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季節がめぐる中で 81

「見ての通りだ」 

 そう言うと口に三切れ目のジャーキーを放り込む。この4ヶ月あまりの付き合いで、こういう時のヨハンに何を言っても無駄だとわかっている誠はそのまま実働部隊の部屋に向かった。カウラもそれに続く。カウラをつれて歩いている姿に管理部の窓越しに殺気を帯びた菰田の視線を感じる。誠はそれから逃れるようにして実働部隊の部屋に入るとメジャーを持ったランがあちこちに印をつけながら縦横無尽に部屋の中を図っていた。

「あの、何を……」 

「見てわかんねーか?部屋の寸法を測ってんだ」 

 それだけを誠に言うと今度は通信ケーブルを基点にしてまたメジャーを伸ばす図り始める。

「それなら端末が司法局に取り上げる前の状態に戻せば……」 

 誠の言葉にむっとした顔をするラン。嵯峨の手抜きのせいで保安隊は手書きの報告書が強制され、前時代的な事務所となっていたことはランも知っているようだった。

「いーだろ!アタシにも考えがあんだよ」 

 そう言いながら動こうとしない吉田をにらみつける。吉田は体を椅子に預けてヘッドホンで音楽を聴いているだけで手を貸すつもりも無いという様子。部屋にシャムが見当たらないのはグレゴリウス13世の世話をしに行ったのだろう。

「要さん……それに明石中佐はどうしたんですか?」 

 その言葉に廊下の外を出て左に入るというようなポーズをとる吉田。

「隊長室ですか」 

 ハッキングで大概の情報をつかめる吉田も、監視カメラの類や盗聴器を完全に排除するのが趣味と言う嵯峨の部屋の中の様子はわからない。それがわかると誠はランの作業の邪魔にならないようにと入り口近くの丸いすに腰掛けた。小さな体であちこち動き回っては測定したデータを携帯端末に入力するラン。カウラは部屋の入り口でその様子を見守っている。

「これなら行けんじゃねーかな」 

「何がですか?」 

 さすがに軍施設に準じた部隊の建物でちょこまかと小さい女の子が動き回っているシュールな状況にたまりかねて立ち上がった誠は後ろからランに声をかけた。めんどくさそうな視線を送るラン。

「いやあ、ちょっと教導隊の端末が今度更新されるんだ。それでその端末をここに持ち込めるかどうか図っていたんだが、どうにかなるみたいだな」 

 そう言って吉田に向けて勝ち誇ったような顔をするラン。

「でもそれならこの部屋のデータを吉田さんからもらえば……」 

「やなこった」 

 吉田はそう言って風船ガムを膨らませた。ランが右手を強く握り締めているのは内に湧き上がる怒りを静めているのだと誠は確信していた。

「でもそうすると明石中佐カラーはかなりなくなりますね」 

 ぼそりとそう言ったカウラの言葉に吉田は大きく頷いた。

「なんでも機械に頼るのは良くないねえ。昔ワープロが普及した時代に漢字を読めるけど書けないという人々が……」 

 電子戦で鳴らした吉田の一声に呆れる誠。

「電算機がなに言ってんだか……」 

 ランの挑発的な態度に今度は吉田が静かにヘッドホンを外した。

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