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季節がめぐる中で 91

 買い物に走る車達は中心部手前のの安売り店に吸い込まれていった。誠の周りを走るのはタクシーやバス。それに営業用の車と思われるものばかりになった。週末なら列ができているマルヨの駐車場に続く路側帯には駐車違反の車が並んでいた。

「結構空いてるわね」 

 誠がマルヨの立体駐車場に車を乗り入れているときアイシャがそうつぶやいた。

「時間が時間ですから」 

 そう答えると誠は急な立体駐車場の入り口から車を走らせる。すぐに空いている場所に車を頭から入れる。

「バックで入れた方がいいのに」 

 そう言いながらシートベルトをはずすアイシャ。誠はその言葉を無視してエンジンを止める。

「でもここに来るの久しぶりじゃないの?」 

「ああ、この前カウラさんと……」 

 そこまで言いかけて助手席から降りて車の天井越しに見つめてくる澄んだアイシャの表情に気づいて誠は言葉を飲み込んだ。

「ああ……じゃあ行きましょう!」 

 誠は苦し紛れにそう言うとマルヨの売り場に向かう通路を急いだ。アイシャは急に黙り込んで誠の後ろに続く。

「ねえ」 

 目の前の電化製品売り場に入るとアイシャが誠に声をかけた。恐る恐る振り向いた誠。

「腕ぐらい組まないの?」 

 そんなアイシャの声にどこと無く甘えるような響きを聞いた誠だが、周りの店員達の視線が気になってただ呆然と立ち尽くしていた。

「もう!いいわよ!」 

 そう言うとアイシャは強引に誠の左手に絡み付いてきた。明らかにその様子に嫉妬を感じていると言うように店員が一斉に目をそらす。アイシャの格好は派手ではなかったが、人造人間らしい整った面差しは垢抜けない紺色のコートを差し引いてあまる魅力をたたえていた。

「ほら、行きましょうよ!」 

 そう言ってアイシャはエスカレーターへと誠を引っ張っていく。そのまま一階に降り、名の知れたクレープ店の前のテーブルを囲んで、つれてきた子供が走り回るのを放置して雑談に集中していた主婦達の攻撃的な視線を受けながら誠達はマルヨを後にした。

「そう言えば……やっぱりやめましょう」 

 アイシャが隣のアニメショップが入ったビルを凝視した後そのままそのビルを通り過ぎて駅への一本道を誠を引っ張って歩く。だが明らかに未練があるようにちらちらとその看板を眺めるアイシャに誠は微笑を浮かべていた。道を行くOLはアイシャに好意的とは言いがたいような視線を送っている。誠にも仕事に疲れた新人サラリーマンと思しき人々からの痛々しい視線が突き刺さってくる。

「そっちじゃないわよ!誠ちゃん!」 

 そう言って駅に向かって直進しようとする誠を引っ張り大きなゲーセンのあるビルへと誠を誘導するアイシャ。パチンコ屋の前には路上に置かれた灰皿を囲んで談笑する原色のジャケットを着た若者がたむろしている。その敵意を含んだ視線を浴びる誠。

 哀願するようにアイシャを見る誠だったが、そんな彼の心を知っていてあえて無視すると言うようにアイシャは胸を誠に押し付けてきた。

「ここね」 

 そう言うとアイシャはそのままゲームセンターの自動ドアの前へと誠を引きずってきた。

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