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季節がめぐる中で 78

 要を待つことも無くフォークとナイフでステーキを切り分けるアイシャ。その様子に要は少しばかり首をひねっていた。要はアイシャが食事の順番などで気を使う質なのを良くわかっていた。いつもなら要の準備が済むまでの暇つぶしに何かしら要をからかうような言葉を吐くところだが、目の前に座ろうとする要など眼中に無いというようにテーブルマナーを守りながらステーキを切っていた。

 遠くでエプロンを畳みながらその様子を眺めていた誠はカウラの方に眼をやった。カウラは誠の分の食事をトレーに盛り分けながらアイシャをちらちらと観察している。

「おい!なんか喋れよ!」 

 沈黙に耐えかねた要がアイシャを怒鳴りつけた。アイシャは一瞬不思議そうな眼で要を見つめるが、すぐに目の前のステーキと格闘を始めた。

「こいつなんとかしてくれよ!気持ち悪りいよ!」 

 隣に座ろうとするカウラに眼を向ける要。アイシャの隣に座った誠は乾いた笑いを浮かべるだけだった。

「で、どうするんだ?アイシャ」 

 味噌汁を一口、口に含んだカウラがアイシャにそう言った。それまで付け合せの誠が作ったほうれん草の水煮を食べていたアイシャのフォークが止まる。彼女なりに自分の行く道を迷っているそんな様子が誠にも手に取るように分かった。

「どうした方が良いかな?」 

 アイシャはそう言うと隣に座っておかずの鯖の味噌煮を食べていた誠を見つめた。

「どうって……」 

 そう言いながら誠はどう答えれば良いのかわからなくなっていた。

「良い話じゃねえか。神前もなれなかったプロ野球選手だぜ」 

 要は淡々と味噌汁を飲み下す。その姿に眼をやるアイシャにはいつものようないたずらっぽい表情はなくなっていた。

「でも話題づくりが優先している気がするんだがな。確かに去年もプロに行った菱川重工豊川のエース北島から三安打して、今年もナンバーワンノンプロの野々村からホームランを含む四安打。だがそれ以前の実績はまるで無い選手を指名するってことは……」 

「法術適正者の指名回避の影響じゃねえのか?」 

 タクワンをかじりながら話すカウラの言葉をさえぎった要。一応保安隊野球部の監督で、地球の球団のスコアーをつけるくらいの野球通の彼女があっさりそう言うと話題は途切れてしまう。

 アイシャはステーキの脂身を残してそのまま立ち上がった。

「どうした、食欲無いのか?」 

 その様子を珍しく気を利かせた要が見ていた。

「そう言うわけじゃないけど朝からステーキはさすがに……」 

「じゃあその脂身アタシによこせ」 

 そう言うと要はアイシャの許可も取らずに箸で脂身をつまみあげると口に放り込んだ。アイシャはそんな要に何を言うわけでもなく食堂のカウンターに食器を戻そうと歩き出す。

「やっぱ変だな」 

 口の中で解ける脂身の感触に酔いながら要はアイシャを見送っていた。

「あいつが決めることだ。横からどうこう言うことじゃないだろ」 

 そうカウラは言うとタクワンをご飯に乗せて口の中にかきこんだ。

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