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季節がめぐる中で 48

 あまさき屋のある豊川駅前商店街のコイン駐車場に着いたときは、誠はようやく解放されたという感覚に囚われて危うく涙するところだった。予想したとおり、後部座席に引きずり込まれた誠は要にべたべたと触りまくられることになった。そしてそのたびにカウラの白い視線が顔を掠める。

 そして、明らかに苛立っているランの貧乏ゆすりが振るわせる助手席の振動。生きた心地がしないとはこう言うことを言うんだと納得しながら、さっさと降りて軽く伸びをしているランに続いて車を降りた。

「おい、西園寺……」 

 カウラが車から降りようとする要に声をかけたが、その雰囲気を察するところはさすがに階級にふさわしかった。手を要の肩に伸ばそうとするカウラの手を握り、そのまま肩に手を当てた。

「カウラ。あまさき屋だったよな。案内しろよ」 

 そのランの言葉でとりあえずの危機は回避されたと安心する誠。

「つまんねえなあいつもあそこばかりじゃ。たまにはこのままばっくれてゲーセンでも行くか?」 

 そう言う要にちらりと振り返った鋭いランの視線が届く。要もその鋭い瞳に見つめられると背筋が寒くなったように黙って誠についてくる。

「相変わらず目つき悪いなあ……」 

「あんだって?」 

「いえ、なんでもございませんよ!教導官殿!」 

 要が大げさに敬礼してみせる。すれ違うランと同じくらいの娘を連れた要と同じくらいに見える女性の奇妙なものを見るような瞳に、舌打ちする要。あまさき屋の前で、伸びをして客を待っていた自称看板娘の家村小夏いえむらこなつが誠達を見つけた。

「あ、カウラの姐御と……妹か何かですか?このゴキブリ女の」 

「おい!誰がゴキブリだ!それにコイツは……」 

 そこまで言ったところで要の顔を射抜くような目で見つめているランがいた。

「いいか良く聞けよ!このお方は、東和共和国陸軍特機隊の教導官、クバルカ・ラン中佐だ!まもなく明石中佐の後任として保安隊副長になられるお方だ!」 

 そんな要の言葉に小夏は体が硬直した。恐る恐る小夏の視線がランに近づく。

「ああ、世話になるな。こいつ等の躾が甘かったのは許してくれよなー」 

 そう言ってそのまま引き戸を開けようとするランを混乱状態の小夏がどうにか引き止めた。

「あのね、ランちゃん。ここは子供が入って良いとこじゃないのよ。カウラの姐御!またゴキブリ女と組んで私を担ぐつもりでしょ?ねえ、兄弟子も!」 

 パニックに陥ってカウラと誠に泣きつこうとする小夏。だが、何も言わずにカウラはランの襟の階級章を指差した。小夏の目が、一瞬にして正気を取り戻す。東和軍の特機隊志望の小夏である。階級章くらいは当然わかっていた。そこに有るのは実物の中佐の階級を示す金の二本の線と二つの星。そしてランも慣れた調子で懐から身分証を取り出した。

「別にこう言う扱いは慣れてんだよ。ちゃんと生年月日みろよ。なんなら国防省に問い合わせても良いんだぜ?」 

 身分証まで見せられた小夏は、ここで急に直立不動の姿勢をとった。

「申し訳ありませんでした!中佐殿!」 

 そう言って小夏は引き戸を開けて敬礼してランを迎え入れた。

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