、澪はベッドの上で待っていた。
彼女の瞳がぱっと輝き、手を二度叩く。
タン、タン――
「来てくれた」
そう伝わってくる。
惇也はゆっくりと車椅子を近づけ、澪の手を優しく握った。
その温もりは、どんな言葉よりも雄弁だった。
しかし、山科は距離を取りながらも目を離さない。
時折携帯で何かを記録し、無言の監視者としての存在感を放っていた。
二人は言葉を交わさず、ただ時間を共有した。
澪が笑い、惇也が頷き、空気が少しだけ和らいだ。
だが、その夜の静けさは長く続かなかった。
廊下の向こうから、突然の足音が迫る。
山科がすぐに立ち上がり、携帯を隠す間もなく、部屋の外に出た。
惇也と澪は顔を見合わせ、緊張が走る。
ドアのノックが激しくなり、声が響いた。
「夜間巡回の時間です。失礼します」




