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季節がめぐる中で 90

「ちょっと寒いわね」 

 アイシャの言葉に誠も頷いた。山から吹き降ろす北風はすでに秋が終わりつつあることを知らせていた。高速道路の白い線の向こう側には黄色く染まった山並みが見える。

「綺麗よね」 

 そう言いながらアイシャは誠に続いてリアナから借りた車に乗り込んだ。

「じゃあ、とりあえず豊川市街に戻りましょう」 

 アイシャの言葉に押されるように誠はそのまま車を発進させる。親子連れが目の前を横切る。歩道には大声で雑談を続けるジャージ姿で自転車をこぐ中学生達。

「はい、左はOK!」 

 そんなアイシャの言葉に誠はアクセルを踏んで右折した。

 平日である。周りには田園風景。誠も保安隊の農業を支えるシャムに知らされてはじめて知った大根畑とにんじん畑が一面に広がっている。豊川駅に向かう都道を走るのは産業廃棄物を積んだ大型トラックばかり。

「そう言えばゲーセンて?」 

 誠はそう言うと隣のアイシャを見つめた。

 紺色の長い髪が透き通るように白いアイシャの細い顔を飾っている。切れ長の眼とその上にある細く整えられた眉。彼女がかなりずぼらであることは誠も知っていたが、もって生まれた美しい姿の彼女に誠は心が動いた。人の手で創られた存在である彼女は、そのつくり手に美しいものとして作られたのかもしれない。そんなことを考えていたら、急に誠は心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。

「ああ、南口のすずらん通りに大きいゲーセンあったわよね?」 

 アイシャがしばらく考え事をしていた結果がこれだった。それでこそアイシャだと思いながら誠はアクセルを吹かす。電気式の車の緩やかな加速を体験しながら誠は駐車場のことを考えた。

「南口ってことはマルヨですか?」 

「ああ、夏に水着買ったの思い出したわ。そう、マルヨの駐車場に停めてから行きましょう」 

 誠はアイシャの言葉に夏の海への小旅行を思い出していた。

『あの時は西園寺さんがのりのりだったんだよな……』 

 そう思い返す。そして今日二人を送り出したときの要の顔を思い出した。

「信号、変わったわよ」 

 アイシャの言葉で誠は現実に引き戻される。周りには住宅が立ち並び、畑は姿を消していた。車も小型の乗用車が多いのは買い物に出かける主婦達の活動時間に入ったからなのだろう。

「要ちゃん怒っているわよね」 

「え、アイシャさんも西園寺さんのこと……」 

 そう言いかけて誠に急に向き直ったアイシャ。眉をひそめて切れ長の目をさらに細めて誠をにらみつけてくる。

「今、私達はデート中なの。他の女の話はしないでよね」 

 そう言うと気が済んだというようににっこりと微笑むアイシャ。その笑顔が珍しく作為を感じないものに見えて誠は素直に笑い返すことができた。

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