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季節がめぐる中で 77

 朝食である。

 だが、誠はカウラがうれしそうに分厚い牛肉を焼くカウラをぼんやりと見つめていた。一応ここは遼州保安隊下士官遼の食堂である。同じように朝食当番の西はあわただしく大きな味噌汁のなべから椀に中身を移している。上着を脱いだ保安隊の制服にエプロンをつけて不器用そうにフライパンを揺らすカウラは見ていて、誠も心がときめいていた。

「おい、何してんだ?」 

 起きたばかりの要が声をかけてくる。誠は思わず振り返って驚愕する。

「西園寺さん!ブラジャーくらいつけてくださいよ!」 

 その声に当然のように食堂にいた男性下士官は反応した。本来この寮は男性寮だった。誠がぬきんでた法術適正の持ち主であることにより彼の誘拐未遂事件があったことから、要、カウラ、アイシャの三人が護衛と言う名目で住み着いているが、多くの男性隊員が以前からここに暮らしている状況は変わらなかった。

「いいだろ別に。減るもんじゃねえんだから。それとも嫉妬してるのかねえ」 

 そう言いながら自称98のHカップと言う胸を揺らしてくるりと一回転する。だが、その要の手を握り締める白い手が二回転目を許さなかった。

「くだらないことはやめろ」 

 カウラがいつの間にか要の手を握り締めている。タレ目の要がさらに眦を下げてカウラの胸のあたりを見つめる。そこには平原が広がっていた。

「はい、そこまで!カウラ、肉焦げてるわよ」 

 珍しく部屋着では無く制服を着込んでいるアイシャがそう言って二人の間に入った。要は誠にウィンクしてそのまま食堂を出て行った。

「朝っぱらから誰がステーキなんて食べるの?」 

「ああ、アイシャさんですよ」 

 誠はアイシャの問いに即答した。一瞬なにが起きたのかわからないとでも言うようにアイシャが不思議そうな顔で食事当番のカウラと誠、そして他の隊員達にご飯を盛り付けている西を眺めた。

「お前がどこか昨日からおかしいからな。朝にエネルギーになるものを食べればそれだけ頭の回転も速くなる。そうなればいつものお前にもどるだろ?」 

 そう言いながらステーキを皿に盛るカウラ。付け合せの野菜を盛り分ける誠をじっと見つめるアイシャ。

「でも良いの?本当に。別料金なんて払わないわよ」 

 そう言って流し目で誠を見つめるアイシャだが、いつもの彼女に比べたらどこと無くぎこちないように誠には見えた。いつもならカウラを挑発するような毒のある言葉を吐く彼女だが、まるでカウラと誠に関心が無いというように皿を見つめている。

「これでいいんだろ!」 

 そんな二人の後ろから要が保安隊の制服で現れた。そして一瞬天井を見ながらにおいを感じると、つかつかとアイシャの手にあるステーキに目をつけた。

「なんだこりゃ?こいつ朝からこんなもの食うのか?」 

 そう言ってあきれたようにアイシャの顔を覗き込む要。

「いいでしょ。これで今日一日乗り切れるわけよ」 

 そう言って香りを楽しむようなしぐさをするアイシャ。要はそのまま隣の西が盛り分けた隊員用の朝食のトレーに味噌汁などを自分で盛り分けていた。アイシャはそれを横目に実ながら悠然と自分の指定席の入り口近くの椅子に移動した。

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