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季節がめぐる中で 83

「別にどうでも良いことかもな」 

 それだけつぶやくと要は机の引き出しから始末書を取り出す。要が誠を前にしてこのようなものを取り出すのは珍しいことだった。常に誠の前では強気・完璧で通すのが西園寺流である。始末書女王の彼女だが、いつも理由をつけて一人残って始末書を書いていることは誰もが知っていることだった。

 誠はそんな要をそっとしておこうと誠は同盟法務局へ提出する訓練課程の報告書を取り出した。

「あのねえ。誠君、暇かしら!」 

 そう言いながら顔を出したのはリアナだった。その後ろには無表情にリアナについてきているアイシャがいた。

「こいつなら仕事……」 

 要はそこまで言ったところで口をつぐんだ。無表情なアイシャを見るのには慣れていないというようにそのまま視線を落とす。

「ああ、鈴木中佐。こいつならいつでも暇しとりますよ!」 

 そんな明石の大声が響く。リアナはにっこりと笑うと誠に手招きした。

「あのー、明石中佐……」 

「行って来い!たまには気分転換もなあ」

 そう言ってカウラと要を眺める明石。

「気分転換て……いつもそれしかしていないような気がするんですけど」 

 思わず本音を漏らしたカウラを見て泣きそうな顔になる明石。

「じゃあ、二人で気晴らしにデートでもしていらっしゃい!車なら私の貸してあげるから」 

 そう言ってリアナは入り口までやってきた誠の肩を叩いた。

「良いんですか?こう言う事は隊長の……」 

「おう、アイシャ!留守はワシが仕切っとるんじゃ!行って来い!」 

 一応副長の威厳を示そうと胸を張る明石。それを見てようやくアイシャの顔にいつもの不敵な笑みが戻った。

「じゃあ行くわよ!誠ちゃん」 

 そう言うとアイシャは誠の右手を握り締めて歩き始めた。アイシャに左手を引っ張られて廊下を進む誠。管理部の部屋の中ではガラス越しにいつものように菰田がシンの説教を受けていた。それを無視してアイシャは誠の手を強く握り締めて歩いていく。

「おう!早引きか?」 

 誠の05式のコックピットを明華と一緒に覗き込んでいたランが叫ぶ。

「クバルカ中佐!ちょっとデートに行ってきます!」 

 いつもの笑顔でアイシャが手を振る。

「おう!どこでも好きなところ行って来い!」 

 ランの叫びに励まされるようにして小走りにハンガーの階段を下りるアイシャに思わず躓いた誠がもたれかかった。思わず二人の顔が息がかかるところまで近づいた。

 誠はアイシャの紺色の瞳を見つめる。時が止まったような、音が消えるような感じ。階段の途中で二人が寄り添う。

「ああ、神前。そう言うのは私達が見ていないところでやってちょうだい」 

 明華のその言葉に整備班員達の失笑が聞こえる。

「これで島田君がいたら誠ちゃんはそのままバイクで轢かれるわね!」 

 そう言いながら誠を突き放したアイシャは小走りをするようにぐんぐんと誠の手を引っ張って進む。グラウンドを、正面玄関を小走りに進む。たどり着いたのは駐車場。アイシャは手にしていたリアナの高級セダンのキーを誠に手渡した。

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