季節がめぐる中で 66
汗が流れ、埃が顔を覆う。
「ほんなら、しまいにするぞ!」
そう言ってノックを止めてバットを置く明石。マウンドからよたよたと降りる誠にはほとんど余裕が無かった。夕焼けが空を明るく染め上げている。
「お疲れ様!」
そう言って誠の肩を叩くアイシャ。投げ込みを続けていたカウラと、ランニングをしているヨハンを追い回していた要の視線が誠に突き刺さる。
「シュペルター余所見とはええ了見じゃ!ワレはもう一周するか?」
明石のドラ声の届いた先で大きく首を横に振って倒れこむヨハン。気遣いではパーラと並ぶ西となぜか野球部にマネージャーとして参加しているレベッカが備品を集めて回っている。
「それじゃあシャワー……レディーファーストじゃな」
そう言うと誠と菰田を睨みつける明石。
「お先に失礼するわね」
アイシャはそのままハンガーへかけていく。
「やはり練習はええのう」
そう言いながらはげ頭を手ぬぐいで拭いている明石。気を利かせた西が彼にスポーツドリンクの入った水筒を渡す。
「ちょっと、明石さん」
そう言ってゲートの方から歩いてきたのは警備班のヤコブだった。いかにも自信が無さそうに明かしに声をかけたがその視線が投球練習を終えてハンガーの中のシャワー室に向かうカウラに向いていることは誠にも分かった。
『ヒンヌー教』の三使徒と呼ばれるヤコブ。出来るだけ関わらないようにと少し誠は距離をとった。
「ゲート前に……その……」
いまひとつ煮え切らないヤコブに首をかしげながら立ち上がって近づいていく明石。その迫力にヤコブは恐れをなしたように引き下がる。
「はっきり言わんかい。どこぞのスカウトでも来たのか」
その言葉にびくりと反応するヤコブ。
「スコアラーじゃないんですがね……すいませんが来て貰えますか」
その言葉を聞いて明石は誠の方を見つめた。
「神前、面かせ」
それだけ言うとヤコブの後をついて行く明石。誠も仕方が無いと言うように真っ直ぐに二人の後に続く。正面車止めの前の生垣を抜けた時、フラッシュが一瞬焚かれた。だが、それはすぐに収まり、カメラを向けていた報道陣に失望の色が見えていた。
「えらい盛況やな。それで何か……」
そのままゲートの外に群がる報道陣に向かっていく明石。その迫力に怯む報道陣。
「あのー、保安隊野球部キャプテンの明石清海中佐ですよね」
一人の女性記者がゲートから身を乗り出してマイクを明石に向ける。彼女の言葉ではげ頭の大男の正体を知った報道陣は再びいっせいにフラッシュを焚く。




