第138話 もっと一緒に
(まさか知ってる人がいたなんて……!)
だったら言ってくださいよ。もっと早く言ってくださいよ。
ほんとなら次に出てくるのは何年も先のことだからって、なんで黙ってたんですか。そんな大事なこと。
全然大丈夫じゃないんですけど。
それにレナさん、協会の記録にも残ってないって言ってたじゃないですか!
なにかある度にこんなことしなきゃいけないんですか……もう!
おばあさんの話が本当なら大変です。
なんですか。地上に出てくることはほとんどないのに、出たら大暴れするって。
しかも、地面の下にいる間も森で使われた魔法の残りかすを吸ってどんどん大きくなるなんて。
キリハさん、前からたくさん魔法を使ってましたよね?
ちょっとおかしいくらい使ってましたよね?
それも全部吸ってるかもしれないってことですよね!?
(そんなのが暴れたらストラもタダじゃすみませんよ!!)
しかも、キリハさんみたいな人と戦ったらその魔法もどんどん吸っちゃうんですよね?
もっと強くなるってことですよね? そんなの勝てっこないじゃないですか!
(しかも、倒しちゃだめって……)
ムリですよ。できませんよ。
そんなのどうやって止めればいいんですか。
勝手に巣に戻るわけじゃないのに。
「キリハさんなら倒せるかもしれないのにぃ……!」
耐えられないくらいの魔法で倒しちゃうとか。
できそうですよね。この前の大きな魔物のときみたいにやれますよね。
キリハさんがキリハさんでよかったです。ほんとに。
「あの方の話が本当ならそれは不可能です。しかし何故、そんな重要な記録がどこにも……」
「あったんじゃないですか。あの埃の中に」
「せめて埃を被った資料と言ってください」
どっちも同じじゃないですか。
ちゃんと片付けないから。なにやってるんですか。もう。
「……いけませんね。こんなことになるなんて。資料の管理をより徹底しなければ」
「誰かがうっかり捨ててたりして」
「処分されていたのであれば、それは意図的なものと考えるべきでしょう。古い資料ですから確認も疎かになっていたのかもしれません。私も初めて聞きましたから。そこを突いたのであればなかなか計画的ですね」
「あるんですね。そんなことも……」
「ええ、あります。起こってしまったものは仕方がありません。誰かに責任を問えるものでもありませんから。被害抑制と再発防止が最優先です」
「わ、わかってますよっ」
そういえば、この前の魔道具も協会から注意されませんでしたよね。
キリハさんはなんか勝手に納得してましたけど……もしかして、あれもですか?
あのお爺さんもちゃんと言えばいいんですよ。
キリハさんみたいな人……なら迷いこんでも大丈夫かもしれませんけど、なにかあるかもしれないじゃないですか。
あのときはアイシャのおかげでなんとかなったからよかったですけど……
「……それに、考え方次第では今日現れたのは幸いとも言えます」
「なにがですか。どこがですか。全然よくないですけど」
「よく考えてみてください。今のストラには支部長はもちろん、ルークもいます。それに、一度撃退したというキリハ君……その全員が揃っている瞬間なんてそうありません」
そうですか? キリハさん、ほとんどこの町にいると思うんですけど。
いないときって言ったらこの前カウバに行ったときとか、迷宮に行ったときとか……あれ? いませんね。意外と。
ルーラとかトレスにもよく行きますし。行ってますし。
早く出たのはあれですよ。
わたしがストラにきたばっかりの頃、魔物を呼んだあの人のせいです。
たくさん魔物を呼んだりしたからキリハさんがあんなに魔法を使わなきゃいけなかったんですよ。
……キリハさんならその資料がなくなった理由とか、わかりそうですよね。
(……いつもこんな感じ、ですか?)
ちょっとびっくり、です。
あんな魔物がいたら、もっと慌ててもおかしくない、のに。
さっきのはさすがにびっくり、でした。
てっきり、キリハさんと戦い続けると思ってた、です。
(……ちぎっちゃうのは、ちょっとひどい、ですけど)
やりすぎ、です。
あんな力で引っ張ったらこうなることくらい分かりきってた、のに。
でもあの魔物、なんだか変、です。
ちょっとだけ小さくなってる、ような。
「分かってないでしょ? あんたほんとは分かってないんでしょ!? なんで燃やしてるのよ。恨みでもあった!?」
「さっき答えた通りとしか。あんな凄惨な光景をいつまでも放置しておくわけにもいかないだろう」
しかも先っぽがまた生えてる、です。短くなって生えてる、です。
キリハさんは気づいてるみたい、ですけど、どうなってる、ですか?
攻撃もしてこない、です。
キリハさんが怖いからかもしれない、ですけど。
「それにしても燃やすって……燃やすってあんたね! 誰よそんなこと吹き込んだのは!」
「…………周りの大人?」
「そんなのばっかりじゃないでしょ!?」
「否定はしない」
キリハさんが持ってた部分はちゃんと消えてる、です。
さっき、キリハさんが斬った時もそう、でした。
傷の治りが早すぎる、です。
「キリハの師匠って実は危ない人なんじゃ……」
「実はも何も、そういう側面を持っている人だと言ったじゃないか。何を今更」
「いきなりものを燃やす人なんて聞いてないよ!?」
「あんな話を早々に言えるわけがない。……あれを先にやったのは師匠ではないが」
「へ? い、今なんて?」
「いいや、何も。気にしないでくれ」
……話せそうにない、です。
今の話はマユも気になる、ですけど。
前にリィルさんも言ってた、です。キリハさんには師匠がいる、って。
自分よりとんでもないって、キリハさんが言っていた、って。
でも普通燃やしたりしない、です。放っておけば消える、ですから。
やっぱりやり過ぎ、です。
(でも……)
ちょっと――いえ、とっても、
「……羨ましい、です」
ほんとに、いつもこんなに賑やか、なんて。
もっと焦って、怖い顔になってもおかしくない、のに。
冒険者としてはちょっと間違ってるかもしれない、ですけど、その方がマユは好き、です。
迷宮に行った時、みたいに、ちゃんとしてるところはしてる、ですから。
リィルさんも、前のことは気にしてないみたい、ですし。
落ち着いた後にも言ってた、です。
あのことは気にしなくていい、って。操られてたマユも大変だったんだから、って。
キリハさんにお礼を言っておけばそれでいい、って。
……キリハさん、にも、無事でよかったって言われた、です。
すぐにマユの身体のことも心配してくれてた、です。
ストラでも、買い物に行くとよく一緒になった、です。
まるで狙ったみたい、でした。アイシャさんの家でご馳走になったりもした、ですし。
「ま、マユちゃん? どうかした?」
「さっきのあれでしょ。誰かさんが無茶苦茶ばっかりするから驚いたのよ」
「でも、リィルさん、さっきからずっと心配そうにしてた、ですよ?」
そういう時間も、やっぱり好き、です。
「そりゃそーですよ。いつものことじゃねーですか」
「いっ……!? べ、別に一日中見てなんかないわよ!」
「そこまで言ってないよ。イルエちゃんも」
こういう時間は、もっと好き、です。
「わ、悪い!? 仲間の心配するのは当たり前でしょ!?」
「それ以外もあったりして」
「だーかーらー!!」
だから、マユも、もっと一緒にいたい、です。
「……ちょっとゆっくりしすぎじゃないですか!?」
もちろん、ユッカさんも一緒、です。




