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季節がめぐる中で 62

 コンピュータルームには先客がいた。モニターを眺めながら腕を組む遼州同盟機構司法局法術特捜首席捜査官であり嵯峨の双子の娘の姉、嵯峨茜警視正。指で何かを指しながら小声で彼女にささやくのは捜査官カルビナ・ラーナ捜査官補佐。

 突然の来客にも二人のささやきあいは止まる事がない。

「おう、楓と同じようにで禁じられた百合の世界に目覚めたのか?」 

 そう言ってニヤつく要を一瞥してそのまま画面を凝視してラーナの報告を受ける茜。無視されてた要は誠からディスクを取り上げると手前の端末のスロットにそれを挿入する。

「先に報告書あげないと……」 

 端末の前の席に座った誠は恐る恐る要を見上げるが、彼女はまるでその声が聞こえていないかのようにデータの再生のためにキーボードを叩く。

「出たな」 

 モニターに映されたのは先日の実験の時のコックピットからの画像。目の前には巨大な法術火砲の砲身があり、その向こうには森や室内演習用の建物が見える。次第に左端の法力ゲージが上がっていく。

「おい、神前。どのくらいで発射可能なんだ?」 

 誠の頭のこぶをさする要。誠は頭に走る激痛に刺激されたように彼女の手を払いのける。

「そうですね、だいたい230法術単位くらいでいけると言う話ですけど……」 

「違う違う。出力じゃなくてチャージにかかる時間だ」 

 そう言うと今度はカウラが誠の頭のこぶをさする。

「痛いですよ!そうですね、だいたい十分ぐらいはかかりますね」 

 そう言いながら背中の二人を振り返った誠。そこには落胆したような表情の要とカウラがいた。

「使い物にならないじゃねえか!だいたい非殺傷ってところが気にくわねえな。殺傷能力有りの干渉空間切削系の火器の方がコストや運用面で有利なんじゃないのか?」 

 そう言って再び誠の頭のこぶを叩く要。

「確かにそうですわね。でも私達は司法機関の職員ですのよ。破壊兵器の開発は軍にでも任せておけばいいのだわ」 

 横槍を入れたのは茜だった。彼女の口調が嫌いだと日ごろから公言している要が発言者を睨みつけた。

「確かに、我々の本分は治安維持行為だ。無用な死者を出すことは職域を越えている」 

 納得したように頷くカウラ。呆れたように手を広げた要の後ろのセキュリティーロックが解除されて嵯峨が入ってきた。

「おう、お仕事かい!ご苦労だねえ」 

 そう言いながら山のように積み上げられた雑誌がある真ん中のテーブルに腰掛ける嵯峨。

「お父様、手ぶらなんですか?お土産くらい……」 

 呆れたように着流し姿の嵯峨を見る茜。

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