季節がめぐる中で 92
騒々しい機械音が響き渡るゲームセンターの中はほとんど人がいない状況だった。
考えてみれば当然の話だった。もうすぐ期末試験の声が聞こえる高校生達の姿も無く、暇つぶしの営業マンが立ち寄るには時間が遅い。見受けられるのはどう見ても誠達より年上の男達が二次元格闘ゲームを占拠して対戦を続けているようすだけだった。
「誠ちゃん、あれはなあに?」
そう言ってアイシャが指差すのは東和空軍のシミュレータをスケールダウンした大型筐体の戦闘機アクションシミュレータだった。アイシャがそれが何かを知らないわけは無いと思いながら誠はアイシャを見つめた。明らかにいつものいたずらを考えているときの顔である。
「あれやるんですか?」
誠の顔が少し引きつる。大型筐体のゲームは高い。しかも誠もこれを一度プレーしたが、いつも保安隊で05式のシミュレータを使用している誠には明らかに違和感のある設定がなされていた。そして誠にとってこれが気に食わないのは、このゲームを以前やったとき、彼がCPU相手にほぼ瞬殺されたと言う事実が頭をよぎったからだった。
「お金なら大丈夫よ。こう見えても佐官だからお給料は誠ちゃんの1.8倍はもらってるんだから!」
そう言って誠をシミュレータの前に連れて行くアイシャ。そのまま何もせずに乗り込もうとするアイシャを引き止めて誠はゲームの説明が書かれたプレートを指して見せた。
「一応、この説明が書きを読んで……」
「必要ないわよ。一応私も予備のパイロットなのよ!それに実はやったことあるのよ」
そう言って乗り込んだアイシャ。彼女は隣のマシンを誠に使えと指を指す。しかたなく乗り込んだ誠。すでにプリペイドカードでアイシャが入金を済ませたらしく設定画面が目の前にあった。
「これ凄いわね。05式もあるじゃないの」
インターフォン越しにアイシャの声が響く。アイシャはそのまま05式を選択。誠もこれに習うことにする。誠ははじめて知ったが、このマシンは他の系列店のマシンと接続しているようで、次々とエントリー者の情報が画面に流れていく。
「はあ、世の中には暇な人もいるのね」
そう言いながらパルス動力システムのチェックを行うアイシャ。誠はこの時点でアイシャがこのゲームを相当やりこんでいることがわかってきた。05式の実機を操縦した経験を持つ誠だが、ゲームの設定と実際の性能にかなりの差があることはすぐに分かった。それ以上に実機と違うコンソールや操作レバーにいまひとつしっくりとしないと感じていた。
「エントリーする?それとも一戦目は傍観?」
そう言うアイシャの言葉がかなり明るい。それが誠のパイロット魂に火をつけた。
「大丈夫です、行けますよ」
誠はそう言ったが、実際額には脂汗が、そして手にもねっとりとした汗がにじむ感覚がある。
エントリーが行われた。チーム訳はゲームセンターの場所を根拠にしているようで、32人のエントリー者は東と西に分けられた。誠とアイシャは東に振り分けられた。
「法術無しでどれだけできるか見せてよね」
アイシャの声が出動前の管制官の声をさえぎるようにして誠の耳に届いた。




