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季節がめぐる中で 49

「お母さん!」 

 小夏はカウンターで仕込みをしていた母、家村春子に声をかけていた。振り返った春子は、軽く手を上げているランを見ると笑顔を浮かべた。

「ランさんお久しぶり」 

 そう言ってカウンターから出てきた春子はランの手をとった。

「そうか、こいつが小夏か。ずいぶんとでかくなったもんだな」 

「いえ、いつまでも子供で……シャムさんと一緒に馬鹿なことばかり。もう少し女の子らしくしなさいって言ってるんですけどねえ」 

 そう言って笑いあう二人。小夏はもとより、要もカウラも唖然としてその様子を見ていた。

「ちび……じゃなくて教導官はお春さんとお知り合いなんですか?」 

 無理に敬語を使おうとしながら要が言った言葉に軽く頷いたラン。

「まあな。隊長がちょっと用があるからって時々連れ出されてな。もう四年も前か?胡州陸軍の馬鹿と撃ちあいになったこともあったなあ」 

 そう言って要を見上げるラン。誠も二人がなぜ知り合いなのかすぐに分かった。四年前の東都での非合法ルートの権益をめぐりシンジケートや支援する国家が非正規部隊を投入して行われた抗争劇『東都戦争』。春子はシンジケートの幹部の情婦として、要は胡州シンジケート、後の近藤資金を確保する非正規部隊員としてその抗争劇に参加していた。そしてその中に嵯峨の姿があったらしい言う噂も知っていた。

「ちっけえから気付かなかった……うげ!」 

 余計なことを言った要が腹にランのストレートを食らって前のめりになる。

「それより誰か先に着てるんじゃねーのか?」 

「ええ、リアナさんとマリアさんが来てますよ。それと……」 

 春子はそう言うと入り口に目をやった。携帯端末を手に持ったポーチに入れようとする明華がいる。

「ああ、着いたんだな。隊長はもうすぐ着くそうだ。それと茜はパーラ達の車に便乗するって。それで吉田だが……」 

 そこまで言うと、明華は急いで二階に駆け上がる。誠達もその後に続いた。

「はーあ、勘弁してくれます?」 

 宴会場の窓から顔を出す吉田。その額にはマリアのバイキングピストルが押し付けられている。

「くだらないことをするもんじゃないな」 

 そう言うとすぐにジャケットの下のホルスターに銃をしまうマリア。

「マリアちゃんたら!それと吉田君。あんまりふざけてばかりいたら駄目よ。一応、誠君達の上官なんだから。ちゃんと見本になるような態度をとらないとね」 

 そう言ってリアナは空になったマリアのグラスにビールを注ぐ。

「気のつかねー奴だな」 

 そう言ってランは誠を見上げる。誠は飛び上がるようにしてリアナのところに行って、彼女からビール瓶を受け取ろうとする。

「いいわよ、本当に」 

「でも一応、礼儀ですから」 

 そう言って遠慮するリアナから瓶を受け取ると、リアナが手のしたグラスにビールを注いだ。

「オメーラも座れよ。隊長達が来たらそん時に乾杯やり直せばいいだろ?」 

 自然と上座に腰をかけたランがそう言って一同を見回す。窓から入ってきた吉田とシャムが靴を置く為に階段を降りるのを見ながら、誠と要、そしてカウラはリアナの隣の鉄板を囲んで座った。

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