季節がめぐる中で 67
「なんじゃ!ワシをどこぞの球団が指名するゆうとるんか?」
そう言って目の前の報道陣に睨みを効かす明石。さすがの報道陣も冷や汗を流しながら目の前の大男に愛想笑いを振りまく。
「いえ……、こちらのアイシャ・クラウゼ内野手なんですけど……」
スポーツ紙の腕章をつけたカメラマンが恐る恐るそう言った。誠も初対面の明石には怖い印象を持っていた。初対面なら誰もがその鋭い眼光とその巨体、そしてその大きな態度に恐怖感を持っても仕方がないと誠は苦笑いで明石を見上げた。
「冗談じゃ。ああ、アイシャか。で、どこの球団が動いとるんじゃ」
「レンジャーズとブレーブス……それにエンジェルスが獲得の意向を示しているんですが……」
とりあえず最初に声をかけた女性記者がそう言った。明石も誠も、はじめは呆然としていた。だが、考えてみれば自然な話だった。都市対抗予選で半分の打点を稼いだのがアイシャだった。特に菱川重工豊川戦では一番サードで売っては先頭打者ホームランを見せ、さらに好守と走塁で優位な試合運びを展開させた張本人である。
「アイシャがか?まあええわ」
そう言うと関心を失ったというように振り向いて隊舎に向かう明石。その動きにフラッシュを焚く報道陣。
「おい、ヤコブ。塩でも撒いとけ」
警備室に叫ぶ明石。
「でも、ルーナ・カルマの再来と……」
同じゲルパルト人造人間組で今や西川アストロズの名ショートの女性選手の名を上げるカメラマン。
「うっさいぞ!ワレ!」
彼の言葉に明らかに怒りを交えて答える明石。誠は彼を宥めるようにして生垣に連れて行く。
「いい話だと思うんですがね」
そう言う誠を睨みつける明石。
「あのなあ。ルーナ・カルマは天才じゃ。同じ人造人間の生まれやゆうても、それぞれ違いがある。確かにアイシャは一流の勝負師じゃ。度胸も座っとるし、ここぞと言う時、頭の切り替えが早い。だが、ワシが見る限り奴はカルマのようにはなれんわ」
そう言うと隊舎に早足で向かう明石。朱色に染まった畑とグラウンド。そこでグラウンドをならしているのは整備班の面々。
「ご苦労さんやのう。久しぶりにええ汗かかせてもろうたわ」
気さくに声をかける明石に含み笑いで答える整備員。明石はそのままハンガーに足を踏み入れた。
「タコ中佐!とっととシャワー浴びちまえよ」
タバコを口にくわえている要が頭にタオルを巻いた姿で現れる。その後ろにはスポーツ飲料を飲むカウラの姿も見える。
「おい、クラウゼはどうした?」
「アイシャ?確かアタシ等より先に出たよな?」
要は話題をカウラに振る。ただ静かに頷くカウラ。
「さっぱりした!タコちゃん!シャワー大丈夫だよ!」
そう言って満足げな顔をするシャム。
「クラウゼは……」
そう言う明石から目を離してグラウンドに視線を移した誠の視界を、慌てるように駆け抜けるパーラの姿が目に入った。




