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季節がめぐる中で 82

「それより……良いんですか?」 

 吉田はそう言って机の上の新聞をやり遂げた顔のランの立っている隣の机に投げる。スポーツ新聞である。吉田とはつながりが薄いそれに誠もカウラも黙っていた。

「小さな記事ですがね、この超高校級のスラッガーが法術問題で揉めてるって記事の下」 

「ああ、アイシャのことか」 

 そう言うと関心が無いとでも言うように明石の椅子の上にちょこんと座るラン。

「あいつの人生だ。とやかく言うことねーんじゃないか?」 

 そう言うとその記事を表にしたままランは新聞をカウラと誠に渡した。

 大見出しが踊っている。

『即戦力を探せ!大卒、社会人選手の争奪合戦か?』 

 そんなあおり文句の下には法術適正の検査結果により、法術適正者の現役選手たちの交換要員として急浮上してきた即戦力が見込める大学や実業団の選手の一覧が並んでいるが、写真としてあるのはこの前の菱川重工戦でホームランを打ったときのアイシャの姿だった。

「クバルカ中佐殿もご存知でしょ?あいつは人造人間『ラストバタリオン』ですよ。まあずいぶんらしくないのは確かですけど。でもこれまで『あなたの進路は何ですか?』なんて質問されたことが無いのは確かなんですから。それなりに悩むはずでしょう?」 

 珍しく正論をぶち上げる吉田に眼を丸くする誠とカウラ。だが、まるで関心が無いというようにランはそのまま椅子から降りた。

「奴も子供じゃねーんだ。自分の身の振り方ぐらい考えるだろ?それにアタシがでしゃばればリアナの面子をつぶすことになるしな。後は要にいらねー心配するなってタコが諭してるとこだろうからな」 

 そう言って立ち去る姿はどう見ても小学校低学年と言った感じだが、言葉の重みはそれなりに軍で地位を築いてきているランらしいものだった。

「西園寺さんそんなに心配していたんですか?」 

 そう言う誠にカウラはため息をついた。

「まあ、神前は付き合いが短いからわからないかもしれないが、要はああ見えて繊細なところがあるからな。誰かが調子を崩すとあいつもどこか変になるんだ」 

「そうなんですか」 

 誠は視線を落としていた。要が心配していたと言うのに誠は何もできなかった。そしてアイシャの心はもっと揺れているだろうと考えると自分に腹を立てることしかできないでいた。部屋のドアが開いて入ってきたのは要と明石だった。

「なんじゃ!しけた面しよってからに。ワレ等たるんどるのう?」 

 そう言って豪快に笑ってみせる明石。要はその脇をいつもと変わらない表情で通り過ぎると自分の椅子に座った。

「西園寺さん……」 

 言葉をかけようとする誠を不思議そうに見つめる要。だが、次の瞬間その視線は吉田に向けられた。

「俺じゃねえよ!ランだラン!」 

 そう言って両手で否定する吉田から目をそらし、大きくため息をつく要。

「だから沈むなって言ったじゃろが!ワシ等の仕事はいつどんなときにどのような形で起きるかわからん事件に対応することなんじゃぞ!気合じゃ!いつも気合入れておけや!」 

 明石の言葉がなぜかむなしく響く。要は吉田から眼を離すと、今度は誠の顔を凝視した。

「あの、どうしたんですか?」 

 照れながら誠は要を見つめていた。

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